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【RPG小説】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第7回】
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【RPG小説】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第7回】

2013-11-26 00:00


    はじめから よむ (第1回へ)

    「あら? 目が覚めたみたいね」

     ドレアさんが僕の顔を覗き込んで、声をかけてくれている。

     僕は、酒場のカウンターの前に横たわっていた。

     あれ、なんで寝てるんだ? 記憶が抜けてる。たしか女の子を勧誘しようとして、そうだ、「なんか臭くない?」って言われて、目の前が真っ暗になって……

    「あなた、死んでたわよ」

     ええええ!

     僕、死んでましたかあああ!

     死んでたのはいいとして、いやよくないけど、全っ然よくないけど、「死んでたわよ」って。

     もっと他になんか言い方あるんじゃないだろうか。ドレアさんはオブラートに包むという言葉をご存知なんだろうか。まあ、死んでたわけだから「死んでたわよ」で何一つ間違っていないんだが。そうか。僕、死んだか。生まれてすみません。そして死んですみません。

     ということは、僕は生き返らせてもらったんだろうか。誰に? ドレアさんに?

     だとしたら心臓マッサージとか、その、じ、人工呼吸とか……されたんだろうか。

     ぼぼぼ僕はまだそのキスとかはしたことがなくて、ということは死んでる間にファーストキスを奪われたのだろうか。誰に? ど、どど、ど、ドレアさんに?

     僕の一族の常識だが、勇者は旅先で命を落とすと、最寄りのお城へ強制送還される。その際、所持金は半分になっている事が多いようだが、たとえば深いダンジョンの奥底で命を落とした場合には、誰が遺体を回収し、誰が生き返らせるのか、常々疑問に思っていた。今思えば、そういう遺体回収業者のような商売をしている人間がいてもなんらおかしくはない。おそらく所持金が半分になっているのも、遺体回収にかかった費用として徴収されているのだと思えば合点がいく。そうか。なるほど。そういう事だったのか。とすると、僕を助けてくれたのはその業者の方なんだろうか。でも、僕がいるのはお城じゃない。これは業者のルールに反する。と、なれば、僕を生き返らせてくれたのはやっぱり……

    「今度からは死なないように気をつけるのよ」

     にっこり笑うドレアさんを見て、僕は顔から火が出そうになり、目をそらした。

     何をやってるんだ僕は。こんなにアッサリ死ぬなんて。格好悪すぎる。

     しかも僕はさっきの女の子の目の前で死んだことになる。ああ、やばい、どう思ったろう、目の前にいた人間がいきなりショック死する姿をまざまざと見せつけられて、あの子はどう思ったろう。恐ろしい。あの子、もう帰っちゃったろうな。絶対気持ち悪がられたよな。

     そう思いながら一階を見回してみたら、女の子はまだ同じテーブルの前にいた。

     いるのかよ!

     えー? えー? なんで? 帰らない? 普通帰らない? 話しかけてきた人がいきなり目の前で死んだらビックリして普通この場から離れない? 理解を超えている。何事もなかったかのようにさっきと同じ体勢で、さっきと同じようにぼんやりしている。こんな子いるんだ。世界は広いなあ。

    「おい、さっきは災難だったな! まさか死ぬとは思わなかったぜ! ゲヘヘヘヘ!」

     また出た。またお前かヨコリン。お前はいなくなっても別にいいのに。

    「さあ行け、もう一回だ」

     もう一回?

    「あのオンナを、説得してみせろ!」

     こいつは一体なんの義理があって、僕の背中を押し、尻を叩くのか。

     本当に邪魔だ。どこか行ってくれないかな。

    「安心しろ! オレサマがアドバイスしてやる! 早く! 早く説得しろ! 早く!」

     そういえば、親から「勉強しなさい」と言われ続けた子供の方が、勉強しない確率が高いという。今その気持ちがとてもよくわかる。力づくではダメなのだ。北風と太陽の話と一緒だ。

     気分的には、本当にやりたくない。やりたくないが、もう一度やるしかないのだ。

     僕は再度、女の子の前に歩を進めた。

    「あ」

     先ほどとまったく同じリアクションで、女の子がこちらに気づく。再戦だ!

     

     マカロンが あらわれた!

     マカロンが はなしかけてきた!

    「さっきは きゅうに しんじゃったので びっくりしました」

    「あの…… わたしに なにか ごようですか?」

     ゆうしゃは なにをいえばいいのか まよった!

     

    「オマエの事を心配してくれてるぞ! 優しいオンナだな!」

     またもヨコリンがしゃしゃり出てくる。本当に邪魔くさいが仕方ない。

    「呪文だ! オレサマの教えた呪文を唱えろ!」

     呪文。そうだ。何度も反芻したあの呪文。

     すきだ。いっしょにきてくれ。おまえなんかキライだ。ふとんがふっとんだ。

     この中で今使えそうな呪文は。

    「ダメだ遅い! オンナがまた何か言ってくるぞ!」

     

     マカロンの じゅもん!

    「やっぱり なんか くさくない?」

     

     臭くない僕は臭くない臭いのは僕じゃない。僕は自己催眠の如くポジティブな事を考えた。きっと何か別の、そうだ生ゴミだ、飲食店だから生ゴミだ。生ゴミの臭いだ、そうに違いない。僕の体臭はとってもフローラルだ。

     

     ゆうしゃに 10のダメージ!

     

    「よし! よく耐えた!」

     ありがとうヨコリン。僕の体臭は笑顔弾けるアグレッシブでスパイシーな香りさ。一体どんな香りなのかまったく想像がつかないが、とにかくいい匂いってことだ。今はそれでいい。

    「オマエ! なにニコニコしてるんだ! 次が来るぜ!」

     えっ? また?

     

     マカロンの じゅもん!

    「おふろはいってる?」

     

     そ、れ、は、もう完全に僕が臭いって言ってるようなもんじゃないですか!

     

     ゆうしゃに 33のダメージ!

     ゆうしゃは しんでしまった!

     

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    ・原作となるアプリはこちら(iPhone、Androidに対応しております)
    http://syupro-dx.jp/apps/index.html?app=dobunezumi
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