昨年の“従軍慰安婦”大誤報、謝罪以来、朝日の読者投稿欄「声」が明らかに変わってきた。

平和安全法制問題でも、原発再開問題でもアリバイ的に必ず賛成の投稿を1篇か2篇掲載するようになったのだ。

「声」欄、担当者がいったいどんな顔をしてそんな投稿を選んでいるかと想像するとおかしくなる。

それにひきかえ変わらないのが毎日の読者投稿欄「みんなの広場」。8月1日にもこんなヒドイ投稿が掲載されていた。

下関市の僧侶という人物(72歳)からのもの(武士の情けで名前は伏せる)。

中国が安倍総理の訪中に三つの条件を提示したことについてその僧侶は〈日本にとってこれほど屈辱的なことはない〉と書き、〈一国の首相の外国訪問に対して相手国が条件をつけるなどあり得ないはずです〉と続けている。

ここまではいい。

なかなかいいことを書いているではないかと思って読み進むと、あとがいけません。

いきなり〈それをするほど(三条件をつけるほど)中国の安倍政権への不信感は根強いのです。折しも政府は東シナ海のガス田施設の写真を公開したり、防衛白書で中国の海洋進出を懸念してけん制をしたりしていますが、これらが逆効果にしかならないことは明らかでありましょう〉

話が全く逆ではないか。

無法にガス田にプラットフォームを建設したり、南シナ海で大規模な埋め立てを行い、滑走路までつくっているのは中国ではないか、

連日のように尖閣周辺に艦船が接近、時に領海侵犯までして何やら調査しているのは中国ではないか。

突然、防空識別圏を設定したのも、レーダー照射をしたのも中国だろう。

何が〈安倍政権への不信感が根強い〉だ。繰り返す。話が全く逆だ。

で、この僧侶なる人物の結論は〈安倍政権が致命的に欠いているのは外交力です〉

こんな論理的にも、事実としても成立しないバカげた投稿を「みんなの広場」担当者はいったいどういう考えで掲載したのか。

毎日新聞にも朝日と同じように「紙面、記事への御意見」として電話番号が書いてあるので、早速電話してみた。

ま、あまり期待はしてませんでしたがね。

「まず、読んでください」と言うと、なぜか電話口で音読していた。

「おかしくないですか」

疑問はもたなかったらしい。

で、いかにこの投稿がおかしいかを説明する。

が、返事は予想通り。

「いろんな意見がありますから。担当者に伝えます」の一点張り。

そうじゃない、あなたの意見が聞きたいんだと言っても絶対に意見を言わない。

「じゃあ、担当者の返事は聞けるのか。後刻電話してもいい」

「いや、いつ伝えられるかわからない」

いったい、新聞の「御意見」係というのは何なのか。読者はこう考える、しかし新聞記者はこう考えて記事を書いた。論を闘わすことで、考え方も深化し、幅広くなるのではなかろうか。それが新聞記者にとっても勉強になるのではないだろうか。

読者の意見を聞くというなら、ただアリバイ的に聞きおくだけでなく、そのくらいの覚悟をもってやるべきだ。



花田紀凱



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