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<あまがえるたちが、仕事に精を出している。>
あま「いやいやいや、これは良い仕事をしたんじゃないか?」
あま「決まったねぇ。バッチリだ!」
アリ「おぉ!なんとすばらしいお庭なんだ♪あまがえるさん達、本当にありがとう!」
あま「おぅ、アリさん☆なぁに、良いってことよ♪」
あま「良い仕事をしたあとは、美味い酒だね!」
あま「そう言えば、新しいバーが出来たみたいだよ。帰りに寄ってみる?」
<桃の木の下に出来た新しいバー>
あま「ほほぉ。舶来のウ……ウェスケイ?」
あま「おまえはホントに無学だな。舶来っつーんだから、外国の酒だろう」
あま「なんだなんだ、ウィスキーも知らんのか?」
あま「知らんも何も、おまえさんも飲んだことなんかないだろ?」
あま「無学を晒してないで、飲んでみりゃいいだろ!一杯で二厘半ってんだから、味見してみようぜ」
SE カランカラン~♪
SE カランカラン~♪
トノ「へい、いらっしゃい」
あま「三〇匹だけど、大丈夫かい?」
トノ「あー、ちょっと狭いかもしれませんが、よろしいですか?」
あま「構わんです。んじゃ、失礼しますよ」
トノ「どうぞ、どうぞ」
あま「表の看板を見たんですが、なんでも舶来のウィスキー?それを試しに一杯飲ませて頂けますかい?」
トノ「へい、舶来のウィスキーは一杯二厘半になります。よござんすか?」
あま「よござんす!」
トノ「とにかく酒精の強い酒ですけど、クイッと飲み干して鼻から息を吐いてみて下さい」
SE コンとグラスを置く
あま「ほほぉ……では、さっそく……(こくんと飲み干す)……ンフー……うぇーい♪こいつぁどうにも酷いもんだ!腹が焼けるようだ♪うぃー♪」
あま「お♪よさげだねぇ。こっちも貰えますか?」
トノ「はいはい。どうぞどうぞ」
SE コンとグラスを置く
あま「どれどれ……(グッと飲み干す)……ぐ!ンー(鼻から息を抜く)……こりゃすごい!喉から胃に落ちていくのがなんとも……なにより、この香りが良い……いい気分だねぇ。もう一杯貰おう」
あま「なになに?そんなに良いのか!こっちにも寄越してくれ!」
あま「こっちもだ!」
トノ「はいはい、お声の順に差し上げますので。はい、こちらをどうぞ」
あま「ありがとう。(ごくん)フォー!ケホッ……美味いねぇ」
<時間経過>
あま「おーい、もう一杯くれぇ」
あま「こっちも、も一杯おくれよぉ」
トノ「随分したたかに酔っていらっしゃいますが、大丈夫ですか?もう三〇二杯目になりますよ?」
あま「わっはっはっは!そんなに飲んでるのかぁ……うぃ……じゃあ、飲むよ」
トノ「なんとお強い!では差し上げましょう。さぁ」
あま「ウェーイ」
あま「おい、はやくこっちへも……おくれ……よ……」
あま「ZZZzzz」
あま「グゥー……ガァー……」
トノ「やぁーっとこさ全員潰れましたか。さてさて、これからがお仕事ですぞ」
SE ガサゴソ
トノ「おい。起きな。もう店仕舞いだよ。勘定を払うんだよ。さぁ」
SE ガスッ!(軽く物で殴りつける)
あま「あが!あー、誰だい?ひとの頭をなぐる奴は」
トノ「勘定を払いな」
あま「お?あぁ、そうそう……えー、あー……感情はいくらになってますか?」
トノ「お前さんは、三四二杯で、八五銭五厘だ。どうだ?払えるか?」
あま「えーっとぉ……財布、財布っとぉ……あ」
トノ「ん?なんだい、おまえは三銭二厘しかないのか。呆れた。そんなんじゃ、一二杯しか飲めやし無かったんじゃないか。さぁ、どうするんだ?警察に届けるよ?」
あま「え!それは許して下さい!許して下さいー!」
トノ「何を許すんだい?」
あま「その……お支払い出来ない事?ですかね」
トノ「そんな道理があるか!許すわけ無かろう。ほら、払え」
あま「無い袖は振れないんです。許して下さい。代わりに私の体を買って下さい」
トノ「ワシにゃそんな趣味は無い」
あま「……いや、そう言う意味じゃなく、丁稚でもなんでもって意味で」
トノ「下賤者として、ワシに仕えるってことで良いか?」
あま「そのように……」
トノ「よかろう。じゃあ、そっちの部屋に行くが良い」
あま「へい……」
トノ「じゃあ、次か……おい、起きるんだよ。勘定だ、勘定!」
あま「うぃぃ……も、もう一杯……」
トノ「なに寝ぼけてるんだ。もう終いだよ!勘定を払いな」
あま「最後の一杯だけで良いから……」
トノ「このボケチンが」
SE ガスッ
あま「んぐ!……いっつぅ……あー、勘定ね、はいはい」
トノ「お前のは……六百杯も飲んだのかい?水でもそんなに飲まんだろうに。一円五十銭だよ。払えるか?」
あま「いっ!?一円を超えたのか……あ、有り金全部出すんで、負けてはもらえませんかね?」
トノ「うん?一円二十銭もあるのかい?それなら……って、一銭二厘じゃないか!!馬鹿にするんじゃないよー?勘定を百分の一にしろってのかい?外国の言葉で言えば1%にしろってことじゃないか!馬鹿にするのも大概にしな!さあ払え!びた一文負けないからな」
あま「……だって、無い物は無いんだもの」
トノ「んな、かわいくぶうたれても駄目だよ。耳揃えて払いやがれ」
あま「無理」
トノ「じゃあ、ワシに丁稚奉公しな」
あま「しゃーない。そいじゃ、そうして下さい」
トノ「んじゃ、向こうの部屋に行ってろ」
あま「はぁい」
トノ「残り……まぁだこんなにいるのかい……んじゃ、まとめて……」
SE バシッバシッバシッ
あま「うわっ!」
あま「いてぇ!」
あま「うげ!」
あま「っだー!」
あま「んあ?」
SE ドン!
