オバマ次期政権と日米関係・国際関係〈1607字〉

1:米国の関心は中国と中東
 今回、大統領選挙討論の第3回中東において、極めて興味ある資料が提供された。
23日付ワシントン・ポスト紙は「第3回大統領選討論で両候補が言及した回数は、イラン-47,イスラエルー37,中国―32,シリアー28,リビアー12,デトロイトー3,ギリシアー2」と報道した。勿論日本は言及されていない。
上記の言及が今後のオバマ大統領の全てではない。しかし、ここから明確に言えることは次の通りである。
①    米国国民の圧倒的関心は中東である。
特に、イランの核兵器開発が最大の関心である。
②    中東に次いで高い関心は中国である。
③    ギリシアに象徴される欧州金融不安も関心の中に入る、
④    対日政策は全く関心外である。
米国が中東に強い関心を示すのは、米国国内に存在するイスラエル・ロビーの
強大な影響力と深く関わっている。中東がオバマ外交の中心になっていくことは疑問の余地がない。

2:中東政策
 オバマ大統領は1期目前半、イスラム社会との関係改善、特にパレスチナとの関係改善を打ち出し、注目された。しかし、結果的には強力なイスラエル・ロビーの強い反発をうけ、この動きが後退した。第二期目、再選を考える必要がない中で、イスラエル・ロビーのオバマ大統領への影響力は若干後退する。その中、オバマ大統領が改めてパレスチナに取り組めるか注目されるが、無理ではないかと見るのが妥当であろう。
 最も注目されるのは対イラン政策である。
 イスラエルのイラン攻撃への圧力は強い。イスラエル・ロビーがこれを強く支持している。
 しかし、イランへの軍事攻撃は湾岸地域を含め、世界全体の不安定化が一気に加速する。オバマ大統領周辺が、どこまで理性的な判断が出来るか、注目される。
 アフガニスタンについては、最早米軍がアフガニスタンにとどまらなければならない合理的理由は全くない。、産軍複合体がどこかで戦争し、特にロジステック関係で巨大な利益を追求することが戦争継続の要請である。

3:中国政策
 中国の経済成長に減速傾向が見られる。
 しかし、西側諸国経済より高い経済成長を維持することには変化がない。
 中国経済の拡大に伴い、米国外交にとっての長期的課題は中国である。
 この中、米国には二つの流れが併存する。
 一つは中国と連携を図り、世界の主要国、米国と中国で大勢を占めていこうとする考えである。G2政策と呼ぶ。これを支持する勢力は金融界、産業界である。
 今一つは、中国の軍事的脅威に対抗する考えである。産軍複合体がその中心となる。この層の主張点に「オフショアー・バランシング」という考えがある。米国は財政赤字で軍事力を増やせない。その中、日本、韓国、フィリピン、ベトナムを使い、対中対抗勢力を作ろうとするものである。
 米国の対中国政策はこの二つの混在した物となっていく。どちらかの勢力が駆逐されることはない。オバマ政権にはどちらかというとG2政策を支持する勢力が強かった。

4:対日政策
 こうした中で、米国の対日政策がどうなるか、考えて見よう。
①    オバマ政権にとり、対日政策の重要性は低い、
②    ①と関係して、対日政策は一部の小グループ、ジャパン・ハンドラーズと呼ばれる人々に任せられる傾向を生む、
③    ジャパン・ハンドラーズと呼ばれる人々は主に軍事関係者を中心とする。

 この人々は、対中脅威を梃にして、日本の自衛隊の米軍との一体化を目指す。
 この中、日本の集団的自衛権確立を促す。
 さらに、この軍事関係者には占領軍的、植民地主義的考え方が色濃く残っている。日本の富は出来るだけ、日米で共有すべきとの考え方になる。このグループは一段と、TPPの推進を図る。
 結論としていえることは、オバマ大統領の日本への関心は低い。それは逆にジャパン・ハンドラーズの働く余地を拡大する。ジャパン・ハンドラーズ立ちは日本に安全保障、経済で従来以上に強く日本に圧力を掛けることが想定される。
(了)