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  • “α-Synodos”  vol.280(2020/10/15)

    2020-10-15 15:44
    262pt
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     “α-Synodos” 
    vol.280(2020/10/15)
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    〇はじめに

    いつもαシノドスをお読みいただきありがとうございます。Vol.280をお届けします!

    湖北省武漢市で原因不明の肺炎のクラスターが発生したことが、保健当局によって報告されたのが昨年の12月。早いものでもうすぐ1年が経ちます。パンデミックが収束する気配を見せないなか、世界はどのように2度目の冬を迎えようとしているのでしょうか? ドイツ、イギリス、カナダの状況について、平井和也さんに海外の報道をまとめていただきました。「二回目の冬を前にして欧州やカナダで感染拡大するコロナ」です。これを読むと、日本の入国制限の緩和は時期尚早な気もしますね。

    コロナ危機によって、都市化にすっかり水が差される形になりました。都市の魅力やクリエイティビティを構成している要素が、一転してリスク要因になってしまいました。移動自体が厳しく制限され、ソーシャルディスタンスが不可避となるなかで、都市のモビリティのあり方に変容が迫られています。穂鷹知美さんに、ここ半年間に生じたヨーロッパ都市のモビリティの変化をレポートしていただきました。「コロナ禍を機に変化するヨーロッパの都市のモビリティ――この半年間を振り返って」です。

    みなさんは、「環境美学」という学問をご存じでしょうか? それは「人間が住む環境も含めた幅広い環境において、私たちの感性がいかに働くのかについて、多角的に論じる分野」です。先日、『環境を批評する――英米系環境美学の展開』を出版した青田麻未さんと、シノドスではおなじみの環境倫理学者の吉永明弘さんが、「環境を美的に鑑賞する」という営みをめぐって対談しました。「環境を美的に鑑賞するということ――環境美学と環境倫理学との対話」です。

    コロナパンデミックによって、近年の世界貧困削減の進歩が逆転し、貧困状態にある人々の数が急増しかねない状況が危惧されています。それによって、さまざまな社会病理的な現象が顕在化するでしょう。そのうちの一つとして「人身売買」があります。被害者の経済的、社会的に脆弱な立場を利用し、より劣悪な環境のもとで「商品」として扱い、搾取するこの人身売買とはどのような問題なのでしょうか。中村文子さんに解説いただきました。「何が人身売買を生み出すのか?」です。

    今月の学びなおしの5冊は、大山匠さんに「人工知能」をテーマにお願いしました。挙げられている5冊の解説を読むだけで、とても楽しい記事に仕上がっています。今日のコンピュータの原型と呼べる、世界初の四則演算が可能な自動計算機を完成させたライプニッツから、人工知能と社会の関りを論ずる科学技術社会論(STS)まで、流行に左右されることのない繰り返し読むに値する5冊の良書をご紹介いただきました。

    最後は石川義正さんの連載「東日本大震災以降の「崇高」(上)──現代日本「動物」文学案内」。今回取り上げられるのは山尾悠子の長篇『飛ぶ孔雀』です。震災後文学として読み解くために、ゴシックロマンス文学が召喚され、そしてエドマンド・バーグの崇高論が参照されます。そうした文学の歴史と思想の網の目にテキストを位置づけながら、テキストの「真実」をあぶりだしていく批評的な手続きは、いつ読んでもスリリングですね。

    次号は11月15日配信です。どうぞお楽しみに!
     
  • “α-Synodos”  vol.279(2020/9/15)

    2020-09-15 14:48
    262pt
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     “α-Synodos” 
    vol.279(2020/9/15)
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    〇はじめに

    「αシノドス vol.279」をお届けします。

    最初にお知らせです。今週19日14時から、伊藤隆太さんをお招きして「シノドス・トークラウンジ」を開催いたします。

    ・なぜ国家は戦争をするのか?――進化政治学から迫る / 「シノドス・トークラウンジ」02 伊藤隆太 / 橋本努+芹沢一也(聞き手)

