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“α-Synodos”  vol.271(2020/1/15)
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“α-Synodos”  vol.271(2020/1/15)

2020-01-14 09:49
    新年あけましておめでとうございます。シノドスの芹沢一也です。今年もαシノドスをどうぞよろしくお願いいたします!

    最初の記事は「知の巨人たち」。今回は吉川浩満さんによるリチャード・ドーキンスの解説を収録させていただきました。「ドーキンスがもたらした「新しい見方」は、単なる新知識どころではなく、私たちの生命観・人間観にコペルニクス的転回というべき大転換をもたらすほどの破壊力を秘めている」と吉川さんが述べるように、進化生物学の知見は、他の学問領域にも現在進行形で多大な影響をもたらしています。日本ではこの点について、いまひとつ注目されていないきらいがあるので、まずは原点となったドーキンス入門としてお読みいただけると幸いです。

    「近代社会における「善の構想」の乱立と衝突のさなかで、何を社会統治の原理とみなすべきか」。あるいは、「我々は何に拠って善悪を語ればよいのだろうか」。こうした問いに答えようとしてきたのが政治哲学ですが、この問いに、進化政治学の観点から迫ろうとするのが山本宏樹さんによる「政治科学の進化論的転回――保革闘争の遺伝子文化共進化について」です。この記事を読めば、政治哲学的な問いにおいて、現在、進化生物学や脳科学の知見がどのように生かされようとしているのかがよくわかると思います。長文ですがぜひじっくりと読んでみてください。

    ついで「学びなおしの5冊」。今月のテーマは「恋愛」です。書き手は高田里惠子さんです。高田さんにお願いしたとき、当初、頭にあったのは「教養」や「知識人」でした。近代日本の教養や知識人についてお書きになってきた高田さんの目に、現在の凋落ぶりがどう映っているのかが知りたかったというのもあります。しかし、高田さんから提案いただいたのは「恋愛」でした。いただいた原稿は、橋川文三から水村美苗にいたる、きわめてユニークな選書となっています。ぜひ、「打算のない心(で何かを真に愛すること)」を学ぶためのブックガイドにお役立てください。

    「今月のポジだし」は吉永明弘さんによる「こうすれば「開発事業」は良くなる」です。「開発事業」と聞くと、日本ではいまだに住民の意向を無視して、しかも起案から時間がたってもはや不要であるかもしれなくても、先例主義によって止められないといったネガティブなイメージしかないのですが、吉永さんが提案するのは「不適切な事業を中止した場合には「ほめられる」仕組みをつくること」です。要はインセンティブ構造を変えようということですが、この提案は本質的な点をついていると思います。ただそのためには、政府や行政のすることにはとかく反対していればいいと思い込んでいる節のあるメディアが変わる必要があるでしょう。

    そして穂鷹知美さんの連載。今月は「テンポラリーユースとESG投資で可能にする「開発」しない地域再開発」です。「工場地帯から産業が撤退すると、クリエイティブな人々が入居してくる。そしてテンポラリーユース(暫時的な利用)で栄えていく。すると投資家がそこを買収し、投資対象とし、クリエイティブな人たちは出て行く。そのあとは、ありきたりの利用の仕方として巨大サイズの新しいショッピングモールができるだけ」。ラーガープラッツという旧工業地域の再開発をめぐる穂鷹さんのレポートは、これ以外の可能性も十分にあり得ることを示しています。スクラップ・アンド・ビルトの慣行的な手法と一線を画す開発がいかに可能になったのか、ぜひお読みください。

    最後の記事は、ジェンセン美佳さんと内田真生さんによる「北欧は多様性へのマインドセットをいかに根付かせているか」。多様な生き方を保証しようとする北欧諸国にあって、セクシュアルマイノリティの受容はどのように進んできたのか。デンマークを例にとって、法律の導入、社会の仕組みづくり、そして人々のマインドセットの醸成の三つの観点から、その経緯をレポートしていただきました。当然、最初はぎくしゃくするのですが、それがやがて自然で当たり前になっていく。そして、当たり前になった社会に生まれた子供たちは、もう違和感を抱かなくなっている。時間はかかるでしょうが、やはりこれが自然で負荷のないプロセスなのだとよくわかります。

    次号は2月15日配信となります。どうぞお楽しみに!
     
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