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中川先生の経営学はじめの一歩

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  • アクセラレーターは資金調達に明確な関連がある。

    日本経営学会誌、山口太郎さんたちの研究チームによるアクセラレーターの効果検証。 山口太郎・岩田健吾・椙山泰生(2024)「スタートアップの成長フェーズ・タイプによってアクセラレーター支援の効果は異なるのか?」日本経営学会誌, 56: 3-15. スタートアップのデータベースを活用した検証。質の良いデータを提供いただいて、我々はユーザベースさんに感謝しなければならない。 分析結果は「アクセラに設立から早い段階で採択されれば、それは資金調達につながりやすい」というもの。 ここで昔から問題になるのが 1)支援の結果なのか 2)アクセラレーターのお眼鏡にかなったスタートアップだという選抜効果があるのか 3)そもそも、もとから良い(VC目線でもアクセラ目線でも)スタートアップだということを意味しているだけなのか という問題。実は1)であるという可能性は最近はやや否定気味で、アクセラレーターの支援効果というのは俯瞰的に見ればあんまり意味がないとされる(ハマる会社にはハマる)。ただこれはビジネス知識が不要だとかそういうことを意味しているわけじゃない。安定的な事業組織にする上では経営知識の習得は大いに意味があると思うけれども、...

    2024-12-09

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  • がっかり。デザイン研究は進んでない。

    後藤智・八重樫文(2024)「デザイン思考研究は組織論の発展に貢献するのか」『組織科学』58(1):31-46. タイトルでもあり著者たちが意図したこと「組織理論をどう発展させうるのか」は全く達成できていないが、デザイン思考研究が「経営という行為そのもの」にどう貢献するのかについては知見がある。 すなわち、デザイン思考は、人間主義とかインクルージョンといった現代的な価値規範として正しいとされることの、その価値をよくよく理解させながら、それを個人としては内面化させ、組織としては制度化することを通じて、組織変革を後押しするものだ、ということ。 たぶんそれは一つの研究成果として正しい。その意味で学びは得られた論文。 なんだけども、うーんなんだかな、期待しているのはデザイン思考研究は組織現象の論理的・構造的理解にどう寄与するのか、なのだと思うし、それはちゃんとテーマからぶれることなく言語化すればちゃんと出てくると思うんだけれどもなあ。「発散思考をしていくなかでも、テーマには集中する」はデザイン思考の基本だとも思うんだけども。どうしてこうズレるかな。 そもそもこの特集として、1冊かけてデザイン研究の特集な...

    2024-11-22

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  • 「デザイン」を社会科学がとらえる目線。

    東北大・秋池先生と一橋大・吉岡先生の論稿。過去のデザイン研究をレビューし、デザインを社会科学がどう捉えているか、その視点を整理した労作。レビュー以上に、秋池さんや吉岡さんにはもっとデザイン研究を進めてほしいという気持ちはちょっとあるけど笑、ともあれ本研究は良作。 デザインの評価する軸は、 ・機能性 ・美観 ・象徴性 ・複雑性 ・典型性 ・新規性 ・識別性 ・アフォーダンス(対象との接触点、相互作用) どこかで何かに使えそう。デザインというものに、象徴性や新規性という役割も与えられているというのは、見落としがちな大切なことだと思う。これまでと違っているもの、という感覚をきちんと与えないといけないのだ。 と同時に、典型性:あるカテゴリーや、あるものごとのためのものであるということを認識できるようにも、デザインしなければいけない。

    2024-11-18

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  • 管理会計は食える技術。

    本日の勉強はこちら。関東学院大副学長・やさビ講師、江頭幸代先生の原価計算&管理会計の新刊。 原価計算→管理会計→意思決定会計という大構造が体得できる。 初学者向けでありつつ計算問題まで用意する江頭先生の本。 1冊マスターすれば、管理会計で就職できる。管理会計は、食える技術。 管理会計、役立つ技術なのに、みんな回避するのがもったいない。学生も社会人も、専門でなくてもやるべき。 私の経験上、実務家になって一番生きた経営学分野の1つ。 その意味で、ざっくり単価・固定費・変動費がイメージできりゃいい、という私の教育アプローチも、入口戦略としては正しい…はず!

    2024-11-11

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  • 明治期に、専門経営者が登場するという話。

    経営は、ある時期に社会的な機能として必要性から発達し、それを担うものとして経営者・マネジャーが誕生する。我々はこの事実を忘れがちになる。 チャンドラー『組織は戦略に従う』が、かつて20世紀には経営学徒にとっての必読書であった理由はここにある。「社会の発展に応じて、どういう経営機能が、どういう文脈で必要になったのか」を学び、専門経営者はこの社会のなかで何を為すべきなのかか、なぜ為すべきなのかを、体得させてくれる歴史書だった。 宮本又郎ほか『日本経営史』を久しぶりに開く。これも積読のひとつ。やさビでも教鞭をとってくださった阿部武司先生による、明治期の専門経営者の登場と、そこからの経営組織・手法の発展の節。オマージュのようにチャンドラーをなぞる構造にようやく気が付く。こんなの学部生では気が付かないでしょ笑。 とはいえ、改めて、生産管理、人事労務、財務会計など、ひとつひとつの経営機能がその現場の希求から導入されていき、発達を遂げていく様子が頭の中に再構築される。こういうダイナミズムが大切なんだと思う。理論として何百年も前から整然とそこにあるものだと捉えるのではなく、時代の中で、必要性によって...

