第7回目のそのまえに

 水曜夜は冒険者――会場はおなじみ、東京は代々木のホビージャパンの会議室から。本日の参加者は、ローズマリー以外の5人。生まれ故郷の――そして、秋の落ち葉をくるくる回す仕事を放りだして逐電していた本来の仕事場である――フェイワイルドに戻ったローズマリーは、ノームたちの村を助けるどころではなく、自分の厄介ごとに巻き込まれていたとかなんとか。


魔獣の噂

 ノームたちの村を騒がす何ものともしれぬ“化け物”を退治するため、とりあえず森に踏み込む一行。ローズマリーだけは久々の里帰りということで、会わねばならぬ相手だのこなさねばならぬ仕事だの、あれこれと忙しくしているので置いていく。
 いくらもいかないうちに、見知った顔に出会った。
 自分の腰の高さまでもやっとあるかないかのノームたちの集団を引き連れ、やってくるのはテルエレロン。アエングモアの森で出会ったシャドーエルフである。聞けば、女王シンの忌まわしい計画をくじくため、ここフェイワイルドの住民を組織してレジスタンス活動をしているらしい。

テルエレロン:「話せば長くなるのだが……君たちが本来暮らしていた世界と、妖精たちの暮らすここフェイワイルドは、互いに鏡に映った影のような関係にある。そして、君たちの世界に何か大事件が起きたなら、この世界もその影響を受けずにはいない。その証拠が昨今の化け物騒ぎだ。
 君たちの世界にアエングモアの大樹があるように、ここにも当然、この地の安寧の根本のごとき大樹がある。しかし君たちの世界の大樹が女王シンの配下に乗っ取られたため、こちらの大樹も狂ってしまい、近辺を悪しきものどもが跳梁跋扈するようになった。さらには、この地を守る精霊、ラファエルの洞窟の奥に巨大な縦穴が口をあけ、その底は元素の渾沌と直結してしまった――君たちの世界で起きた事件と同様に。
 ノームたちはそもそも平和な種族だ。やっかいごとが起これば身を潜めてやり過ごそうとする。しかしシンの目標はフェイワイルドにも及ぶはずだ。だから私は彼らにも力になってもらおうとしている……」
グレルダン:「うむ、貴殿の言うことはもっともだ。我々は一度倒したはずのデイモスと戦った……が、奴は私の記憶の何倍も強くなっていた。デイモスは悪魔の、すなわちシンの力の一端を享けたに違いない。こうしてはおられぬ、シンの影響を一刻も早くこの地から拭い去らねばならぬ」

 では、その拭い去るべき相手は何ものなのか。

テルエレロン:「ディスプレイサー・ビースト……所くらましの魔獣、だ。姿は6本足の豹のようなもの、そしてその両肩からは触手が生えている。そこにいるかと思えばいつのまにか別の場所におり、確かに剣を振り下ろしても手ごたえがない。退治しようにも刃が届かぬのではどうにもならぬ。雄雌のつがいでこのあたり一帯を荒らしまわっていたようだが……」

 どうやらそれだけではないらしい。

ノーム1:「それに、すごく大きなライオンの吼え声が聞こえるようになったんだ。所くらましの魔獣は確かに豹に似てるけど、ライオンじゃないしあんな吼え方もしない」
ノーム2:「ライオンじゃない、ドラゴンだ。ドラゴンが吼えて暴れてるんだ」
ノーム3:「ライオンやドラゴンならもとから大きいから、危険だけどそれは“化け物”じゃないよ。化け物は、実はヤギなんだ。それもおそろしく馬鹿でかいヤギ。おいら見たもの。木の幹のずっと上のほうに角の跡があったもの」
エルカンタール:「ライオンにドラゴンにヤギか……。さすがフェイワイルド、とでもいえばいいのかな。それは物語の中に出てくるキマイラじゃないか」

 たぶんローズマリーならもっと詳しく説明できるだろうが、と言いながらエルカンタールは、三つ首の怪物キマイラについて語りだす。その姿は概ね翼持つ大獅子と言えるが(ここでブラントが「また翼持ちかよ!」と唸った)、獅子の頭の両脇にドラゴンの首と大ヤギの首が生えているのが化け物の化け物たる所以。ドラゴンの首は炎を吐き、ヤギの首はその大角で敵を突き刺しひっかけ振り回すという――物語に語られるぐらいだから、もちろん、とんでもなく強い。そう、物語の中では。