トノ「おい、お前ら!全員起きな!」
あま「なんだ?バーのおやじじゃねぇか!何しやがるんでぃ!」
トノ「何って、勘定を払わせるために叩き起こしたんだよ!お前たちは、ワシの酒を飲んだ。どいつの勘定も八十銭より下は無い。ところがお前らは五銭すら持ってやいない。なんなら鐚銭(びたせん)すら持ってない奴までいる始末。……へそくりもありゃせんのだろ?えぇ?」
あま「……おい、誰だ財布すら持って無い奴……」
あま「い、いや……借りて後で返そうかと……」
あま「おまえだったのか……」
トノ「お前たちの仲間が二匹、ワシの下で丁稚奉公、つまり下僕になることになったのだが……お前らも同じで良いのかな?」
あま「どうも仕方ない。そうしようか。」
あま「そうお願いしよう。」
あま「どうかそうお願いいたします。」
トノ「うむうむ、よしよし。みな、ワシの下僕じゃ。汗水流して、働け!」
あま「飲んじまったんだ、仕方がない」
トノ「では、いまよりお前らを入れて『カイロ団』とする。ワシがカイロ団長じゃ。明日からみんな、ワシの命令に従うんだぞ!いいな!」
あま「はーい」
あま「へーい」
あま「ほーい」
あま「カイロ団を作ったのは良いですが……どんな団体なんですか?」
トノ「いうなれば、何でも屋だ」
あま「でも、依頼は一つも来ませんね」
トノ「言うな」
あま「せめて相談だけでもあれば良いのですが」
トノ「言うな」
あま「まぁ、休んでいられるから楽で良いですが」
トノ「チクショー!」
トノ「どうもこう仕事が無くちゃ、お前たちを養って置いても仕方ない。……俺もトんだことになったもんだ……それにつけても仕事が無い時に、忙しい時の支度をしておく事が大事だ。つまり、その仕事の材料をこんな時に集めておかないといかんな。ついては、まず第一が材木だ。今日はみんな出て行って、立派な木を十本……いや、十本じゃ少ない。えぇっと、百本!百本でも余裕はないな……千本集めて来い!もし千本集まらなかったらすぐに警察に訴えるぞ。お前らはみーんな死刑だな。その太い首をスポンと斬られるぞ♪いや、首が太いからスポンとはいかない……シュッポォンと斬られるぞ(笑)」
あま「おぉい!そっちに気はあるか?」
あま「いんや、あらかた切ってしまったから、遠くに行くしか…」
あま「それじゃあ、間に合わん!」
アリ「おや?あまがえるさんたちじゃないか。この前は、良い仕事をありがとうございました。それにしても、そんなに慌ててどうしたんだい?」
あま「アリさんじゃないか!実は木を千本、とのさまがえるに持って行かないといけないのです。だのに、まだ九本しか見つかりませんで……」
アリ「千本?あははは!そんなもの、そこまで立派な木で集めようとしたら、例えここがジャングルでも持ち運べやしないでしょうよ。『木』を『千本』持って行けばいいのでしょう?だったら、そこにある煙のようなカビの木を鷲掴みして持って行けば良いじゃないですか。それで五百本とかになるでしょ?」
あま「あなたは天才か!」
あま「それなら出来る♪」
あま「アリさん、ありがとう!!」
あま「よし、帰るぞー♪」
あま「団長!数え千本、ご覧の通りです!」
トノ「どれどれ……ふんふん。よぉし、よし!しっかり千本あるな!さぁみんな、舶来ウィスキーを一杯ずつ飲んで、しっかり休んでくれ♪」
あま「ひゃっほーい♪」
SE チュンチュン
トノ「おい、みんな。集まれ!今日もどこからも仕事を頼みに来ない。だので、今日はな、あちこちの花畑に出て行って、花の種を拾ってくるんだ。ひとり百粒……いや、少ないな。千粒!いや、日も長いのだがら一万だな。一万粒ずつ拾ってこい!いいか?もし、拾ってこなかったら、お前らを巡査に渡すぞ!巡査は首をシュッポォンと斬るぞ(笑)」
あま「おい。一万粒拾えそうかい」
あま「急がないと駄目そうだよ、まだ三百粒にしかならないんだもの」
あま「さっき団長が百粒ってはじめに言ったねぃ。百粒なら良かったねぃ」
あま「うん。その次に千粒って言ったな。千粒でも良かったのにな」
あま「本当にね。それにしても、おいら、お酒をなぜあんなに飲んだろうか」