    2024-11-10

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  • 世のスタートアップには助成金が必要だという現実。

    アマゾンとかフェイスブックみたいな稀有な例外事象に頭を引っ張られてはいけないのだという話。 スタートアップ生成には、ある程度まで政府・自治体の助成金が必要だということ。 近藤祐大(2024)「助成金を通じたスタートアップの資源獲得」組織科学57(4)37-53. 早稲田・井上さんのところのお弟子さんですね。会ったこともあるのかな? 本研究ではテックスタートアップがそのアーリーステージで助成金を得ることで、 ・チームの成熟 ・パートナーとの信頼関係構築 ・製品実用化 ・起業家自身の成熟 ・ミッション・構想の具体化 ・ビジネスアイデアの発展 ・業界での正当性 などを獲得していたことがわかった。実はこうした検証結果は米国ですら観察されることで、こんにちの技術スタートアップを育てるためには、民間の資源だけでは事足りなくなっているという実態が浮かんでくる。 政府支援で事業化をするなんて何か変なんじゃないの、という引っ掛かりは誰しも覚えると思いますが、そういう時代じゃないのだということ、技術をもって社会を変えるスタートアップには、政府支援も必要で、そういう競争枠組みになっているのだというように、理解をアップデートしなけれ...

    2024-11-07

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  • AI/生成AIはデザインマネジメントをどう変えるか

    10月は忙しかった。。 では11月以降はどうかと言えば変わらず忙しいので、つまるところ自分が「やる」と決めなければやれてないことは今後もやれないのである。 そんなわけで、10月まではコンスタントに続けられてきた積読解消…私の場合は「積み論文解消」になるのですが、手元にたまってしまった最新ジャーナルの論稿を勉強していこうと思います。 さて、本日はこちら。筑波大・立本先生のところで研究されておられる、原寛和さんの論稿。ホンダに所属されておらるようですね。 原寛和(2024)「生成AI時代のデザインマネジメント」組織科学58(1)4-19. 結論は要するにこれ。 ダブルダイヤモンドというのはデザイン思考で広く知られる概念で、問いと答えの都合2回、発散と収束をさせるべきだというもの。AIはこの発散について、人間を補助して新しいアイデアを出すのに役に立つ。 スッキリ、シンプルなまとめだ。これを知れただけで今日の勉強は価値があったと思う。さあ頑張るぞ、何日続くかな笑、勉強していこう!

    2024-11-06

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  • トゥキディデスの罠

    昔からある諺のようにも見えますが、2017年初出、アメリカの政治学者アリソンが作った言葉。 トゥキディデス。古代ギリシアの人で、アテネの軍人にして歴史家。アテネの台頭がスパルタを不安にさせたことで戦争が起こった、という意味の言葉を受け、「新興国の台頭は、新たなNo.1を目指す新興国と従来の秩序・順位を変えたくない先進国との間での軋轢を生む」として、アリソンはこの言葉を作った。 要するに米中対立は歴史の必然であると述べたのである。 実際そうだろう。世界史、日本史を紐解けば、新興勢力の台頭は常に争いを生み、新旧の交代は激しいぶつかり合いの末に起こる。戦争は歴史の必然なのだと。 ずいぶん嫌な研究成果であり命題であるが、ある種、歴史の本質をついているのだとすれば、無視はできないどころか、我々はこのアリソンの成果をよくよく噛みしめなければならない。さて、どうする。経営学も経済学も、国際政治と無縁でいられない時代だ。そんな時代に、どういう経営学を語るのが正しいのか。国際情勢を無視して、経営学の教科書を書くことが、正しいことなのか。

    2024-10-02

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  • ソローのパラドックス

    ロバート・ソロー。ノーベル経済学者。 ソロー・モデルはシンプルな数理で経済成長を表現するもので、 かつ説明力がそれなりに強いモデル。 学部時代にすごく感動した思い出があります。 そんな経済成長論の大家ソローが1970年代に、米国のIT投資と経済成長の数値を観察して述べたのが「IT投資と生産性の改善は一致しないどころか逆の効果をもたらしている」ということ。この傾向は現在でも見られ、なぜそうなるのかは論争が続いています。 米国では、生産性パラドックスと呼ばれます。日本ではソロー人気からなのかな?印象的であるゆえにソローのパラドックスという言葉が使われます。ただ、私自身はといえば「なぜそうなるのか論理が見えていない」わけですから、パラドックス=論理的矛盾、逆説という言葉は適切な用語ではないように思います。シュレディンガーの猫とかアキレスと亀みたいな論理学上の誤謬とはだいぶ違うような。 ともあれ、IT投資が社会全体として俯瞰した時、生産性改善をもたらさないというのは、大掛かりに統計を眺めていくと避けがたいことなのです。 このような現象が発生する理由については諸説ありますが、古来、生産性について言われて...

    2024-09-27

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  • 新刊発売『行動経済学超入門』

    明日、新刊発売です! 『60分でわかる! 行動経済学 超入門』 いつの間にか、世の中からは行動科学の学者として必要としてもらえることが増えてきました。 とはいえこれは大変有難いことで、実際のところあまり知られていないですが私の主要業績は行動科学分野「商業性と社会性を両立したクラファン案件に人々は投資する」だったりするのです↓ https://www.sciencedirect.com/.../pii/S0166497222000554 良くも悪くも感情ベースに、共感性で動く時代だから。 世の仕組みを知り、間違えないためにも、行動経済学を学んでほしいのです。 ちなみに世の中では行動経済学で上手に人を操るタイプの本がよく出ていますが、そうした本を出す人を私は行動経済学の学者と認めません。経済とは、経世済民。世の仕組みを整え、民を救うための学問であって、人の自由意思に侵入し、罠にはめる学問ではないのです。リチャード・セイラーが元々どんな思想でナッジを提唱したのか(あくまで主体的な決定権を残しながら選択のアーキテクチャを整えるのがナッジ)、そこのところが忘れられてしまっている。 まるで、“道徳倫理の基盤の上に”切磋琢磨する...

    2024-09-19

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