 敵は“所くらましの魔獣”のつがい、それに伝説のキマイラ。なかなか華々しい。が、何しろ化け物と見れば逃げ出し隠れるのが常だったノームたちの言うこと、相手が具体的にどのようなことを仕掛けてくるのかについてはさっぱり要領を得ない。なので、化け物のことはさておき、この一帯でほかに起きていることを尋ねてみる。そうだ、さっきテルエレロンは、ラファエルの洞窟に縦穴ができたと言ったではないか――

テルエレロン:「ラファエルの洞窟の奥には赤竜が住みついていると、これは昔からの噂だった。しかし噂は噂にすぎず、竜の姿を見たものもいない。竜は地下深くに隠れ住んでめったに出てはこないのだと言われていた。が、突然縦穴ができたとあれば何か悪いものが湧き出してこないはずはないと、数日前、冒険者の一行がその縦穴に潜った――まだ帰ってはこないのだが」

 その戻らない冒険者たちの特徴を聞き、グレルダンの顔色が変わった。

グレルダン:「戦士とドワーフとシーフとハーフリングの4人連れ……その戦士とドワーフの名前と口癖には覚えがある――かつてセーブルタワーで共にデイモスと戦ったクラッサスとディムズディルだ。シーフ娘とハーフリングの名には聞き覚えはないが、あの連中と共にいるなら相当の使い手のはず。奴らが先行したなら赤竜ごときとっくにお陀仏のはずだが……しかし、戻ってこないというのは……」

 グレルダンが口ごもり、重苦しい沈黙が場を覆う。そのとき、ノームの1人がおそるおそる口を開いた。

ノーム:「おいら、ラファエルの洞窟に行ったんだ。そして縦穴に潜ってみた。けど、第51階層まで降りたところでやめちゃった。――その先は、硫黄の臭いがすごかったし、それにおいら、見ちゃったんだ。岩陰で、とんでもなくでかい影が動くのを……」

 もうしばらく沈黙が続き、それからブラントがぼそりと言った。

ブラント:「つまり、この村を助けるためにやることは3つだな。所くらましの魔獣をぶっ殺して、キマイラをぶっ殺して、余力があればドラゴンをぶっ殺す、と」

 そういうことになった。

 所くらましの魔獣は所くらましというだけあってどこにいるのかわからない。だが、それは尋常の者にとっての話。エルカンタールの狩人としての経験、そして鋭い目と耳に頼ったなら、魔獣の棲処を探し当てるなど苦もないこと。
 ――というわけで、一行がエルカンタールに導かれてやってきたのは、そう大きくもない滝の傍。この滝の裏の洞窟が魔獣の、おそらくはキマイラの巣穴になっているはず。

エルカンタール:「さて、では、滝壺から滝の裏を通って忍び込むとするか。うまくいけば寝こみを襲える」
ブラント:「寝こみ……か。三つ首の化け物だから三交代制で見張り首を立ててるなんて言うんじゃなかろうな」
アーズ:「滝の音が足音を消してくれるよ。見つかったら突撃すればいい」

 物騒な軽口をたたきつつ、滝へと向かう。
 たしかにここが巣穴で間違いないだろう。伝説のキマイラでないとしても危険な野獣が住み着いているだろうことは、周辺に散乱する食い散らかされた獣の死体の数々からも明らかだ。
 そしてさらにぞっとするような代物が、滝の近くの木の梢にひっかかっていた。
 噛みちぎられ、引き裂かれ、槍で突かれたかのように穴だらけになったうえ半ば焼け焦げたそれは……形がはっきりとわかるところからすると、まだ死んでそう長いことは経っていなさそうなディスプレイサー・ビーストの死体だった。


裏切りの幻獣

 死体の状態はキマイラの凶暴さを物語る。
 が、つがいの一方がここで死んでいるということは、ディスプレイサー・ビーストはキマイラが片付けてくれたということかもしれぬ。

 小さく息をつくと、一行は魔獣のねぐらに踏み込む算段をした。洞窟の入り口は3つ。滝の両側に1つずつ洞窟が口をあけ、滝の真裏にもひとつ洞窟があるのは滝の手前からでも見て取れたが、どれも一度に何人もは通れなさそうだ。というわけでエルカンタールが偵察もかねて一足先に滝の真裏の穴をくぐった。が、

エルカンタール:「あれは……ああうん、バレてたようだ」

 一歩踏み込んだエルカンタールの眼に映ったのは、暗がりにうずくまる大きな三つ首の影。その目が6つ、ぎらりと赤く光る。いかに足音を忍ばせたところで、5人もで押しかければ、ヒト臭さを消すのはかなわなかったようだ。