    ご関心のある方はぜひご参加ください。お申し込みは下記のリンクから。

    さて、今号の最初の記事は、『全国学力テストはなぜ失敗したのか』を刊行した川口俊明さんへのインタビュー「全国学力テストの失敗は日本社会の縮図である――専門性軽視が生み出した学力調査の問題点」です。2007年から実施されている「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)をめぐっては、さまざまな問題点が指摘されていますが、その根本にあるのは、そもそもこのテストを何のために行うかという基本的な理解が不足していることだと川口さんは言います。そして、もっとも大切なのは「アカデミックな専門性を尊重するという姿勢」を確立すること。もすごくシンプルな目標なのですが、途方もなく前途多難なのは、シノドスをやっていて日々感じます。

    ついで、神代健彦さんによる「学びなおしの5冊 道徳、この教育し難きもの」です。道徳教育を全肯定することも、あるいは全否定することも不毛でしょう。何らかの道徳教育はどのような共同体でも必要ですし、またそうであるなら、「道徳教育は、まあ必要、でも、教えたからってねらい通りにみんな立派になるわけでもないけどね、ま、ぼちぼちできることをやっていきましょう」というスタンスがちょうどいいところではないでしょうか。こうしたスタンスから神代さんが選ぶ5冊、戦前の陸軍将校の教育にみる内面のコントロールの不可能性から、ひ弱な理性を道徳的設計によって救い出す選択的アーキテクチャまで、どの書籍も必読の5冊になっています。

    そして、大賀祐樹さんによる「懐疑的で楽観的な哲学――プラグマティズム」。昨今はどうも人々がそれぞれの正義を主張し合う中、社会がぎすぎすしてきていると多くの人が感じているかと思います。少しでも気にくわないところがあると、誰かや何かを全否定してみたり。しかし、もっと「ゆるく」いながら、希望を失わずにいることも可能ではないでしょうか。そこでぜひ思い起こしてほしいのが、「問題があるのであればそれを解決して、少しずつでも改善していけば良い」とする、プラグマティズム哲学の存在です。絶対的な正義を疑いながらも、相対主義に陥りシニカルになることなく、前に進もうとする希望を決して失わないこと。プラグマティズムはいまの社会にこそ、必要な哲学ではないでしょうか?

    ついで平井和也さんの連載、今月は「世界の知性は新型コロナウイルスをどう見ているのか」。今回、世界の知性として取り上げたのは、ポール・クルーグマン、ジャレド・ダイアモンド、ユヴァル・ノア・ハラリの3人です。アメリカのコロナウィルス・パンデミック対応のトランプ政権の失敗を語るクルーグマン、世界が無知であるコロナウィルス・パンデミックに対して、成功例を学ぶことの重要性を説くダイアモンド、人類が直面している世界的危機に、各国政府がどのような決断をするのかが、これからの世界を形成すると述べるハラリ。とくに、ハラリの「全体主義的な監視かそれとも市民の能力強化を選ぶのか、またナショナリストの孤立か世界規模の団結を選ぶのかという二つの重要な決断を迫られている」という言葉は重いですね。

    基地問題の重要性については論じるまでもないですが、しかしその歴史的経緯についての知識はあまり共有されているとは言えないでしょう。先日、『基地の消長 1968-1973―日本本土の米軍基地「撤退」政策』を刊行した川名晋史さんに、「誰が、なぜ、どこに基地を隠したか」をお書きいただきました。丹念に歴史的資料を狩猟することで浮かび上がるのは、さまざまな思惑が交錯しながら、沖縄に基地がうつされていく狡猾な過程です。沖縄にある基地を必然的なものとする議論がありますが、「米軍基地は本土の人々の視界から遠ざかり、この問題の中心は本土から沖縄へと移った」この歴史的経緯を読んで、ぜひその是非を考えてみてください。

    最後は石川義正さんの連載、「「空洞」の消滅──現代日本「動物」文学案内(4)」です。今回取り上げるのは、2014年に『春の庭』で芥川賞を受賞した柴崎友香さんの新刊『百年と一日』です。“一つの時代の終わり”という感覚を読者に強く触知させるというこの小説、「わたしたちの生の偶然性や空虚さといった感覚が、ここでは祖父母から両親、そして「わたし」自身の存在へ連なる時間と空間の広がりとして知覚されている」と言います。このような感覚を味合うことのできる瞬間というのは、小説が与えてくれる至福の瞬間のひとつですよね。

    次号は10月15日配信となります!

