公的年金にまつわる様々な誤解の一つに「年金の運用は損ばかりしている」というのがあります。実は、これも正しくありません。
前回、年金財政のお話をした時に、現在、年金の積立金は約130兆円あると言いました。このお金はいわば貯金ともいうべきものです。毎年の年金の収支がプラスになればこの貯金にお金を入れますし、マイナスであれば貯金から引き出す。行ってみれば家計と同じ仕組みです。
ただ、この貯金は銀行預金か何かで置いてあるのではなく、国内外の株式や債券等を一定の比率で組み入れて運用しています。値動きのある株式や債券で運用しているのですから当然、運用資産の金額は変動します。儲かっている年もあれば損をしている年もあるということです。
ところが、2001年から2014年9月末までの累計収益、すなわちトータルの儲け額は約41兆円にもなります。途中、リーマンショックやサブプライムローン、欧州債務危機などで株価が大きく下落した時期もありました。例えばリーマンショックが起きた2008年度は年間で9兆円強のマイナスが出ていますが、こうした損を乗り越えてトータルで41兆円の利益を出しているのです。
ちなみにこの運用成績を過去13年間の平均で見れば年率2.76%になります。預金金利がゼロに近いような低金利時代の運用としてはそれほど悪くないと言ってもいいのではないかと思います。
最新の運用状況を把握する
マスコミなどはあまりこの事実は積極的に報道せず、リーマンショックなどで下落してマイナスが出た時だけ大きく報道するので、何だか年金の運用は失敗ばかりしているような印象を与えますが、これは明らかにミスリードです。言うまでもなくマスコミは話題性のあるものを報道したいのは当然ですから、どうしてもそういう報道になりがちなのは止むを得ません。
したがって単にニュースだけに惑わされるのではなく、自分で運用の実態を確認すればいいのです。これは実に簡単で、年金の運用を行なっている「年金積立金管理運用独立行政法人」(略称:GPIF)のホームページへアクセスすれば、誰でも最新の運用状況を把握することができます。
もちろん、今までの運用が比較的うまくいっていたと言っても、今後もうまくいくとは限りません。最近ではこのGPIFの運用について方針を変更しようという動きが出てきています。
これについてはメリットとデメリットの両方がありますので、次回にそのあたりのことをお話してみたいと思います。