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グレルダン:「ならば仕方ない。やるまでだ」

 小柄なアーズは滝壺に落ちれば溺れかねない。二手に分かれればキマイラを挟み打つにもよかろうと、滝の傍から大回りして脇の入り口から洞窟に入り込む。しかしこちらも一歩踏み込んだ瞬間、岩陰から何かがすっ飛んできた。危うく避け、そしてそれが触手であることに気づいた。気づいた時にはもう1本、鞭状の触手が飛んでくる。

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アーズ:「いたぞ! ディスプレイサー・ビーストだ!」

 そいつが岩陰からするりと姿を現す。大きい。群れを率いる群長だろう。
それからそいつは、キマイラのほうにむかって、にゃおうん、と甘えた声で鳴いた。キマイラはとどろく吼え声で答える。状況から判断する限り、つがいであったディスプレイサー・ビーストの雌のほうが連れを裏切り、キマイラが雄を殺すに任せ、そして今はキマイラの伴侶におさまりかえっている、ということらしい。

ブラント:「……いったいどんな子どもが生まれるんだよ」

 ブラントが呆れたように口の中だけでつぶやくが、しかし種族を超えた愛と裏切りについて考察している暇はない。キマイラの三つ首がアーズに襲いかかる。獅子の首が噛みついて喰いちぎり、ヤギが角を突き立てる。そうして竜の首はというと口の中に炎を含んでおり、その牙が触れた皮膚からはあっという間に炎が広がってじりじりと肉を焼き焦がすのだ。
みるみる血まみれになるアーズに、さらに襲いかかろうとするキマイラを、ディスプレイサー・ビーストが止めた。
――奥の手は後に取っておくのよ。

エルカンタール:「……ふむ、所くらましの魔獣のほうが、実は姉さん女房ってわけか。じゃあ、先にこちらを片付けたほうがいいな」

 狩人の矢は過たず所くらましの魔獣の眉間に突き刺さる。流れ出す血が魔獣の視界を奪い、そして当たった矢は魔獣の存在をその場所に縫い留める。そこへグレルダンがざばざばと滝壺を押し渡りつつ、朗々と詩編を唱える。我が友らの腕に神の力の宿らんことを――戦歌の祈り(バトル・ヒム)はアーズとブラントの腕に力を与えた。具体的には突撃時のダメージの値に1d8ぶんを追加するのだ。

 もちろんアーズは神の力を有効に使った。気合一閃、居所をくらませなくなった魔獣に、逃れ得ぬ一撃を浴びせる。さらに畳み掛けるように一撃、二撃。いきなり浴びせられた三連撃の痛みに、盲いた魔獣は反射的に飛び上がる。アーズとキマイラの間をすり抜けて逃げながら、めちゃくちゃに触手を振り回す。その勢いなら見ずとも当たるもの、アーズが、そしてグレルダンが打たれてよろめく。そこへ、

ブラント:「おい、旦那を裏切ってそのまま済むと思うんじゃねえぜ、メスネコちゃんよォ」

 ブラントが真正面から踏み込む。神の名のもとに不義を正してやると叫びながら突っ込んでゆく。一撃目は外れたが、息もつかずに二撃目を振り抜く。“正義の”鉄槌を喰らった魔獣と、そしてキマイラの動きまでが鈍る。具体的には二撃目を放つためにアクション・ポイントを使用した結果発動した“勇者のアクション”により周囲に閃光が放たれ、その効果により、防御値がすべて-1されるようになる。

 このままでは連れ合いを殺されてしまう。焦ったキマイラは、とりあえず手近にいたアーズに3つ首すべてで襲いかかる。立っているのが不思議なほど――だがまだ立っているアーズを見たキマイラは、猛り狂った叫び声を挙げた。
――こいつらは厄介だ、今こそ奥の手を使うときだ。

さらにもう一度3つの首がアーズを襲う。ひとたまりもなく倒れ伏したアーズをさらに角でひっかけると、その勢いを駆ってエルカンタールのすぐ傍まで滑り込む。ここまで近づけば弓使いはなにもできまい。が、

エルカンタール:「そう来るだろうと思っていたよ」

 次の瞬間、狩人はするりと身をかわし、25フィート(7.5メートル)ばかり飛び退っている。リアクティヴ・シフトの技だ。
それを見て慌てたのはメギスである。エルカンタールを身を翻した今、彼とキメラの間に遮るものは何もない。

