現在の日本では、固定回線や携帯電話ネットワークの人口カバー率は非常に高い水準になっていますが、それでも海上や島嶼部、山間部などではインターネットや音声通話のできない圏外の地域がまだまだ存在します。
そうした場所や、災害時などでの助けとなる『衛星インターネット』や『衛星電話』、そして空からのネット接続サービスについて解説していきましょう。
衛星携帯電話サービス
人工衛星を利用した移動体通信サービスは「衛星携帯電話」と呼ばれ、音声通話やデータ通信のために打ち上げられた人工衛星はすでに多数存在しています。
なんといっても、基地局にあたる設備が上空の人工衛星なので、地球上の非常に広いエリアで通話・通信ができるのが最大の特徴です。
日本の事業者も数多くサービスを手がけている『インマルサット』を例にとると、上の画像のようにユーザーが直接利用する端末(KDDIのインマルサットIsatPhone Pro等)から、船舶や旅客機に搭載され、旅客に通信サービスを提供するものまで様々なサービスが用意されています。
画像左より、インマルサットFB [海事衛星通信]、インマルサットエアロ[航空機地球局設備]
ただし、これらのサービスは法人向けがメインで、個人で使うケースは非常に少ないというのが実際のところ。さらに雲や雨などの気象状況に通信の品質が左右されるという弱点もあります。
気球や軽量飛行機に基地局を持つ仕組み
ここからはロケットを使って打ち上げる衛星よりも、もう少し近い上空からの通信についても見てみましょう。まずは気球に携帯電話やWi-Fiの基地局を載せて飛ばす仕組み。
気球を用いたネット接続
Googleは『Project Loon』という取り組みにおいて、成層圏まで打ち上げた気球から途上国などに安価で高速なインターネットを提供する仕組みを実験中。
また、日本国内でもキャリアなどが低空の係留気球を利用した臨時無線中継システムの研究を進めています。ソフトバンクは今年(2014年)の東京ビッグサイトでのイベント「コミックマーケット86」にWi-Fiのアクセスポイントを搭載した気球を導入し、イベントによる混雑の緩和をテストしています。
飛行機を用いたネット接続
災害時に備えた、長距離"無線通信"の性能を実証 [NICT-独立行政法人 情報通信研究機構]
気球インターネットと同じように、飛行機を使ったインターネット接続も、規模の大きなものから小さなものまで数多く実験・研究が進められています。これも仕組みとしては気球と同様にアクセスポイントや基地局を搭載して飛行するというもの。
そういえば、まさに先日この仕組みを使って米国の司法当局が一般市民を含む携帯電話の情報を無作為に収集していた、なんて気味の悪い話題もありましたね。
最後のネガティブな話題はともかく、地球上のより多くの場所でインターネット接続や通話ができるようになる仕組みが今後もまだまだ登場してきそう。人工衛星や気球を経由したネット通信も、もう少ししたら当たり前のインフラになっているかもしれませんね。
それでは皆さん、今日も一日、スマートに! いってらっしゃい!
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