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吉田尚記×宇野常寛『新しい地図の見つけ方』第2回 知のコンテナ(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.534 ☆
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吉田尚記×宇野常寛『新しい地図の見つけ方』第2回 知のコンテナ(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.534 ☆

2016-03-04 07:00

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    吉田尚記×宇野常寛『新しい地図の見つけ方』
    第2回 知のコンテナ
    (毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.3.4 vol.534

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    活字を中心とした旧来の教養に代わって、インターネットを中心とした新しい知性が登場してきている中、私たちはいかにして〈知〉と向き合っていけばいいのか。「役に立つ」よりも「面白い」知性のあり方を、吉田尚記さんと宇野常寛が語り合います。(初出:「ダ・ヴィンチ」2016年2月号(KADOKAWA/メディアファクトリー)

    毎週金曜配信中! 「宇野常寛の対話と講義録」配信記事一覧はこちらのリンクから。

    ▼対談者プロフィール
    吉田尚記(よしだ・ひさのり)
    1975年12月12日東京・銀座生まれ。ニッポン放送アナウンサー。2012年、『ミュ〜コミ+プラス』(毎週月〜木曜24時00分〜24時53分)のパーソナリティとして、第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞受賞。「マンガ大賞」発起人。著書『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』(太田出版)が累計12万部(電子書籍を含む)を超えるベストセラーに。マンガ、アニメ、アイドル、落語やSNSに関してのオーソリティとして各方面で幅広く活動し、年間100本近くのアニメイベントの司会を担当している。自身がアイコンとなったカルチャー情報サイト「yoppy」が春より本格スタートを控えており、現在準備サイトが展開中(http://www.yoppy.tokyo/)。

    ◎取材・文:臺代裕夢



    宇野 僕が企画編集した落合陽一さんの『魔法の世紀』がものすごく反響をもらっている。この本では一般書と学術書の中間くらいの専門的な議論をしているのだけど、文体は「ですます」調でかなり話し言葉に近づけている。これってオールドタイプの読書人からは軽く見られると思うのだけど、僕はそれでいいと思って送り出した。理由はインターネット以降、話し言葉と書き言葉はぐっと近づいていて、これまでの書き言葉の文体があまり有効ではなくなっていると感じたからなんだ。僕の考えでは今の日本語の書き言葉の文体はロジカルな記述に向いていないし、文脈読みしないと正確に読めないし、実は吸収効率も良くないと思う。だからインターネット以降、日常的に書かれた文字でコミュニケーションを取るようになった現代では、そのことに気付いた読者から見放されつつあるんじゃないかと思っているんです。

    吉田 現代における人間と文字情報の関係を考慮して、新しい試みをしてみたわけですね。確かにインターネットやスマホの発達によって情報をより手軽に、より細分化して発信も受信もできるようになりました。文字情報をデリバリーする方法がぜんぜん違うものになってきているとともに、知性や教養の作り方自体が変わってきているんじゃないかと思うんです。

    宇野 これは物書きとして危機意識を持って実感することなのだけど、そもそもいま自分の能力開発に熱心な人は、知を運び、受け取るための手段として文字ベースのものを選ばなくなってきているのだと思う。TED(※1)のように音声・口語ベースのものを、さらにはワールド・カフェ(※2)のように会話ベースのものを選ぶ傾向にある。これは要するに知的体験として「読書」が選ばれなくなって来ているということ。ネット以降人間と知識、情報の関係が変わって詰め込みの価値が下がったこと、そして知識の吸収効率的にも、頭の解きほぐし的にも、そしてモチベーション管理的にも、音声ベース、会話ベースのものが有効だと気付き始めているのだと思う。

    (※1)学術・エンターテインメント・デザインなど、さまざまな分野の第一線で活躍している人を招いて講演会を行っている非営利団体。講演の様子はネット上で無料配信されている。
    (※2)カフェのようにリラックスした空間に複数の人間が集まり、相手を変えながら自由に意見を交換することで議論を深めていく手法。

    吉田 最近聞いた話なんですが、ハーバードでは最初に自分のモチベーションを上げるための訓練をするそうです。つまり、勉強のために本を読むなら、まず「なぜ自分はこの本を読むのか」ということを考えて、「うわー、すっげー読みてえ!」というところまでモチベーションを高めてから読み始める。そうするとあっという間に読めるし身につくっていう。優れた研究者たちは共通して、自分のモチベーションをコントロールする術に長けているんですって。

    宇野 こうした流れに対して、彼らはコミュニケーションで承認欲求を満たしているだけで知と向き合っていない、とかオールド文化人が一生懸命Twitterで主張するのは天に唾する行為でしかないと思うんですよ。そうじゃなくて、この“新しい知のコンテナ”、つまり情報化時代の音声、会話ベースの知識吸収方法を生かしながら、それをどう充実させて行くのかを考えた方が建設的だと思う。新しい革袋はもうできかかっているのに、そこに注ぐべき新しい酒がまだないのが本当の問題で、だから「意識高い」イベントに片っ端から参加してはFacebookに写真を投稿して「いいね!」を集めるだけの人が悪目立ちしてしまっているのだと思う。

    吉田 そもそも「人はなぜ知を求めるのか」ということを考えたときに、多くの人は「より高みに上るためだ」というふうに考えていると思うんです。その結果、FacebookやTwitterが他人に対してマウンティングするための道具になってしまっている。「自分はこんな人と知り合いなんだ」とか「こんなセミナーに参加して勉強をしてるんだ」ということをアピールして、ソーシャル的なランキングを上げるための道具に。だけど僕は、知というのは「もっと楽しくなるため」にあるものだと思うんですよ。単純に、より多くのことを知っているほうが世の中楽しくなるじゃないですか。

    宇野 知性=面白さだという前提は忘れないようにしたいですね。この“新しい知のコンテナ”のもうひとつの弱点は、それが「役に立ちすぎる」ことだと思う。「就職に有利になる」とか「お金が稼げる」、「人脈を広げられる」とか、実利と結びついた目的を謳いすぎていること。これはこの文化が自己啓発やマネジメントと言ったビジネスの世界から台頭して来たことと結びついている。だから今大事なのはこのノウハウを使って、「役に立つ」ことじゃなくて「面白い」ことをやることだと思う。
     ここでは比喩として「コンテナ」という言葉を遣っているけど、あれってもともと海運の会社が荷物をたくさん積めるように作ったものではなくて、陸運の会社が「そのまま船に積み込めるトラックの荷台を作ったら最強じゃね?」っていう発想で作ったわけ。要するに互換性を優先して決められた基準なんだよね。同じことがこれからの「本」や「知性」の形式にも言えると思う。だから僕は吸収効率やモチベーションという観点からまず形式を考えて、その中にどう意味のあるものを詰め込むかを考えていいと思う。


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