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幻のキング・ハク戦と『1984年のUWF』■中井祐樹インタビュー
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幻のキング・ハク戦と『1984年のUWF』■中井祐樹インタビュー

2017-03-02 12:52
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    中井祐樹先生の新連載企画!! そのときどきの事件やニュースを中井先生の格闘技観を通して解説していきます! 1回目のテーマはバーリ・トゥードジャパン幻のキング・ハク戦!! その向こう側には前田日明や高田延彦の首を見据えていた……というお話です。



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    ――柳澤健氏のノンフィクション『1984年のUWF』の評判が凄くいいですが、中井先生の視点で物語が進む部分があることに対して異論を唱える読者がけっこういることにちょっと驚いてるんです。

    中井 ボクはただ取材を受けただけなので、ボクが意図するところは何もないんですけど。狂言回しというか。

    ――この本に限ったことじゃないですけど、UWFってどういう触り方をしても拒否反応が出てくるところがあるんですけども。プロレス格闘技界にとってUとはいまだに癒えぬ生傷なのかとは思ったりしました。

    中井 もしかしたら、そうなのかもしれませんね(笑)。

    ――あの当時を振り返ったときに、先生にはそういった生傷感や若気の至りと思えるようなことはありますか?

    中井 うーん、自分の言動に後悔は全然ないんですけど、(バーリ・トゥードジャパンの)無差別に出たことを含めて、そこには若気の至り感はメチャクチャありますね。それは「いまになってみれば……」の話ですけど。でも、当時はやるしかなかったんですよね。

    ――突き動かされる狂気性みたいなものは、あちらこちらに漂ってましたね。

    中井 いまのプロレスは完全にWWE寄りになってしまったし、総合格闘技は総合格闘技でちゃんと確立していますし。ああいう混ざっていた時代がまた来るかといえば、絶対にないとは思うんですよね。UWFのようなプロレスはほとんどないんですよね?

    ――選手個人のスタイルとしては残っていたりするんですが、あのときのような運動体でないですね。

    中井 これは『Number』の『1984年のUWF』座談会でも言ったんですけども、直接的な引き金を引いたのはミスター高橋さんの本だったかもしれませんけども。

    ――プロレスの内幕を明かした『流血の魔術 最強の演技』ですね。あの本が発売された同じ12月に大晦日格闘技イベントが地上波で放送されていたり、『レスリング・ウィズ・シャドウズ』や『ビヨンド・ザ・マット』のドキュメント作品でプロレスのバックステージが公開されたことで時代が一気に動いた時期でもありますね。

    中井 ああ、そうか。アメリカから塗り替えられたところもあるのか。それはムカつくなあ(笑)。

    ――えっ(笑)。

    中井 いや、根幹のことを言えば、ボクはプロレスと格闘技を分ける方向性に向かわせた張本人の一人だと思ってるんですよ。ハッキリしたほうがいいというか、ハッキリさせた方向に向かせたわけですよね。それが良かったのか悪かったのかはわからないですけども……それを含めて若気の至りかもしれませんよね(笑)。

    ――格闘技の現実をシューティング(修斗)を通して見せようとしていたんですね。

    中井 それも終わったことなので後悔はないですけども……感慨深いというか、もうMMAという競技は、ここしばらくはなくなることはないと思うんですよ。たぶん。

    ――浮き沈みがあるかもしれないけれども。

    中井 世界中でやってる人も多いし、ハリウッドの有名な女優さんの言葉にも出てくるくらいだから。

    ――メリル・ストリープのスピーチ騒動ですね(笑)。

    中井 私のさっきのムカつき感というのは、総合格闘技は日本が発祥の一つだと思ってるんですよね。いまのケージスタイルの総合格闘技はアメリカかもしれないですけども、オープニンフィンガースタイルは修斗が始まりだし。そこにはオリジネーターとしての意地があるんです。

    ――だからアメリカの影響で……というところにムカつきがあったと。

    中井 そうなんです(笑)。日本のプロレススタイルも独特じゃないですか。割り切っていなかったところ、グレーゾーンがあるところも日本独特だろうし。それもアメリカによって塗り替えられたかと思うと……ということですよね。

    ――UWFと総合格闘技の関係性や歴史はアメリカ人ではなかなか理解できないかもしれないですね。5分10分の会話だと絶対に伝わらない(笑)。

    中井 そうでしょうね(笑)。特殊な分野というか、張本人だったボクでもそう思いますよ。

    ――ボクが子供の頃は「プロレス八百長論」が話題に出ると、「タイトルマッチは真剣勝負」と自分に言い聞かせてきたんです。それが「異種格闘技戦だけは真剣勝負」に変わり、その次はUWF、そしてパンクラス……と居場所を求めていったところもあって。

    中井 まさにそうです。居場所を探して、やっと見つかったと思ったら、そこから脱皮していく……。だからすべてではないにせよ、日本の場合はプロレスから格闘技に生まれてるんですよね。そのへんはUFCのダナ・ホワイトあたりはどう見てるのかな。彼とは歳は同じなんですけどね(笑)。

    ――歳が同じだけど、国が違うだけで見方は変わってくるんですねぇ。それで中井先生。先日ツイッターでバーリ・トゥードジャパンで、あのキング・ハクと戦うかもしれなかったと呟いてましたね。ビックリしました(笑)。

    中井 『週プロ』にキング・ハクの特集ページがあって「そういえば戦う話があったよなあ……」って思い出したんですよ。

    ――中井祐樹vsキング・ハクは異次元だなあ。

    中井 佐山(聡)先生から「プリンス・トンガ(ハクの旧リングネーム)になるかもしれない」って言われたんですよね。全日本プロレスのデビュー戦や、チャンピオンカーニバルの石川孝戦時間切れ引き分けも見てますからね。

    ――詳しい(笑)。

    中井 子供の頃は「プロレスに世界一詳しい」と思ってましたからね(笑)。調べたらそのときキング・ハクはWCWにいたんです。結局バーリ・トゥードジャパンには来なかったんですけど、同じWCWにいたクレイグ・ピットマンに変わったと思うんですよね。

    ――WCWルートがあったんですね、なぜか(笑)。

    中井 どういうルートがあったかはわからないですけども。「キング・ハクより凄い奴がいる」ということだったと思うんですよ。ピットマンはレスリング世界選手権の決勝で、あのカレリンともやってますから。


    「ゴルドーはボクにとってはプロレスラーだった」
    「当時は真剣に考えたんですよ。猪木さんはともかく、前田さんや高田さんと戦うのはどうすればいいのか? 勝つにはどうしたらいいか?と」
    「日本の総合格闘技史上最高のスターは桜庭和志、修斗の最高傑作は宇野薫」……続きは会員ページへ!
     
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