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【第253号】トリパンダの覚醒
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【第253号】トリパンダの覚醒

2019-09-02 07:00
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    山田玲司のヤングサンデー 第253号 2019/9/2

    トリパンダの覚醒

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    「夏が終わりますね」

    夕方のバス停でトリネコが言った。
    雨はあがったけど、まだ空気は青く湿っていた。

    僕は平凡な「トリパンダ」だけど、最近はもう飛んでない。時間がないし、そんな元気もない。

    本当は誰ともしゃべりたくないと思っていたけど、トリネコさんとは何度もこのバス停で一緒になるし、無視して気まずい感じになるのも面倒だ。


    「まだまだ蒸し暑いですけどね」
    そう言うと、トリネコが話を始めた。

    「たまに涼しい朝なんかが来ると、意味もなく寂しくなって、サザンでも聴きたくなる夏の終りが・・9月・・・ですよね・・・」

    「あ・・ですよね・・」

    「何十年か昔は「ああ、秋もいいよね」とか「重ね着できる季節っていいよね」とか「今年のクリスマスどうする?」なんて事を呑気に言ってたもんです・・・世間の雰囲気がね・・」




    【嘆きのトリネコ】

    トリネコはいったい何が言いたいんだろう。
    ただ寂しいだけなのか、単なる暇つぶしなのだろうか。いい加減バスが来てくれてもいい頃なのに、バスはどこを走っているんだろう。

    トリネコは続けた。
    「いろんな事を「見ないフリして先送り」しているうちに、世の中はとんでもない事になってます」
    今度は時事問題か?勘弁して欲しい。

    「煽り運転だか何だか、お隣さんがどうとか、アートがどうしたとか騒いでるうちに「消費税は10%」になり、ドブの海で泳ぐらしい「オリンピック」には3兆円使う事になってる・・」

    「はあ・・」

    「何でもかんでも勝手に決まっていく「暴走トロッコ」に気がついたら乗せられている」

    「暴走トロッコ・・ですか・・」

    「ある程度の覚悟はしていた私でも、今の世の中の「転落」には混乱してます・・」

    「覚悟?」

    「ええ。もうずっと前からです。気候変動が我々の息の根を止めるのはわかっていましたからね」

    「やばいとか、大丈夫とか、言ってるうちに、本当に天気がおかしくなってますもんね」

    「ええ・・世界中の科学者がこのままでは文明は終わるだろうと言ってます」

    「聞いたことがあります。でも、何も変わりませんよね・・」

    「ええ・・」

    そう言うと、トリネコは黙り込んだ。
    何だか気まずい沈黙が訪れた。何台もの「どうでもいい車」が通り過ぎたけど、肝心のバスは来ない。


    「でもね、トリパンダさん・・」
    トリネコは続けた。

    「5月にスイスのある研究機関が出した報告で「1兆2000億本の木を植えることで人間が排出する二酸化炭素を10年分吸収してくれる」という話がありましてね・・」

    「はあ・・・」

    「どうやらこの地球には約3兆の木が生えていて、その木々は光合成により日々膨大な量のCO2を吸収しているらしいんです」

    「3兆・・ですか・・」

    「彼らは、あと1兆2000億本の木を植えたら、過去10年分のCO2を吸収してくれる、というんです。さすがスイスチームです。海水エンジンの実用化といい、希望のある話を聞かせてくれるじゃないですか」

    「ほう・・」

    「それから私はずっと「1人何本の木を植えたら目標に達するのか」を計算していました。
    我々がいかに増えたと言っても、赤子や老人を省いた「実働人口」は多く見積もっても約50億人くらいか?・・なんて・・」

    「・・・・」

    「その全員が月に10本の木を植えたとしても500億本にしかならない!
    1年間それを続けても6000億本だ。どうにも途方も無い」

    「ですね・・」


    「いや、待てよ。それでも目標の半分には行くじゃないか・・」

    トリネコは熱弁を続けた。

    「つまり5年分のCO2は吸収されるし、それを2年間続ければ目標クリアだ!
    我々は「たった2年だけ1人月10本の植林をする」だけで助かるんです!!」

    「でも、その・・予算はどうするんですか?」

    「予算?そんなもん世界の軍事費は去年だけで総額1兆7390億ドル(約190兆円)ですよ。
    2年だけ「植林」にまわしても十分おつりが来そうな額を我々は殺し合いの準備に使ってるわけです」

    「・・・・」

    「そんな戦争屋だって、洪水とかで大好きな戦争ができないのは困るでしょう・・」

    トリネコはちょっとした皮肉を込めて話を終えた。

    僕は少し面白くなってきて、聞いてみた。
    「この話、SNSとかに書いたりしたんですか?」


    「いえいえ、こんなの実現するには問題が多すぎるので、ネットに書いたとたんに「頭がお花畑」
    と冷笑されるだけです」

    「そうなんですか・・」

    「ええ。でも何か別の方法でこういう類の『具体的方法』を伝えられないか考えていたら、アマゾンの森が燃えていましてね・・・」


    「ああ・・」

    「アマゾンがヤバイって話は、少し前に聞いていて、私もブラジル政府の変化を心配していたんですけどね」

    「あれも本当は大した燃焼ではない、とか言う報道もありますよね?」

    「だといいですがね・・同時にシベリアの森もインドネシアの森も燃えていますからね」
    「え?」

    「そんなアマゾンの森林火災への先進国からの対策援助金は約21億円らしいです」
    「はあ・・」

    「そして東京オリンピックには3兆円」
    「・・・・・・・・」

    「何でも大ヒットしてる劇場アニメでは「気候変動なんか関係ないんだ」とか言ってるそうですよ」




    【それでも生きねばならない】
     
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