あま「おいらもそいつを考えているんだよ。どうも、一杯目と二杯目、二杯目と三杯目、みんな順ぐりに糸か何かついていたよ。三百五十杯つながっていたと、おいら今考えてるんだ」
あま「全くだよ。おっと、急がないと大変だ」
あま「そうそう。急ごう」
あま「団長!数え一万粒、ご覧の通りです!」
トノ「どれどれ……ふんふん。よぉし、よし!しっかり千本あるな!さぁみんな、舶来ウィスキーを一杯ずつ飲んで、しっかり休んでくれ♪」
あま「ひゃっほーい♪」
SE チュンチュン
トノ「さて、今日は何の仕事をさせようかな。石を運ばせてやろうか。おい。みんな今日は石を一人で九十匁(もんめ)ずつ運んで来い。いや、九十匁じゃあまり少ないかな?九百貫ずつ運んで来い♪もし運んで来なかったら、早速警察へお前らを引き渡すぞ?ここには裁判の方のお方もお出でになるのだ。首をシュッポォンと切ってしまうくらい、わけのない話しだ♪」
あま「エンヤラヤー……ホイ。エンヤラヤー……ホイ」
あま「これで、やぁっとこ、百匁……」
あま「残りは八九九貫九百匁……ムリだー!」
あま「それでも、やらにゃ終わらんぞ」
あま「終わらにゃ、シュッポォンだぞ」
あま「だけども、まずは休憩だ」
あま「ぐーぐー」
トノ「何だ。ノロマども。今までかかってたったこれだけしか運ばないのか。何というお前らは意気地なしだ。オレなんぞは石の九百貫やそこら、三十分で運んで見せるぞ」
あま「とても私らには出来ません!私らはもう死にそうなんです!」
トノ「えい、意気地無しめ。早く運べー!晩までに出来なかったら、みんな警察へやってしまうぞ。警察ではシュッポンと首を切るぞ。馬鹿め。」
あま「……だったら……だったら、どうか早く警察へやって下さい!シュッポン、シュッポォンと聞いていると、それはそれで何だか面白いような気がします!」
トノ「えい、馬鹿者め意気地無しめッ!えい-」
蝸牛「ガーーー」
トノ「なんだ?」
あま「なんだ?なんだ?」
蝸牛「ガーーー」
蝸牛「王様の新しいご命令。王さまの新しいご命令。一個条。ひとに物を言いつける方法。ひとに物を云いつける方法。第一、ひとにものを言い付ける時はその言い付けられるものの目方で自分の身体の目方を割って答を見つける。第二、言い付ける仕事にその答をかける。第三、その仕事を一辺自分で二日間やって見る。以上。その通りやらないものは鳥の国へ引き渡す。」
あま「言い付ける場合は、つまり、自分でやってみろ?ってこと?」
あま「えぇーっと、計算すっぞ?言い付けられる我々の目方は十匁。言い付ける団長の目方は百匁。百匁割る十匁、答は十。仕事は九百貫目。九百貫目掛ける十で、答は九千貫……」
あま「九千貫だってよぉ!」
あま「団長さん。これから晩までに四千五百貫、石をひっぱって下さい。」
あま「さあ、王様の命令です。引っぱって下さい。」
あま「さぁさぁ行きましょう♪お連れしますよ♪」
あま「さぁ、石場はここですよ」
あま「さぁ、これを晩までに四千五百ほど運べばいいんです。九百貫で三十分ほどなら、三時間もかかりまいまして」
あま「流石は団長さまだなー」
あま「よっこらせ♪どっこいせ♪」
トノ「んー!!ハァ……んー!!!ハァ……」
あま「あ、そーれ♪よっこらせ♪どっこいせ♪」
SE ボキッ!
トノ「んがっ!」
あま「あ……」
蝸牛「ガーーー」
蝸牛「王様の新しいご命令。王様の新しいご命令。すべてあらゆる生き物はみんな気のいい、可哀そうなものである。決して憎んではならん。以上」
あま「おい!団長の怪我を手当てしてやろうじゃないか」
あま「冷たい水を持って来たぞ」
あま「団長、サポートすっから、ばばーんと九百貫くらい運んじゃいましょう!」
トノ「あぁ……(泣)……みなさん、私が悪かったのです。あまりに景気良くお酒を飲み、馬鹿みたいだから、労せずに安い労働力が手に入ると考えていました。私はもうあなた方の団長でもなんでもありません。私はやっぱりただの蛙です。あしたから仕立屋をやります」
あま「よっしゃー!明日からまた仕事を頑張って、美味しい酒を飲むぞー!」
END
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