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日本格闘技界で最もスマートな視点を持ち合わせる巨漢プロモーター、DEEP代表佐伯繁インタビュー。RIZIN登場以降の日本格闘技界はどう変わっているのか? 「RIZIN出場枠、スケジュール問題」「パンクラスとの全面対抗戦」「abemaTVの影響」……出だしからアクセル全開だ!








佐伯 昨日の山口(日昇)さんのやつ(『SEI☆ZA』)、行ったの?
――行ってないです。

佐伯 なんで? 仲が悪いから?

――いや、興味があればチケットを買ってでも見に行きますが、まったくピンとこなくて。佐伯さんは行かれたんですか?

佐伯 ホントは行きたかったんだけど、谷川(貞治)さんも来てるでしょ。

――あの2人はつるんで興行をやってますね。

佐伯 谷川さんは自分に会いたくないだろうから行かなかった。

――えっ、不穏なこと言い出しますね。ぜひ詳しく!(笑)。

佐伯 詳しいことは言えないけどさ、年末に谷川さんと話さなきゃいけないことがあったんだわ。でも、何回電話をしても出てくれないんだよ。

――……佐伯さん、あいかわらずで大変ですね。谷川貞治もですけど(笑)。

佐伯 年末を含めて、ひさしぶりに「ああ、昔の格闘技界ってこんな感じだったよな……」って懐かしいですよね。

――ドタバタしてきたということは日本の格闘技界が元気になってきた証ですかね。イヤな証ですけど(笑)。

佐伯 元気になったというか……去年9月にRIZINがあったでしょ。

――所英男vsクロン・グレイシー、RENAvs山本美憂があった大会。

佐伯 ボクはPRIDE武士道から始まり、DREAM、そしてRIZINまで、ずっと会場に行ってたんですけど、あの9月の大会は初めて現場に行けなかったんですよ。

――へえー!

佐伯 なぜかというとモンゴルで大会があったから。

――あ、モンゴルで現地の団体と対抗戦をやってましたね。

佐伯 ウチの選手を連れてモンゴルに行くことは前々から決まってたから。向こうでRIZINの大会速報を読んでたんだけど、4月の名古屋大会とはだいぶ雰囲気が違うなってことが文字からでも伝わってきたんですよ。

――ああ、なんとなくわかります。たしかにそれまでのRIZINとは空気が違ってましたね。

佐伯 何かが変わったんですよ。名古屋もよかったんだけど、大会自体が長くてね。最後の試合を見ないで帰るお客さんもいたから。

――佐伯さんは何がきっかけで変わったと思います?

佐伯 春頃から女子が来てるなって感じはしましたね。みんな「出たい」「出してくれ!!」ってアピールして「ああ、懐かしい感じだなあ」って。

――これまたいつか見た風景(笑)。

佐伯 選手からすればRIZINという目標ができたことも大きいいですよね。でも、まだ課題が残ってるとは思いますね。これは良い意味での課題。

――良い意味で?

佐伯 まだまだ大会数が多くないから選手が出れない。

――あー、たしかに。昔のPRIDEは、ナンバーシリーズやGP、RPIDE武士道なんかがあって隔月開催だったし、DREAMも隔月ペースだったから出場枠はけっこうありましたね。

佐伯 そうなんですよ。去年のRIZINは実質4ヵ月ペースでしょ。これはどういうことかといえば、前回出場した選手たちは、大きなケガがなければ体調的に全員に出られるんですよ。今度のRIZINは4月。年末の29日と31日に出た選手からすれば、これが2月や3月の開催だったら「ちょっと休もうかな」となるんだけど。

――ちょうどいいペースですけど、年末は2大会分ですから4月大会は全員は出られないですよね。

佐伯 勝った選手は当然出られるもんだと思うし、負けた選手だって借りを返したい。それにいまRIZINは女子に力をいれてるから、女子の試合が確実に増えてくるでしょ。そうすると男子の枠が減る可能性がある。

――ますます狭き門になる。

佐伯 試合数でいえば15試合は無理じゃん。12、13試合が限界。もちろん新しい選手、若い子も出さないといけない。テレビ的に引きがある選手も必要。

――前回活躍した選手、女子、テレビ要員、外国人、新規ファイター……大変だ!

佐伯 いっぱいいっぱい。選手枠がないのがRIZINの課題だと思うんですよ。それだけ使ってみたい選手やチャンスを待ってる選手がたくさんいるって嬉しい悲鳴だとは思うんだけどね。

――かといって大会数を増やすと、カードやクオリティが薄まっちゃいますし……。

佐伯 同じプロモーターの視点から見ると実際、大会の経費などのリスクを考えても現状はまだその段階ではないかもしれませんので一歩づつ前に進むことが大切だと思います。で、ここからが本題!

――押忍!

佐伯 DREAMや戦極があった時代と比べると、ウチもそうだし、パンクラスなんかもマッチメイクが早くなってるんですよ。なぜかというと地下格闘技を含め色んな大会や自主興行が増えすぎちゃって、早めに選手を確保しないとカードが組めなくなっちゃったんです。

――だから必然的にマッチメイクが早くなった。

佐伯 パンクラスは3ヵ月前からですよ。ウチは目標として2ヵ月前に8割、最低でも45日前には全カードを出したい。これは昔だったらありえない早さ。うちを含めいまの日本のインディーは3ヵ月前、2ヵ月前には選手にオファーを出しているので、RIZINから急なオファーがあっても対応しづらいんですよね。

――もう試合が決まってる選手が多いという。

佐伯 そういうこと。で、ここからがもっと大事!

――押忍押忍!!

佐伯 RIZINに出られるか微妙な位置の選手は、飯を食べていくために待機してられない方もいるのです。

――RIZINに確実に出られると保証されていない。だったらDEEPに出ますね。

佐伯 そういうこと。たとえばウチに出ている選手が年末に勝ったけど、4月のRIZINに出られるかわからないがオファーを待っています。でも、これに出れなかったら、選手によってはほかで試合をしたい。ウチの次の大会は3月と5月だけど、スケジュール的には次に出られるのは5月になってしまいます。

――5月だと、もう決めないといけない頃ですね。

佐伯 でも、ウチにはウチの都合もあるからね。たとえば5月にその選手が出てくれるのは嬉しいけど、大塚(隆史)のタイトルマッチが決まってるし、そのほかのカードの都合や予算的にも調整しないといけないのです。

――RIZINがダメだからDEEP……とスンナリ簡単にはいかない。それに5月のDEEPはそろそろ決めないといけない時期だけど、4月のRIZINはまだまだ決めづらいですよね。それこそ4月にずれ込むことも。

佐伯
 当たり前ですがメジャーイベントは軸になるカードを先に決めるのですが、「これはどうなんだろうな?」という微妙なマッチメイクを時間がないから妥協して早めに発表しましょうとはならないでしょ。

――ほかにもっといいカードを検討しますね。

佐伯 より良いカードに練り込むためにギリギリまで時間がかかるんです。たとえば一昨年の所英男vsキザエモンなんかもギリギリになったけど結果的に魅力のあるカードになりましたからね。



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