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 さて、この前に再録した記事は実は前振りです。その記事で書いたように、ぼくは一度好きになると、めったなことではその「好き」という感情が摩耗しないタイプの人間です。

 子供時代に好きになったゲームなんか、いまでも延々と好きですから(『ファイアーエンブレム』とか超好き。ちなみに少女漫画化された作品も好き。作者はBL作家さんだけれど、女の子が可愛い)。

 おそらく小学生低学年の頃に読んでいた絵本の「かぎばあさん」シリーズなど、いま読んでも楽しめると思います(いま考えるとそこにはぼくの祖母への愛着が如実に出ていてこそばゆいのですが)。

 「一度好きになったら何十年たっても好き」。これがぼくの人生の原則です。しかし、それは「一切の欠点が見えないほど盲目的に好き」ということではありません。

 歳を取って目が肥えてくると、やはり少年時代には見えなかった難点がはっきり見えて来たりするわけです。ただ、そのことによって「好き」という感情が揺らぐことはありません。いったん発生した「好き」は、ぼくの存在の根幹に根を張って延々と存在しつづけます。

 先の記事で名前を挙げたカントク君こと庵野秀明さんにしても、いまでは日本有数のアニメーション監督になったわけですから、おそらくいま『ウルトラマン』を見たら、「このカット割りはちょっと……」とか、「シナリオの矛盾点がどうも……」と思うところはあるでしょう。

 しかし、おそらくかれの「好き」はそれでも揺らがないのだと思います。そこらへんは実によくわかるところで、ぼくにたとえば初期山本弘作品を語らせるとかなりうるさい感じです(『サイバーナイト』とか、いまだとちょっとどうかと思うところがなくはないんだけれど、でも好き)。

 ぼくがいわゆる「ライトノベル」の走りを読み始めたのは、いまから約25年前になります。ここらへん、あまり記憶がはっきりしないのですが、おそらく角川スニーカー文庫や富士見ファンタジア文庫の創刊とほぼ同時期に読み始めています。

 『ロードス島戦記』や『フォーチュン・クエスト』を読み始めたのがたぶん10歳か11歳頃なので、ちょうどそれから四半世紀経つか経たないかという計算になります。

 その頃、『ロードス島戦記』は4巻まで、『フォーチュン・クエスト』は3巻まで出ていて、それぞれの5巻と4巻は新刊で購入した記憶がありますね。

 で、小学校6年生の頃、『アルスラーン戦記』と出逢って、そして「大人の小説」というものに目覚めるわけです。あの頃はまさかそれから20年以上も読みつづけることになろうとは想像していなかったけれど。

 しかし、初読の『アルスラーン戦記』の劇的な面白さは、いまでも忘れがたいものがあります。その後、続けて『銀河英雄伝説』全10巻を読んで、ぼくの価値観が決定づけられることになります。

 で、ここから先がこの記事の本題であるのですが、いやー、20年以上経つと、さすがに物語の受け止め方も変わりますね。「好き」という気もちに変わりはないし、物凄い傑作だという考えも変わっていないのだけれど、少年時代に比べて当然、視野は広がり、視点は高くなっている。まったく同じ読み方ができるはずもありません。

 初めてこの小説を読んだ少年時代においては当然、主人公であるラインハルトなりヤン・ウェンリーに感情移入して読んだわけなのですが、いまではむしろ、かれらの周辺の人物が気になります。

 それもジークフリード・キルヒアイスだとかアレックス・キャゼルヌといった英才だけではなく、フレーゲル男爵、ルパート・ケッセルリンク、ヨブ・トリューニヒト、アンドリュー・フォークといった「悪役」的キャラクターの描写が気にかかったりするのです。

 それにしても読んでから何十年経ってもここらへんの名前がすらすら出てくるあたり、やはり『銀英伝』のキャラの立ち方は並大抵ではありません。ちなみにフレーゲルのフルネームが思い出せなかったので、Wikipediaを探ってみたのですが、出て来ませんでした。ひょっとして本編中に姓しか出て来ていないのかな……。

 『銀英伝』という物語は、やはりラインハルトやヤンに近い視点から描かれているところがあるので、これらの人物はどうしても「悪役」として認識されがちであるわけですが、よくよく考えてみるとかなり趣深いキャラクターたちなのですよね。

 かんでさんなどはよく「アンドリュー・フォークは天才なんだ」ということを云います。それを聞くと、ぼくも「なるほどなあ」と思うわけです。

 フォークという人物は、主人公であるところのヤン・ウェンリーに対抗心を燃やして巨大な侵攻計画を立案・実行するも、もうひとりの主人公であるラインハルトの天才を前に失敗、破滅するという「主人公のひきたて役」的キャラクターなのですが、