     
  • “α-Synodos”  vol.278(2020/8/15)

    2020-08-12 16:36
    262pt
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     “α-Synodos” 
    vol.278(2020/8/15)
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    〇はじめに

    シノドスの芹沢一也です。「αシノドス vol.278」をお届けましす。

    「αシノドス」でもおなじみの山本貴光さんと吉川浩満さんが共著『その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。』を出版しました。そこでお二人にインタビューさせていただきました(「人間とは衝動に流されるものである」)。古代ローマの賢人エピクテトス、彼の教えの要諦は、「権内にあるもの」と「権外にあるもの」とを区別することだと言います。なぜなら、人間の悩みの多くはこの区別に関する混乱に由来するからです。このインタビューを読めば、皆さんの悩みもすっきりするかもしれません!

    ついで、熊坂元大さんの「培養肉――クリーンミートあるいは現代のプロメテウス的産物」。最近、ポール・シャピロの『クリーンミート』が翻訳されましたが、序文を書いているはノア・ハラリの文章に深く考え込みました。「さほど遠くない将来、工業的畜産を戦慄をもって振り返るかもしれない。幸い、いまは過去の遺物となった、奴隷制と同じ人類史の汚点として。」というものですが、ハラルをしてそういわしめる問題がたしかに現在の畜産には存在します。そこで、今号ではクリーンミート、あるいは「培養肉」とは何か、そこにはどのような議論が取り巻いているのかを熊坂さんに整理していただきました。

    今月の「学びなおしの5冊」は伊藤隆太さんによる「進化政治学と政治学の科学的発展――社会科学の進化論的パラダイムシフト」です。進化生物学や進化心理学のインパクトが現在、社会科学の議論をさまざまに刷新していますが、どうも日本ではそのあたりの動きがとても鈍いように思います。そこで伊藤さんに、「進化政治学」を学ぶための5冊を選書していただきました。進化論的な議論は、さまざまな政治的立場の議論を逆なでする部分もありますが、しかし好き嫌いをこえて、真摯に耳を傾けなければならないものだと思います。まずはこの5冊でぜひ学んでみてください。

    「装い」と聞いてみなさんは何を想起しますか? この言葉はおそらく皆さんの想像をはるかにこえる射程を持つものです。少し例を挙げてみましょう。化粧をしたり、衣服やアクセサリーを身につけるのはもちろんのこと、整髪・洗髪から日焼け、ボディペンティング、イレズミ、整形、はては纏足、リップディスクにより広げられた唇、首輪で引き伸ばされた長い首、涅歯にいたるまで、人類はさまざまに装ってきましたし、現在も装っています。では、「人はなぜ装うのか?」。鈴木公啓さんにお書きいただきました。

    新型コロナウイルスの世界的な拡大が止まりません。これは公衆衛生上の問題であるとともに、言うまでもなく経済上の問題でもあります。第二次大戦以来最大の経済ショックをもたらすと言われている新型コロナウイルスですが、現在は、各国が新型コロナウイルスのリスクを前提としながらどう行動し、社会経済活動を促していくかという段階に入っています。そこで新型コロナウイルスの世界経済への影響というテーマを英語メディアや海外メディアがどのように扱っているか、平井和也さんにまとめていただきました。

    最後は、石川義正さんの連載「ミソジニーの「あがない」──現代日本「動物」文学案内(3)」です。今回は、倉数茂の中篇小説「あがない」から、マジョリティの男性が受ける排除の形式は小説でどのように描かれているのかを読み解きます。ところで、注に村上春樹の「一人称単数」についての言及があるのですが、『一人称単数』を読んでいてなぜ最後にこの短編を書きおろしたのかなと考えていたのですが、なるほどミソジニー批判に対するリアクションだというのは納得できますね。村上と倉数とのつながりも念頭におきつつ、ぜひご一読ください。

    次号は9月15日配信となります。少しは涼しくなっていますように。