宿屋の一室にておぞましきミュータントに襲われた一行。
ウルディサンとグレッチェンは、ミュータントに付き従っていたウォーハウンドの噛み付きにより、深い傷を負ってしまった。
特にウルディサンは耐久力が残り3点以下である“重傷”という状態になり、傷の治りも極端に遅くなってしまっている。このままではしばらく動くこともしんどいだろう。
残念ながら怪我を受けた際の〈負傷治療〉にも失敗してしまったため、傷が化膿してしまう恐れもあった。
だがそこは、酒場から手に入れたアルコールをつかいウドーが見事傷口の消毒に成功する。
流石は料理人、酒の扱いも手馴れているということか。
消毒を3日間、連続して成功すれば傷口は化膿する事も無く、きちんと治療ができるのだ。
だが問題はウルディサンの傷である。余りにも深い傷は、時間に任せた場合には一週間安静にしなければ回復しない。
何とかできないものかと頭を悩ませながらもとりあえずは一晩ゆっくり休む一行であった。
一夜明け、軽傷であったグレッチェンは耐久力が1点回復するが、ウルディサンはそうは行かない。
ウルディサンを治療し、少なくとも軽傷にするためにはどうすればよいのか……
途方にくれる一行の元に、宿の亭主であるフリードリッヒがなにやら怪しげな薬ビンを持ってたずねて来た。
フリードリヒ「怪我の具合はどうだ。昨晩は厄介な奴を倒してくれたのに、礼もいわずにすまなかったな。」
妙に上機嫌に話すフリードリヒに、グルンディやバルデマーは訝しげにその理由を尋ねるが
フリードリヒ「いやいや、客には良くしておかないとな。実は倉庫の奥に薬が一つ有ってな、良かったら使ってくれ。」
そして差し出されたビンには『ママ・メルキンのなんでもなおしちゃうわよ』とラベルが。
ウドー、グルンディは生憎とその薬を知らず、
グレッチェンも名前は聞いたことが有るがどんな薬かと言うのは良く知らないらしい。
そんな中ウルディサンは、民間療法としての薬液であることを知っていたようだ。
良き効果がある物であると、そのビンをありがたそうに受け取った。
そして、ヨハンとバルデマーもまたその薬がどんな物かを良く知っていた。
二人は視線を交わして頷き合うと、ウルディサンからやや距離をとって、武器をいつでも使えるように準備していた。
『ママ・メルキンのなんでもなおしちゃうわよ』
これは『オールドワールドの武器庫』というサプリメントに書かれている薬です。
飲むと色々と良いことや悪いことが起こるという薬ですので、是非皆さんもウォーハンマーRPGを遊ぶときには、キャラクターのピンチには飲ませてあげてみてください。
きっと素敵なことが起こる筈です。
……誰にとって素敵なのかは、分かりませんが。
薬ビンの中に溜まる、ドロリとした液状の薬。
ウルディサン「エルフの里ではこれは普通シロップと一緒に飲むのですが……」
震えながら受け取ったウルディサンは周囲を困ったように眺めると、意を決したように目を瞑り、鼻をつまんでゴクリとそれを飲み込んだ。
どうなることかと身構えていた一行(特にママ・メルキンを知っていたヨハンとバルデマー)だったが、幸いなことに薬は良い方向に効いたようだ。
痛みに青ざめていたウルディサンの顔は、微かではあるが赤味を取り戻し、幾分か気分がよくなったようだ。
出目は65、“なんだか気分がよくなったよ。”との事でした。
回復する効果ではありませんでしたが、鎮痛効果があったのでしょう。
良かったね、ウルディサン。
グレッチェン「効くかどうかもわからない薬、良く飲んだねぇ」
ウルディサン「エルフの里では効くんですよ、ちゃんとした寝台で休み、温かい食事を取っていれば。」
それは薬による物なのだろうか……?という疑問を、みな飲み込んだ。
なんにせよウルディサンはいくらか落ち着いたようだ、改めて礼をすると、更にフリードリヒは医者が必要なんじゃないか?と尋ねてきた。
バルデマー「医者がいるのか?」
驚いて問い返すと、どうやら亭主の従兄弟にあたるルードビッヒという男は理容外科医であるらしい。
理容師が外科的手術を行なうのは、中世ヨーロッパを模したオールド・ワールドでは一般的なことである。
