HTCの知名度は、まだまだ日本では低いという印象があります。ガジェット通でなければ、よく分からないメーカーのうちの一つという扱いになっているでしょうか。
しかし、HTCファンとして声を大にして言いたいことは、ただひとつ。この台湾のメーカーは素晴らしいということなのです!
世界初のAndroid端末
実は、世界で初めてAndroid端末を作ったメーカーはHTCです。グーグルの新しいモバイルOSに社運を賭け、米国で「T-Mobile G1」をリリース。以降ずっと、最先端のAndroid端末をリリースし続けています。
Androidの最新版は、すでにモバイルOSとして完成の域に近づきつつあり、それを採用してスマホを作る数多のメーカーにとっても、扱いやすくなっていると言えます。
しかし、それでもやはり、「Androidの長所も短所も知り尽くしている」HTCの作るAndroid端末は、ひと味違うという印象があります。(筆者のひいき目も含まれると思いますが)
日本でも、NTTドコモから日本初のAndroid端末「HT-03A」が販売されていました。
当時、ソフトバンクから「iPhone 3Gs」が登場し、日本でもスマートフォン革命が本格化し始めていた矢先、その刺客として登場してきたのです。
ところが、元々OSメーカーとしての歴史が長いアップルに比べ、OSを作るというノウハウに劣っていたグーグルのAndroidは、当時まだ安定性など様々な面でiOSに及ばず、HT-03Aも、良い評価はあまり得られませんでした。
そんな状況でしたが、それでもHTCは、着実に成長を続けてきたのです。
Windows Phoneもラインナップ
アップルとグーグルの陰に隠れて、モバイル分野では苦戦を強いられているマイクロソフトのWindows Phoneも、HTCからOS 8.0端末がリリースされています。
Windows Phone端末について言えば、マイクロソフトと連携しているノキアの端末が一番人気なのですが、こうしてラインナップをそろえられるということが、HTCのOSによらない開発能力の高さを示していると言えるでしょう。
ちなみに日本においては、auから東芝製のWindows Phone 7.5端末「IS12T」が発売されていましたが、残念ながら最新OS 8.1を搭載した端末は、現在発売されていません。
アップルとの係争と、サムスンとの競争
いわゆるIT業界は、特許の類いが非常に多い分野だといえます。しかし実は、悪しき習慣(※1)として、特許侵害を知りつつ「後で解決すれば良いじゃん」ということで、他社にライセンスされている技術を無断拝借することが往々にして見られます。
前CEO存命中に、アップルはその生命線ともいえるiPhone(iOS)のルック・アンド・フィールに関して、かたくなに強硬姿勢を取ったことは有名な話ですが、戦いの本丸としてのグーグルとの直接対決は避け、極東の新興メーカーたちを相手にしたのでした。
アップルとしては、そこでの勝利を礎に、グーグルへの攻勢を強めるという意図だったのかも知れませんが、韓国サムスンの予想を上回る躍進と、強い抵抗の前に、思うに任せず苦戦しているという状況です。
実はHTCも、こうしたアップルとの係争に巻き込まれましたが、噂では10年間で250億円とも言われる和解金をアップルに支払うことで合意に至っています。ただし、一難去ってまた一難。
サムスンの持つAndroid端末メーカーとしての圧倒的なブランドイメージ(※2)の前に、販売は伸び悩み。基本的にスマホの主要部品が外部からの調達で賄われていることもあるのか、HTCの経営基盤はやや弱体化してしまっています。
HTCの命運を握る端末、HTC One(HTC J One)
アルミボディを採用し、iPhoneにも退けを取らない高級感を持つHTCのフラッグシップ端末「HTC One」は、日本専用仕様の「HTC J One」と、iPhoneに近いサイズの「HTC One mini」そして5.9インチ画面を持つ「HTC One max」をラインナップに加え、虎視眈々とシェア奪取を狙っています。
いまひとつ知名度が低いこともあって、筆者のHTC J Oneを人に見せると「これいいね、どこの?」と、大抵の人から驚かれるほどのクールさを持っているんですが、この良さがもっと皆に認知されるといいなあ、なんて思っています。
「まだだ。まだ終わらんよ。」
頑張るんだ、HTC!
(※1)消費者にとっては、新しい技術が早く使えるので、良い習慣とも言える
(※2)日本にいるとピンとこないかもしれませんが、世界的には、サムスンはスマホメーカーとして相当な好印象で迎えられ、大きなシェアを持っています
(田中 宏和)