たまには「みんなの知ってるコンテンツ」についてもやらないとまずいかもな。なんて。
とうとう「ルパン3世特集」をやってしまいました。
僕は基本的に天邪鬼なので「みんなが大好き」という雰囲気になってるものを避けがちなのだけど、さすがにそういう時期も越えたので、今回初めてちゃんと「カリオストロの城」と「ルパン対複製人間」を観ました。
その分析については放送でたっぷり語ったのでいいんだけど、どうしても「あの問題」だけは頭に残ってしまって困っています。
それは「クラリス問題」と「ルパンは不二子を愛していない?問題」です。
平和な檻の中では美少女が神になる
峰不二子というキャラクターは、セクシーで自分を持った、何者にも縛られない「強い女」です。
ある意味「ボンドガール」を越えた存在感です。
そして、そんな「手に負えない強い女」を相手にする最初の頃のルパンもまた「タフな男」でした。
これはまだ戦争と戦後のタフな時代の名残の中から生まれていて、これが戦争も学生運動も過去になった時代になると、そのタフさは「笑いのネタ」になってしまうんですね。
宮﨑駿も戦争体験者ではあるのだけど、すでに平和な空気の中でアニメを制作していた人です。
平和な空気の中では、女は強くなり、戦う場所を失った男達は逆に弱くなっていきます。
そうなると、不二子のように「強くて自分勝手な女を追いかけるのは無理です」という男が増えてくるわけで、そこに「清純な美少女クラリス」の登場だったわけですね。
それによってカリオストロでは「自分を持った強い女(峰不二子)」は「おばさん」にされてしまうんですね。
そんなこんなで、この国は「美少女が神」になり、男達は延々と「美少女の人気投票」を続けているわけです。
本当に平和ならそれでもいいんですけどね。(本当の意味で平和とは言えないんでね)
ルパンは不二子を愛してはいない?
ルパンというキャラクターは、「常に峰不二子を追いかけている」という「お約束」があるので、あまり考えないで観ていると「ルパンは不二子を愛しているんだな」と思ってしまいそうになるんだけど、実はそうではないんです。
本当に愛があるならしないような事をルパンはやりまくるし、「愛してるぜ不二子」と言うセリフに「愛」は感じられない。
お互いが「そういうゲーム」をしているように見える。
でも、それは一般的男女関係におけるの「愛」がない、という話で、実はこの2人は「別の次元」で愛し合っているのだと思う。
それは「性愛を超えた尊敬」や「自由という過酷な人生を選択した人間に対する敬意」だと思う。
そもそも本当のルパンや不二子は「恋愛」という男女間の幻想から目覚めているのだ。
このあたりのハイレベルな関係をアニメーターという職人さんが理解できるかどうかが、各作品の違い(面白さ)になっているのが「ルパンシリーズ」だとも思う。
不二子を1番理解しているルパンはどのルパンか?
僕はモンキー・パンチ先生の原作漫画の絵がとても好きです。
何しろセンスがあってセクシーだ。ディズニーや萌え絵の要素が全くないのもいい。
なので、原作ルパンの絵を最高に美しく演出している山本沙代監督の「峰不二子という女」のシリーズは大好きです。
シリーズの放送開始から観ていて、すぐに対談を申し込んだくらいです。
実際に会ってみたら、彼女は僕の『アガペイズ』という漫画の読者さんだったらしく、そこからはすっかり飲み友達です。
そんな個人的な贔屓を抜きにしてもこの「山本沙代ルパン」は、内容も一味違います。