フリードリヒ「この街では名医として知られた奴でな、俺が口を利いてやればいくらか安く診てもらえるだろう、どうだ?」
グルンディ「しかし医者にかかるというのは金がかかるんじゃろう?」
フリードリヒ「いやいや、診るといっても理容師兼業だからな。都会にいるような専門医ほどは取らないさ。」
みな、胡散臭い偽医者なのではないだろうかと半信半疑であったが、
バルデマー「少なくともこのブロルグで何かしでかしたり、悪どい真似をしていれば医者として名が知られるということはないだろう。そんなに酷いことにはならない筈だ。」
と言うことで、とりあえずは診断をしてもらうことに。
ウルディサンは動くのもやっとであると主張し、何とか医者に来てもらえないかと言ったが、設備や道具の都合もあり、まずは自由に動けるグレッチェンを診てもらおうと、ルードビッヒの床屋へと向かった。
床に流れた血の染みもまだ乾ききっておらず、診察台にも赤黒い物がこびり付き、足元には滑り止めの砂が撒かれている床屋には、激太りの40代ほどの男性が待っていた。
ルードビッヒ「フリードリヒから聞いているよ。私はノードランドで名高いDr.フェスタスから教えを受けていましてね。フェスタス師は天下の難病の数々を治療した名医であるから、私の腕も信用してもらって大丈夫ですよ。」
ノードランドで暮らしたことがあれば、一度は耳にしたことが有る。Dr.フェスタスと言えば、絶叫熱や黒脚病、屍喰らい疱瘡といった難病治療の権威だ。
また、太っているということは鍛錬と節制を怠っている証である、とヨハンはルードビッヒに疑わしげな目を向けたが、多く食べられるという事はそれだけ稼いでいる有能な人物で有るとも考えられる。
他の面々はどうか知らないが、バルデマーはこの理容師は腕のいい医者なのであろうと信じた。
ウドー「まあまあこちらのグレッチェンは病ではなく怪我をしてしまいましてね。先生ほどの腕があればいとも容易く治療して頂けるのではないかと参りました。」
身の危険を感じ硬直するグレッチェンをさあさあと押すウドー。
ルードビッヒ「なるほど、怪我ですか。小さな怪我でも放っていては化膿しますからね。診台へどうぞどうぞ。」
頬を弛ませて笑みを浮かべるルードビッヒに、「シグマーは、見ているぞ。」と鋭く告げるヨハン。
ルードビッヒ「はっはっは、どうぞどうぞ。シグマー神、ウルリック神、ミュルミディア神も皆様見守って下さっておりますとも。」
慈悲の女神シャリアの名が出てこないことに一抹の不安を覚える。
グルンディ「頑張るのじゃ、多少痛くともなんとかなるじゃろ。」
グレッチェン「……旦那が言うなら……」
やや無責任にも聞こえるが、傭兵としてのグルンディの言葉がグレッチェンの心を押したようだ。
意を決して診察台に昇ると、ルードビッヒがまじまじと傷を見つめはじめた。
ここで登場したのはなんと偽治療表……!
ルードビッヒさん、あなた偽医者だったんですか!?(知ってた)
一体どんな治療(偽)が行なわれるのか、それはダイスの目次第ですが…?
『水車を胸と紐で結び、それからハンマーで打つ。』
それがルードビッヒの脳裏に思いついた治療法であった
霊験あらたかな女神ミュルミディアの加護を受けた紐(通称“例の紐”)で、水車の側面に括り付けられたグレッチェン。
ルードビッヒ「この治療用水車を使えば、たちどころに治ってしまいますよ」
グレッチェン「い、一体なにがはじまるんだい……?」
不安げな表情を浮かべるグレッチェンが、水車とともに回り始める。
グレッチェン「ちょ、ちょちょ、ちょっと!?ゴボゴボゴボ!」
逆さになり頭が水に浸かるが、それも回転とともにまた引き上げられる。
文句を言おうとしたところへ、ハンマーの一撃!もはや拷問である。
本当にこんなことで傷が治るのだろうか……?
とここでGMがダイスを振りました。
偽治療とは言え、ひょっとしたら治ってしまうかもしれないとのこと。
ここはオールドワールド、不思議な世界なのです。
判定の結果は……なんと成功!?
見事グレッチェンの耐久力が6点回復、ほぼ全快してしまいました!
ヨハン(偽の治療だったようだが、やはりシグマー様の聖印であるハンマーによる加護は偉大なのだな!)
