死霊術師の襲撃を受けたミドンヘイムから、バルデマー一行はかろうじて脱出し、郊外の村で体制を立てなおした。
皇女カタリーナの願い、そしてバルデマーの選択により、皆は再びミドンヘイムへと、戦いの渦中へと戻ることを決意する。
一行は、村で少しの休息をとって傷を癒し、魔法の触媒となるものや革鎧などを失敬した。
そして、ミドンヘイムへ繋がる地下道を探して、荒れ果てた神殿跡へと足を踏み入れた。
神殿跡には、シグマー教とウルリック教、両神の名のもとに偉業を成した聖人たちの像があった。
カタリーナの言によれば、どれかの像の下に通路の入口があるらしい。
ミドンヘイムの岩山の上から吹き下ろしてくる血生臭い風が、皆の感覚を鈍らせる。
そのような状況ではあるが、捜索の果てに「鼠殺帝マンドレッド」の像のもとに、通路を見つけることができたのだった。
グレッチェンを先頭にして、アンヤにランタンを持たせ、暗く狭い通路に潜る一行。
進むと、水が滝となって流れ落ちている場所へ出た。
そこに聞こえたのは、耳慣れたドワーフの悲鳴であった。
落ちてきた樽を見て一行は、頼もしきドワーフとの再会を確信した。
皆のしんがりを守り、ひとり樽にもぐりこんで堀からの脱出を試みたグルンディは、ラットマンどもとの激しい戦いを続けていた。
樽は激流に流され、ねずみどもの攻撃をかわしながら地下に潜り、水にもまれた挙句、激しい流れに落ちたのだ。
グレッチェンのつるはしが打ちおろされ、樽を破壊した。
グルンディはヨハンの投げたロープにつかまって水から這い上がり、髭の水を絞りつつ、皆の無事を喜んだ。
そしてバルデマーの決断を聞くと、意気揚々と先頭に立ち、ミドンヘイムへ向けて地下道を歩きはじめるのだった。
途中、カタリーナから、王族に伝わる、マンドレッド伯とねずみどもの童話(※全容は『スケイブンの書』に収録)を聞いた一行。
ミドンヘイムは遠い昔にも、スケイブンと呼ばれるねずみどもに攻められたのだという。
今再び、その危機がミドンヘイムを襲っているのだ。
話しながら、一行は登りの道をいく。
階段を上がりきった先に、小部屋と呼べるほどの空間があった。
そこには金貨や宝石といった財宝が山積みになっており、その中心には棺桶が置かれていた。
と、その棺桶がひとりでに開き、中から何者かが立ちあがった。
アンデッドの中でも上級のもの、ワイトだ。
ドワーフにしか精製することのできないグロムリル鋼の鎧をまとい、魂をも切り裂くとされる剣を抜いている。
その周囲で、財宝の山から骨が組み上がり、兵士の姿をとった。
「ここをゆく者は誰か。ここは王の道、それを逆走するのは何者だ」
「攻め入ってきたねずみどもと戦うため、正当なる後継者カタリーナ様とともにミドンヘイムへ行くのだ」
答えを聞いたワイトは、カタリーナの気配を探り、違う、と言葉を放った。
彼がかつて仕えていた選帝侯の一族と、カタリーナのトッドブリンガー一族とは、血統が異なっているのだ。
ワイトはこちらを侵入者とみて、切りかかってきた。
その目に闘志の光がともるや、一行の背筋を恐怖が走る。
それによってグレッチェンが足を止めたが、ヨハンが加護によりそれを払った。
バルデマーは武器の代わりに楽器をとった。マンドリンの音、そして彼の歌が響く。ミドンヘイムに、かつてマンドレッド伯の直面した危機が、またもや迫っているのだ――
ワイトの周囲に湧き出たスケルトンどものうち一体を、グレッチェンとグルンディがふたりでかかって粉々に砕いた。
ウドーはスリングでなく、包丁をふるって前線に出、スケルトンの急所をとらえる。
ウルディサンは危うく魔法に失敗しそうになったが、うまくそれを収めることができた。
バルデマーは歌い上げる。自分たちは、ミドンヘイムのために、選帝侯の娘カタリーナの旗のもと集い、戦いへと向かうのだ。
その声が届いたか、ワイトが剣を下げた。
ワイトへ窮状を訴え、力を借りたいと一同は求める。
主の命令がなければこの場を動くことはできない、とワイトは助力を断るが、代わりにと持ち物を選ぶよう言った。
兜か、剣か。
バルデマーが選んだのは、剣だ。かつてドワーフにより鍛え上げられた剣を、バルデマーはグルンディに渡した。
先へ進み階段を上ってゆくと、鉄の扉が見えた。
開けば、まず猛烈な血の臭いが、一行に迫る。
宴の場であった広間には、恐ろしい魔術と戦いの痕跡ばかりが残っていた。
戦いの音はない。
カタリーナの、悲鳴にも似た声が上がる。
そこに落ちていたのは、選帝侯ボリス伯の片足であった。
だが、悲嘆に暮れている場合ではない。カタリーナもそれをわかっているのか、一行の先頭に立ち、戦うべき相手を求めて歩み始めたのだった。