渋井哲也の「生きづらさオンライン」
悩める東京都知事選挙。誰に入れる?それとも誰にも投票しない?
「原発の問題以外は、誰が都知事になっても、たいして違いがない。」
小泉純一郎元首相「原発問題以外はたいして違いがない」【都知事選】(ハフィントンポスト日本語版、1月23日)
http://www.huffingtonpost.jp/2014/01/23/tokyo-gubernatorial-election-2014-junichiro-koizumi_n_4649274.html
こう小泉純一郎・元総理はいいます。2月9日投票の東京都都知事選挙で、細川護煕候補の応援演説での発言です。
いわゆる「脱原発候補」とされているのは、細川候補のほか、宇都宮健児候補です。もちろん、インディーズ候補にも「脱原発」はいます。
小泉元総理は、過去の郵政民営化を問う選挙の際、改革に賛成する勢力と抵抗勢力とに二分化を行ないました。そして、あたかも“抵抗勢力”が利権にまみれ、政治改革を邪魔する勢力というレッテル張りに成功しました。
今回も小泉元総理は脱原発と原発推進派との闘いにしたてようとしています。もちろん、そうした側面はあります。毎日新聞によると、小泉元総理が主張する「脱原発」について危機感を募らせている経産省幹部の動向を伝えています。
核のごみ最終処分場:「シナリオ」小泉発言機に急加速(2月2日)
http://mainichi.jp/select/news/20140202k0000e010117000c.html
私が「反原発運動」にかかわったのは90年頃です。当時の私のイメージは、「反戦・反核(兵器)・反原発」といった1セットかな。その意味で、「反原発」がイコール、「反戦」かどうか、「反核」かどうかは問われるところですが、細川・小泉連合の主張は不透明です。ただ、「脱原発」という方向を自民党の議員が言いだすとは、当時は夢にも思いませんでした。「東京電力・福島第一原発の事故」という多大な犠牲を支払いましたが、保守側も「脱原発」に目覚めるきっかけになりました。皮肉ですが、一歩前進と言えるかもしれません。
ルポライターの鎌田慧さんは、こう書いています。
「細川さんは脱原発を公約の第一条に掲げていることもありますが、とにかく、安倍の凶風を止め、戦争をさせたくない、という思いからです、とこたえられました。
もしこの選挙で、安倍が勝てば、彼が今まで推してきたすべての悪行(集団的自衛権承認、秘密保護法強行採決、辺野古米軍基地建設強行、武器輸出解禁、原発輸出策動、内閣法制局長官解任、NHK会長指名など)がみとめられ、憲法改悪まで一気にすすみます」
なぜ、脱原発候補の統一が必要なのか
http://politas.jp/articles/54
しかし、細川さんから「反戦」のイメージがないのは私だけでしょうか?
もちろん、「脱原発」の一致点で、原発推進派・再稼働賛成派を打ち破る選挙という位置づけも可能だと思います。しかし、宇都宮候補もいるために、事実上、「脱原発」票は二分することが確実視されます。しかも、有権者が「脱原発」が最優先の争点ではないと感じているようです。これをどう解釈するかですが、「既存マスコミ」を批判する人のなかには、「既存マスコミが争点をずらしている」と主張する人がいるかもしれませんね。
ただ、本当に、「脱原発」以外は、誰が知事になっても同じなのでしょうか。ということは、辞職した猪瀬直樹前都知事の路線を踏まえるということを意味します。猪瀬前都知事は、石原元都知事の路線を基本的には踏襲しています。それでいいのか?という視点が欠けています。
たとえば、教育問題をあげてみましょう。「日の丸・君が代」の強制に反対する教職員は、石原都政下で処分されました。「脱原発」以外は誰がやっても同じであれば、これも認めることになります。それでいいのですか?また、養護学校の性教育の自粛についても、同じことが言えます。
青少年政策についても、青少年健全育成条例でのマンガ規制についても、前回の条例改正の評価は同じなのでしょうか?一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)が行なったアンケートでは、「改正内容や、議論のプロセスは妥当であったか」「今後改正するとすれば、どのような方向性であるべきか」を聞いている。
細川候補は「妥当であった」「一部青少年に似つかわしくない表現のものがあり、一定の配慮は必要」「適宜議論して参りたい」としている。一方、宇都宮候補は、「妥当ではなかかった」「おまりにも大雑把な議論でした。また表現の自由を脅かしたと認識」「表現の自由を重視すべき。条例そのものを見直して、子どもの権利条例を制定」としています。青少年政策はまったく逆の姿勢となっています。
これでは「一本化」が模索された際、実現できなかった理由がわかります。かつて自民党の一党支配を崩したのは、細川政権でした。当時は、非自民・非共産連立政権とも呼ばれました。かつての「社公合意」にも似ていました。社公合意とは1980年代前半に協議されたもので、いわゆる社公民路線および共産党を排除する政権高層でした。社共共闘を事実上崩壊させたものです。
ただ、今回の選挙で、「脱原発」か否かが最重点の、そして切羽詰まった争点になっていれば、一本化を模索したり、「脱原発」の一致点で勝てる候補を見つけ出すことが必要になります。しかし、現実に、世論調査では最大の争点にはなっていません。「脱原発」のために、他を犠牲にできるのかどうかが焦点になります。脱原発のために、子ども施策を石原・猪瀬路線を踏まえる細川候補でいいのか、変更したい宇都宮候補でいいのかを、議論しなくてよいということになります。
もちろん、少子・高齢化施策で、特別養護老人ホームの入所待ち、または保育園の待機児童は、誰がなっても共通の課題となるでしょう。日本テレビでの討論会をみてみると、ここの点で大きな差はないように思われます。災害に強い街づくりも、必要に迫られる問題です。
しかし、猪瀬都政の置き土産である「都営バス24時間化」をどこまで推進していくのか、都立の小中高一貫教育校はどうするのでしょうか。この問題は都教委が、白紙に戻しています。そして、新知事の判断を仰ぐ、としています。
都立の小中高一貫、白紙に 猪瀬氏の「肝いり」構想(1月7日)
http://www.asahi.com/articles/ASG173FX1G17UTIL008.html
こうした猪瀬都政の“置き土産”への評価、判断をどうするのか。これらの回答はいまのところ見えません。細川候補に投票する場合、「脱原発」以外は、事実上、信任することになります。一方、宇都宮候補に投票する場合、「脱原発」以外の施策を十分に読み解き、それが実現できるかどうかを有権者がチェックしていかねればなりません。さらにいえば、当選後に自民・公明が与党の都議会で実現可能性を模索できるのかどうかを考えなければならないでしょう。
各社の世論調査では、舛添要一候補がリードしています。舛添候補に入れるということは、都議会の半数を占める自民・公明と共同歩調を取ることが想定されます。その意味では都議会運営は支障がでないだろうと思われます。しかし、大きな改革はできない可能性があります。そればかりか、教育や青少年政策は、これまで通りの強権的なものを是認することになります。それでいいというのなら、舛添候補へ投票するか、投票所へ行かないという判断になるかもしれません。
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