約一名に更なる信仰心を植え付け、治療を終えたルードビッヒ。
水車から降ろされたグレッチェンは、フラフラとはしているが傷は治ってしまったようだ。
水車を使った治療法なぞ聞いたことも無かったが、これは本当の名医だ。
一行はそう判断し、ウルディサンにも治療を施さねばと急ぎ宿へと戻った。
ウルディサン「どうでしたか?」
ウドー「すごい医者でしたよ!グレッチェンの傷が一発で治りましたからね!」
ウルディサン「なんと!素晴らしい、人間にも名医が居るのですね。」
期待のこもったウルディサンの視線に、太鼓判を押す一行。
動くことがままならないと言うウルディサンを、ヨハンが担ぎ上げ、再びルードビッヒの元へと向かうのだった。
ルードビッヒ「おや、お仲間の方ですか?……これは酷い!少々荒療治が必要かもしれませんな」
ウルディサンの左腕を見た理容外科医は、再び適切な治療方法を思案し始めた。
ルードビッヒ「そうですね、エルフの方であれば……梟か鷹、もしくはグリフォンの唾液を頭に塗りこみ、満月の夜にその鳥の命を絶つというのが効果的と聞いたことが……ああ!なんということだ!満月は昨晩終わってしまったのか……では別の手段を考えなければなりませんな!ふーむ……」
ブツブツとつぶやく医者を見守る一行。
ルードビッヒ「では、ワインを染み込ませたロープで手首を背中の後ろで縛りましょう!霊験あらたかなミュルミディア様の紐、傷に良いアルコール、そして患部を固定するこの治療方法で、きっとすぐに良くなることでしょう。」
なるほど、理に適っている。
ヨハン(……しかしハンマーを使っていないのは治療としてどうなのだろうか?)
訝しげに眺めるヨハンに気付いたルードビッヒは、何故か急に小槌を取り出し、ウルディサンの患部を申し訳程度に小槌で小突きはじめた。
ルードビッヒ「これでしばらく安静にしていれば大丈夫でしょう!」
痛み止めも明日までには調合してくれるとの事、きっとしばらくすればウルディサンも良くなるだろうと、一行は再びモールスリーブの休息亭へと向かった。
と、ここでおやつタイム。
今回のおやつは果物!
メロン、スイカ、マンゴーが卓上に並びました。
水分大目なのでキャラクターシートやルールブックはきちんと退避させましょう。
一晩明け、グルンディ、グレッチェンは鉱山へと仕事へ向かった。
バルデマー、ヨハン、ウドーはしばらくウルディサンの様態を見ようと思っていたのだが
ウルディサン(一向に傷が治っていない…?)
治療を受けたにもかかわらずウルディサンの傷は快方に向かっているとはいえない状況である。
しかも、ウドーの消毒も上手く行かなかったようでこのままでは傷が化膿してしまうかもしれない!
傷口を焼くか、それか別の医者に治療を受けなければまずいと言うことになり、まずは医者をブロルグ中を捜索することに。
ここで〈世間話〉の判定に成功し、一行は一般的な医者を見つけ出すことに成功しました。
この医者が本物の医者か、偽医者なのかはランダムで決定しますので、彼が果たして本当に医者なのか、それとも偽医者なのかはまだわかりません。ドキドキ。
フランツと言う名の若い医者が居ると聞きつけた一行。
理容外科医ではなく、本当に医者なのだと言う。
エルフの治療ができるかは分からないが、ひとまず診てもらおうということで、再びヨハンがウルディサンを抱え上げ、医院へと向かった。
道中ウルディサンは、かつてエルフの里で暮らしていた頃の思い出などをヨハンに語り始め、これが走馬灯という物か……と周囲の不安を煽っていたのはまた別の話である。
医院には20代後半程の若い痩せた男性が居た。
手汗が酷いようで、頻繁にズボンで手を拭いている。
診察室は比較的清潔に保たれており、血の染みなども僅かには確認できるが清掃が行き届いているようだ。
フランツ「どうかされました?」
バルデマー「実はこちらのエルフの方が犬に噛まれて大怪我をしてしまいまして。」
フランツ「え、エルフ、ですか。わ、私エルフを診たことは無いのですが……」
若干しり込みする若い医者、しかしここで断られては困る。
ウドー「いやいやいや、同じ生き物ですから、大丈夫ですよ!」
グルンディ「作りは一緒じゃ。」
バルデマー「診るだけ!診るだけでいいので、お願いします。」
何とか頼み込み、診察を受けさせてもらうことになった。
フランツ「今のエンパイアの医学も元はエルフが確立した物と聞きますし、大丈夫、でしょう。」
傷口を確認しようとしたフランツは、何故青い紐で傷口を縛っているのかと不思議そうに尋ねる。
一行は一行で、腕の治療法を何故尋ねるのかと不思議そうに問い返す。
フランツ「な、なるほど……世界は広いですね、ぼ、僕の不勉強で申し訳ない。」
謙虚な男だな、と皆が少し感心したところでいよいよ本格的に診察が始まった。
フランツ「わぁ!なんてキュートな怪我なんだ……」
キュート!?