メギス:「待て、そこで待て、そこで動くんじゃない!」

 慌てても呪文の冴えに狂いがないところはさすが歴戦の魔道士ではある。メギスの唱えたホールド・モンスターの呪文がキマイラの翼と足を縛る。突然動かなくなった足に苛立ち、キマイラは周囲を睨むが、あっという間に岩陰に隠れた魔道士の残像を見るばかり。

 キマイラが金縛りになっている間に、所くらましの魔獣を片付けねばならない。エルカンタールは再び所くらましの魔獣の眼を狙って矢を放ち、一方で大地の精霊に囁きかけ、キマイラが“妻”を助けに行くなら通るはずの道筋に罠を仕掛けさせる。気づかずにそこに踏み込めば、強靭な蔦がキマイラの足を絡め取るだろう。

 その背後でグレルダンが轟くような声で聖歌を朗唱する。
――我が友らの戦意よ高くあれ、神の御眼に届くまでに高くあれ。
戦意高揚の歌(レヴェレイション・オヴ・バトル)である。具体的には、1ラウンドの間、味方すべての攻撃ロールおよびダメージ・ロールに+2のボーナスを与える。
それからアーズのもとに歩み寄り、力なくくずおれた身体に手をかざす。治癒の祈り(ヒーリング・ワード)である。掌から陽光にもにた清らかな光があふれ、アーズを包み込む。僧侶の祈りは傷ついた身体を癒し、死の淵に落ち込みかけた魂を呼び戻し――目を見開いた瞬間、(自分のターンが来た)アーズはがばりと跳ね起きた。急進(サドン・スプリント)の体術を駆使し、所くらましの魔獣めがけてありえない距離を突っ込み、そのまま剣を叩き込む。
――手ごたえあり。
確かにこの一行には神が味方していた。魔獣は一度も居所をくらますことなく、振るわれたすべての刃を生身に受け、そしてアーズの一撃でとうとう斃れたのだった。

 死んだはずのチビに愛しい伴侶が斬り捨てられた。キマイラは怒り狂って叫んだ。が、

ブラント:「メスネコちゃんはおねんねだとよォ……貴様もとっととくたばっちまえ!!」

 無造作に歩み寄ってきた男が、無造作に鉄槌を叩き付けてきたのでそれどころではなくなった。敵討ちの前にこいつをなんとかしなくては。怒りに任せた三つ首の連撃で、さしものブラントも重傷に追い込まれる。

メギス:「……うん、貴様はとりあえずそこでおとなしくしてろ」

 単に噛みついてくるだけでもやっかいな相手、さらに跳ね回られたらたまったものではない。メギスは素早く力場の網を編み上げるとキマイラに投げかけた。再び呪文に翼と足を絡め捕られ、キマイラの動きが鈍る。

エルカンタール:「動くな。ついでに見るな」

 狩人の唇が小さく動いた。放たれた矢は、キマイラではなく、その頭上の天井を抉っていた。落下した岩の塊がキマイラの身体を打つと同時に、立ち込めた埃がその3組の視界を全て奪っている。

グレルダン:「私をただの坊主と思うなよ。戦士の技にも腕に覚えがあってな」

 足を絡め取られ、視界を奪われて身動きの取れないキマイラに、さらにグレルダンが殴り掛かり、そのうえさらに滅多打ちの構え。
そこへアーズも走り込む。いよいよ冴えわたる太刀筋は、伝説の剣士しか体得し得ぬもの。
ブラントは一呼吸を神への祈りに使う。我が腕に力を。そうして正義の鉄槌を叩き込む。神の力を宿した鉄槌に打たれたキマイラの足は萎え、歯は欠け、怒り狂う声もどこか弱々しい。具体的には弱体化状態である。

 キマイラは狂ったように吼えた。見えない、動けない、力は入らない。伴侶も殺された。自分もこのまま死ぬだろう。だが、このままは死なない。あのでかぶつだけは道連れだ。三つ首のすべてがブラントに襲いかかった。獅子の牙は確かにブラントの喉に食い込んだ。が、弱った顎はハーフオークの皮膚を喰いちぎれなかった。

