竹田恒泰
    ブロマガ「日本はなぜ世界で一番人気があるのか」   ▼第二号 
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                       平成24年11月13日                         
  お題「教育勅語はなぜ世界で認められたか?」
                                その2
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先週は、『教育勅語』が必要となった背景を書きました。
今週は明治天皇のお人柄に迫ります。

明治天皇と言えば、どんな特徴があるかというと、
和歌を10万首詠んだ方、です。

和歌を10万首ですよ!

人によって人生の長さというのが色々とありますけれども、
人生は大体3万日位と言われてます。
3万日、ということはオギャーと産まれ落ちてから、
最後点滴まみれになって息を引き取っていくまで
毎日1首づつ詠んでも3万首です。

さすがに赤ちゃんのうちは詠めませんから、
それを考えれば人生3万日といっても、
実質2万日位(365日×50年=18,250日)でしょう。
ということは毎日毎日5首ずつ詠み続けて10万首詠めるかどうかです。
ですから日によっては5首、10首、20首と詠んだ日が
あったかもしれない。
そのようにしてとにかく歌を詠んで詠んで詠み続けた人生だったのです。
でも決して歌だけ詠んでいればいいという訳ではなくて、
それはお忙しいご公務があって、その合間の時間に、
和歌をお詠みになって、書き留めたのでしょう。

そこで、少し考えて欲しいのですが、
天皇は何故歌を詠むのでしょうか。

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◯天皇はなぜ歌を詠むのか?
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明治天皇は10万首という、とてつもない数の歌をお詠みになりました。
歴代の天皇はとにかく歌好きでいらっしゃいますが、
それにしても明治天皇の10万首は群を抜いた多さです。
歴代天皇の御製(ぎょせい、天皇の歌のこと)は今に多く残されています。
万葉集とか古今和歌集とか様々な歌集にも収録されています。

何故天皇は歌を詠むのか、これは、一言で言うと「祈るため」であります。

祈る手段が歌を詠むという事なんです。
天皇は娯楽や芸術で歌を詠んでいる訳ではないんですよ。
「自分の作品を評価して欲しい」
というようなものではありません。
そもそも、人に評価してもらうために歌を詠んでいるわけではないのです。

普通なら、詩や歌を詠んだり、blogを書いたりすれば、
それは人に見てもらいたいと思うのが人情ですね。
絵を画くことだってそうです。
何のために絵を描くのでしょうか?
それは人に見てもらいたいからです。
誰にも見せない絵を画く人は希ですね。
もちろん、作曲もそうです。
誰かに聞いて欲しいから曲を作る訳ですよね。
そう。芸術とは本質的に、誰かに見たり聞いたりしてもらうものです。

ところが、天皇は人に聞いてもらうために歌を詠んでいるわけではありません。
和歌の五七五七七というリズムは、神に直結するリズムです。
ですから神様に対しては、あれこれたくさんの言葉を使うよりも、
五七五七七で詠み上げると直接伝わるのです。

ですから天皇が和歌を詠むというのは娯楽のためではなく、
芸術作品でもない、人に詠み聞かせるためでもないんです。
ただ唯一の目的は「祈るため」です。
そもそも、天皇は「祈る存在」です。

そして、その祈りは、国民一人ひとりの幸せを祈るものです。
これが天皇のお姿なのです。