傷を見たフランツは、それまでのオドオドした態度が嘘のように、目を煌かせ傷に見入っている。
突然の特殊な性質を垣間見せる発言にざわつく面々。
フランツ「一体どんな素敵な出会いがあったんですか!」
ウルディサン「大きな口の中からは、黄色い牙が……深遠のそこから漂う硫黄の匂いが……」
フランツ「なるほど、獣ですか。これはきちんと消毒しないといけませんね。」
熱に浮かされたようなウルディサンとの受け答えの中から、的確に情報を拾い集めるフランツ。
情報を聞き出す最中で、実際に傷を負ったときのことを思い出して半ば恐怖の虜状態になったウルディサンをウドーが宥めはじめたあたりで、フランツは手際よく器具を準備し始めた。
フランツ「普通の治療しかできませんし、すぐに治ると言うわけにも行きませんが……」
ここで一般的な治療の結果の表が登場。
フランツの手術がどの程度成功したかによって、ウルディサンの命運が決まってしまうようです……
実際にはこの表は、耐久度が0以下になり四肢が失われてしまうような危険の有る状況での手術の際に使用するものですので、本来は重傷になったからと言ってここまで死が近しくなるわけではありませんのでご安心ください。
諸々の計算をした結果、フランツの手術の成功率は56%
GMの判定の結果は……?
フランツ「……だめ、だと思います……すみません。」
治療の後、ウルディサンは昏睡状態になってしまった。
一見すれば、容態が安定して落ち着いているかのように見るが、フランツ曰く治療の手ごたえが余りにも無く、これは完全に失敗なのではないかと不安になっているようだ。
フランツ「早くお金を貯めて、アルトドルフの大学に戻りたいのですが。まだまだです、申し訳ない。」
グレッチェン「まったく、いつの世も問題は金だね、金。」
ヨハン「いつでもシグマーの寺院は君を待っているぞ。」
バルデマー「歩む道で将来が決まってしまうと言うのは、少し悲しくもありますが、それが現実なのでしょうね……」
術後、ウルディサンが有る程度落ち着くまでの時間でフランツからこのブロルグで医者を始めるようになったきっかけを聞く一行。
彼はより優れた医者をめざし、学問を修めていたらしいが、大学に通うには莫大な費用が掛かる。
一時休学し、貯蓄をしているのだそうだ。
フランツ「僕も皆さんのように冒険に出たほうがいいのでしょうか……?」
バルデマー「いや、それは……」
ヨハン「うむ、自ら試練を求め腕を磨くと言うのは良い行動だと思うぞ。」
人それぞれ、様々な行く道が有る。
一行の中では実は一番の若年であるバルデマーは、自分がいつまでも漂泊者として生きていくことはできないのではないかと、感じ始めていた。
グレッチェン「アンタが生きていることで救われる人も居るんだろう?命を大事にしなよ。」
フランツ「でも、この方はもう……」
ウドー「まぁまぁ、とりあえず、ありがとうMr.フランツ!きっとMr.ウルディサンも明日にはひょっこり目を覚ましますよ。」
グルンディ「今夜が山じゃな、明日にならねば分からぬだろう。」
医者も匙を投げたウルディサンですが……実は手術は大成功!
あまりにも上手く行きすぎたことで、フランツは上手く行かな方のではないかと変に勘ぐってしまっているようです。
見事、ウルディサンは腕の治療を終え、この後は順調に快方に向かっていきました。
よかったよかった。
と、ここでシナリオの一区切り。
ミュータントとの戦いと、その被害を克服したことで経験点を獲得できるとGMからありがたいお言葉が!
今回400点もの経験点を貰いましたが、これは配信の都合による大盤振る舞い。
通常は1回の冒険で100~150点程度の経験点がもらえるというのが一般的ではあります。
ただ、より劇的な活躍や、早めのキャリア変更を望む場合には、多めに経験点を上げてしまってもいいでしょう。
みんなが(GMもPLもみんなが、ですよ?)楽しくなるように遊ぶのが一番ですからね。
そしてここで視聴者アンケート!
漂泊者バルデマーは、一体今後どのようなキャリアを目指すのでしょう?
漂泊者から変更できるキャリアは以下の6つ。
それぞれキャリアを簡単に説明するとこんな感じです。
気になる視聴者アンケートの結果は……『大道芸人』!
漂泊者バルデマーはやはり「あの山の向こうにはきっと素晴らしい物がまっている」と各地をめぐることを捨てきれないのでしょう。大道芸人として、技術を磨いて各地を巡ろうと決意したようです。
第3回配信 -1/2-
第3回配信 -2/2-