 吼え狂うキマイラの身体を、メギスの魔弾が貫く。エルカンタールは再びディスラプティヴ・ショットの技で魔獣の視界を奪う。そうして

グレルダン:「貴様に特別に教えてやろう。神の光は見えぬ眼にも届くのだ!! 太陽は平和なノームの村を荒らした貴様が盲いようとも、決して貴様を逃さぬぞ」

 あの時は本当に禿頭が光ったように見えた、と、後でブラントはローズマリーに語り、グレルダンは「そりゃあ、私の頭は神の恩寵の具現だからな」とぬけぬけと言ったものだが、ともかくキマイラは見えぬ眼を抑えてのた打ち回った。アーズは少し下がると、勢いをつけてキマイラに斬りかかった。さらにブラントが、嵐神コードへの祈りを唱えつつ一撃を叩き込む。戦鎚から光がほとばしる。太陽神の威光に既に触れていたキマイラは、焼け火箸を目に刺されでもしたかのように凄まじい悲鳴を上げた。

 ――こいつらは強すぎる。死ぬ気で戦ったとて血路一本開けられぬ。逃げよう。
 キマイラは翼を広げかけた。が、逃げられる隙などどこにもなかった。最後の希望を込めてキマイラはブラントに全力で噛みついた。が、殺せなかった。

 ――もう視界を奪うまでのこともないだろう。
エルカンタールは矢に黒い炎をまとわせ、放った。
 闇の炎を浴びたキマイラの姿が、洞窟の薄暗がりの中に浮かび上がる。
 エルカンタールの矢は、ドラゴンの喉首を射切った。
 メギスの放った魔弾がヤギの首を跳ね飛ばした。
 最後にグレルダンの鎚鉾が獅子の頭をたたき割った。
 こうして、ノームの村を脅かしていた3頭の魔獣はすっかり退治されたのである。

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地下へ、それとも天空へ

 “所くらましの魔獣”と“三つ首の魔獣”がすっかり退治されたという知らせに、ノームの村は沸き返った。ノームたちは大変に喜び、一行に様々な宝物をくれた。
 “所くらましの魔獣”の革をなめして作った“所くらましの外套”(クローク・オヴ・ディスプレイスメント)。
 “隼の弓”と名付けられた魔法の名弓(ロングボウ・オヴ・スピード)。
 炎の魔法にさらに力を与える“炎吐く着火の指輪”(インセンディアリィ・リング・オヴ・ファイアーブレイジング)。
 
 そして、さらに重要な情報が、これはテルエレロンの口から明らかにされた。
 どうやらラファエルの洞窟に空いた縦穴の底は、ここもまた元素の渾沌と繋がっており、そしてシンはこの縦穴を通して元素の力を天空の城に送っていたらしい。このエネルギーの導管は今も機能している。すなわち、縦穴をしばらく降りて、この導管の始まる場所まで行けば、そこからそのままエネルギーの流れに乗って天空の城に行けるはずだ、と。

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グレルダン:「おお、やはり神の御声は誉むべきかな。ノームたちのもとにとどまることこそ、天空の城に辿りつくもっとも早道であったのだ」

 感極まったようにひとくさり祈祷文を朗唱し始めるグレルダンはさておき、情報を得た以上そうのんびりともしていられない。一行は大急ぎで身支度を整え、傷を癒し、ラファエルの洞窟目指して出発した。
 ノームたちが下ろしてくれる長い長いロープづたいに縦穴を降りてゆくと……縦穴の壁にはいくつも横穴が開いている。

ブラント:「そういえば赤竜が住み着いているという噂もあったんだったな……」
アーズ:「ひょっとしたら、その竜が魔剣を隠し持っているかもしれない。それを先に手に入れておけば、これからの戦いに役に立つかも……」

 ここで赤竜の洞窟に立ち寄っていくべきではないか、という思いが、ふと脳裏をかすめる。女王シンと戦う前に、赤竜を斃しておくべきではないのか。
 迷ったら神の声を聞く――というわけで、視聴者アンケート。

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 結果は圧倒的に“寄り道をして行く”

グレルダン:「神は言っておられる。赤竜を斃してから行け、と。まず、赤竜はおそらくシンの配下であろう。天空の城へ向かうときに背後から追いつかれて襲われたのではたまらぬ。ふたつめには……我が古き友のこと。彼らと合流できたなら、シンとの戦いに際し非常に心強い味方が増えることになる」

 というわけで、来週は赤竜の洞窟に寄り道敢行と相成り、自動的にこの配信の回数は1回増えることになりました。
 ラスボス戦前に大休憩なしで竜と戦うのが吉と出るか凶と出るか……結果は待て来週。