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【踊る<インド>哲学者の思考遊戯】「世代間関係からみる『踊る大捜査線 The Final」
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【踊る<インド>哲学者の思考遊戯】「世代間関係からみる『踊る大捜査線 The Final」

2012-11-15 00:00
    【三浦宏文 みうら・ひろふみ】長崎市生まれ。東洋大学文学部印度哲学科卒業。同大学院文学研究科仏教学専攻博士後期課程修了。博士(文学)。東洋大学東洋学研究所研究員を経て、現在、桜美林大学オープンカレッジ講師、実践女子短期大学講師、神奈川県立衛生看護専門学校講師。その他、複数の予備校や高校でも講師を務める。専攻分野はインド哲学だが、教育問題や映画、テレビドラマやアニメーション等も考察の範囲に置く。著書に『インド実在論思想の研究-プラシャスタパーダの体系』ノンブル社、『絶対弱者-孤立する若者たち-』長崎出版(渋井哲也との共著)がある。


    第1回
    「世代間関係からみる『踊る大捜査線 The Final 新たなる希望』」


     大ヒットシリーズである『踊る大捜査線』の最後を飾る『踊る大捜査線 The Final 新たなる希望』(以下ODF)は、9月7日から劇場公開され、今現在(2012年11月11日)もロングラン上映中である。本作は、良質の社会派エンターテイメントとして楽しめる内容だったが、これを「世代間関係」というキーワードをもとに考察してみると面白いことが見えてくる。

    バブル世代の室井・ポストバブル世代の青島

     まず、主人公青島俊作の盟友である室井慎次を見てみよう。公式プロフィールによると室井は、昭和39年1月3日生まれで現在48歳。いわゆるバブル全盛期に20〜30代前半を過ごした「バブル世代」である。いわば、20代から30代前半という人生の一番いい時期にいい思いをすることが出来た世代である。(もちろん、室井自身はそういうバブル期を謳歌するような若者たちとは一線を画する生き方をしてきている。)

     これに対して、主人公青島俊作は昭和42年12月13日生まれで現在44歳。バブル時代に就職活動期を迎え、売り手市場に楽々と就職をしたのはいいのだが、その後まもなくバブル経済が崩壊し、リストラされる上司や先輩を見ながら増えた仕事量を必死でこなしていった世代である。いわば、青島の世代は戦中派に近く、ある日突然自分の生活形態や環境が激変し、戸惑いながらも新しい人生の指針を見つけなければいけない世代であった。青島が27歳で新橋マイクロシステムズというIT企業で二年間トップの営業成績を取りながらも、疑問を感じて警察官に転職するというのも、まさにこの時代のこの世代のおかれた状況や心情を反映している。

     室井と青島に共通するのはバブル期を曲がりなりにも経験しており、現在の閉塞感につつまれた日本の状況をある程度相対化できるという点だ。いい時期と悪い時期の両方を知っているからこそ、現状が決して良くなくてもかすかな希望を見ることが出来る。青島が何度も室井やキャリア組の警察官僚に裏切られながらも室井を信じることができ、室井が度重なる降格や失職の危機を経験しつつも信念を貫こうとできるのは、その先にあるかすかな光を信じられるからである。
     
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