岡山県・倉敷にある大原美術館は、エル・グレコの「受胎告知」やモネの「睡蓮」等をコレクションしていることで知られる私立美術館です。
その大原美術館が約10年程前から「古いものと同時に、常に時代とともに成長する美術館という信念のもと、新しいものに目を向けてきた」という高階館長のもと、日本の現代アートを積極的にコレクションし始めました。
昨年、大原美術館では「Ohara Contemporary」と銘打った大々的な展覧会が開催されています。そして今年は、この「Ohara Contemporary」が、武蔵野美術大学の中にある美術館でムサビ・バージョンに再構成して開かれます。大学での開催ということで、無料で観られるんです。
©ヤノベケンジ/Sun Sister/2014年/撮影:稲口俊太
入口すぐにそびえるヤノベケンジさん制作の「Sun Sister」は今回の展示の象徴的存在。「みらいのたいよう計画」というワーク・イン・プログレス型プロジェクトによりムサビの学生と地元の中学生達との交流と融合を促します。
©淺井裕介 × 上田暁子/撮影:稲口俊太
手前のダンスするような少女とその世界を強い光と影によって描いているのは、上田暁子さんの「とある熱を通り抜ける」2010年。その作品を巻き込みながら壁面にしなやかに伸びているのが、「植物/オオハラ・コンテンポラリー」淺井裕介さんのマスキングプラントです。これは実際近くで観ていただきたい作品。
ということで特別にちょっとだけ。
©淺井裕介/撮影:稲口俊太
淺井さんの描く、自由奔放にキャンバスから飛び出し伸びて行く線には、大きな喜びと生命力が溢れていますね。
©福田美蘭/ゴッホをもっとゴッホらしくするには/2002年
ある意味とてもコンテポラリー・アートらしい作品が、福田美蘭さんの「ゴッホをもっとゴッホらしくするには」です。大原美術館が所蔵しているゴッホの「アルピーユへの道」は実は贋作なのでは?と疑いのある絵画です。それを福田さんは逆手に取って、よりゴッホらしく描いた作品なのです。展示では「アルピーユへの道」の写真と並べて展示してありますので是非見比べてみてください。
©松井えり菜/サンライズえり菜/2011年
デフォルメした自画像の作品は松井えり菜さんの「サンライズえり菜」。彼女の顔を舞台に数々の名画が!ウーパールーパーが!?色々な物語を紡いでいます。飾らない作家の魅力が溢れ出ている一枚。
©北城貴子/Waiting Lightーmuison-soー/2006年
吸い込まれそうな3枚組の大作「Waiting Lightーmuison-soー」は、北城貴子さんがARKO (アルコ、Artist in Residence Kurashiki, Ohara)と呼ばれる滞在制作を経て、作られた作品。この作品の前に立てば、私たちが過ごす日常も、こんなに光が溢れていることに気付くでしょう。
©off-Nibroll/a shadow/2009年/撮影:稲口俊太
床に敷かれたキャンバスに映し出される映像は、off-Nibrollの「a shadow」。off-Nibrollは、振付家の矢内原美邦さんと、映像作家の高橋啓祐さんの2名からなるユニットです。名前の通り、ダンス・カンパニーのNibrollがoffの時に活動しています。
岡山の大原美術館での展示の際には「a shadow」を基に映像とダンスの特別パフォーマンスも行なわれました。床に映し出された映像を良く観てみると、家の間取りを踊りながら移動してゆく人の影が印象的な作品です。
©ジュン・グエン=ハツシバ/メモリアルプロジェクト ニャ・チャン、ベトナムー複雑さへー勇気ある者、好奇心のある者、そして臆病者のために/2001年
忘れずに観てほしいのが、ジュン・グエン=ハツシバさんの美しい映像作品。こちらは入口を出たところにある部屋に展示してあります。日本で生まれアメリカで美術教育を受け、ベトナムに拠点をおくジュン・グエン=ハツシバさんは、まさにグローバルな作品制作を続けています。
この作品はベトナムの街ではよく目にするシクロと呼ばれる乗り物を、水中でも必至に前へと引っ張る青年の映像です。そこには彼等の厳しい現実の社会が映し出され、幻想的な海の映像と相まって記憶に残ります。
展覧会では多くのプログラムが平行して企画されています。大原美術館のまとまったコレクションを関東で観ることができる貴重な機会となっていますので、是非訪れてみてはいかがでしょうか?
[オオハラ・コンテンポラリー・アット・ムサビ]
会場:武蔵野美術大学美術館
会期:2014年5月26日(月)-8月17日(日)
開館時間:10:00 – 18:00(土日祝は17:00まで)
入場料:無料
主催:武蔵野美術大学 美術館・図書館
協力:公益財団法人 大原美術館
住所:東京都小平市小川町1-736