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RIZIN福岡大会を語る笹原圭一RIZIN広報の12000字インタビュー! RENA&那須川天心爆発の裏側には何が起きていたのか?(聞き手/ジャン斉藤)


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――RIZIN福岡大会翌日の笹原さん、凄く疲れた顔をしてましたね。あんな死人のような顔は、歌舞伎町の雀荘でしか見かけないですよ(笑)。

笹原 ハハハハハハ。ホント疲れました。胸を張って言いますけど、今回はとくに全身全霊で働きましたねぇ。福岡には大会1週間前に現地入りしたんですけど……あ、まさに10月11日、『PRIDE.1』の日ですよ。

――そういえば、PRIDE誕生20周年という節目だったのに、それらしいイベントは用意されてなかったですね。PRIDEの商標を持つUFCから、何か圧力でもあったのかと勘ぐっちゃいました。

笹原 いや、ホントはPRIDEにまつわる企画をいろいろとやろうとしてたんですけど、福岡大会の運営に忙殺されちゃったこともあって間に合わなかったんですよ。それでもUFCと交渉して、『PRIDE.1』の高田vsヒクソンの試合映像が会場を流せることになったんですけどね。

――いつのまにかUFCとパイプが構築されてるのが凄い(笑)。

笹原 あの試合映像は休憩中のアトラクションタイムで流す予定だったんですよ。一部の頭のおかしな人たちが「アトラクションタイムの企画は才賀紀左衛門の会見だろ!」とかツイートしていましたけどね。

――ハハハハハハハハ! それはボクです! 

笹原 結局高田vsヒクソンの試合映像は、進行が押しまくって大会終了後になっちゃいましたけど、かなり人数の方が残って見ていましたね。

――福岡大会はけっこうな試合数を組んでましたもんね。

笹原 試合数が多かったからイベント時間が長くなったと思われがちですけど、違うんです。いや……実際はそうなんですけど。

――どっちなんですか!

笹原 説明するとですね、今回はイベント開始が14時からで、フジテレビ地上波は19時からの3時間枠でしたけど、20時40分ごろから生中継で試合を流す予定だったんですね。

――RENA、那須川天心vs藤田大和の試合を20時40分から地上波生中継しましたね。

笹原 イベント開始から生中継までの6時間40分を埋めるためには、5〜6試合というわけにはいかない。ある程度の試合数を組まないと、生中継まで持たないですよね。

――だから16試合も組まれたと。

笹原 14時という試合開始時刻はチケットに明記されてますから、変えることはできません。UFC日本大会は当日になって30分遅らせたりしてましたけど、普通はありえないんですよね。興行道にもとる行為です(笑)。

――ハハハハハハ。要するに福岡大会の概要が決まったあとに、地上波生中継プランが挙がったということですか?

笹原 そうです。いままでのRIZIN地上波中継は2時間枠でしたけど、「今回は3時間枠になりそうだ」という話は前から聞いてたんです。当初の構想では19時くらいの終了予定だったんですが、生中継をやることになったので試合数を増やして、休憩中も何かイベントを行なってと、どんどん積み上げなきゃいけなくなったんです。で、結果的に過積載になってしまったと(笑)。

――スーパーウルトラロングイベントになったわけですね。

笹原 普通だったら「イベントを長くなるくらいなら、生放送をあきらめよう」……という話になるんですが、RIZINはこれまで視聴率で「よくやった!」という結果を出し切れていないので、ここで勝負を懸けるしかなかったんですね。ボクらがまだ切っていないカードは生中継。そこで数字を持っているRENA選手と天心くんの2人で勝負をしようと。

――討って出るしかなかった。那須川天心とRENAを後ろに回すから、知名度のあるバンナを呼んで地上波の冒頭に使ったんですかね?

笹原 テレビのためだけに試合を組んだわけじゃないですけど、生放送のためにバンナの試合順が早くなりましたね。フジテレビとしては、バンナの試合を早く終わらせて19時からの地上波に乗せたいと。バンナの格からすれば、試合順はもっと後ろでもおかしくないですよね。

――地上派の前半に出すために、バンナの試合順を早くしたわけですね。

笹原 それは女子GPの試合順もそうですね。興行として考えたら外国人同士の試合を先にやって、浅倉選手、山本美憂選手の順なんですよ。でも、地上波の放送を考えたら逆になるんです。先に美憂さん、カンナちゃんをやって、地上波に乗せるために早めに編集してもらう。

――それはつまり、地上波で流す試合にアタリはついていたってことですよね。

笹原 ある程度の想定はしていますよ。そうじゃないと、当日の撮って出しなんて無理ですから。もちろん試合内容によって放送される試合・されない試合、扱われる時間が長くなる・短くなるは出てきますけど。放送される基準は格闘技的な面白さだけでなく、世間的な知名度やインパクトも当然必要です。社長(榊原信行)も一夜明け会見で言っていましたけど、劇的なKOだから数字がいいかといえば、そうでもないですし。

――判定のほうが放送時間も稼げて、興味を繋ぎ止められるから視聴率がよかったりするわけですね。

笹原 なので前半はバンナ、KINGレイナ、美憂さん、カンナちゃんといった知名度があったり、RIZINとして炊いてきたりしている選手の試合を放送して、後半生中継の天心&RENAの黄金コンビでスパートを掛ける。ところが判定決着の試合が多すぎたこともあって、「天心くんの試合、このままだと生に乗らねーぞ!」っていう可能性が出てきてしまったんですよ(苦笑)。

――まさか間に合わない!(笑)。

笹原 今回は休憩を3回挟む予定だったんですよ。小さな休憩を二回取って、アトラクションタイム込みの長めの休憩。その長めの休憩で所(英男)くんと観客のジャンケン大会をやったり、社長挨拶からのヒクソンvs高田延彦映像を流したり、Tシャツバズーガをやったり、それくらい余裕を持って構成していたんです。「試合が長引いたら休憩時間を削ればいいじゃん。ラクショーだね」くらいの感じだったんです(笑)。

――ところが削ればいいという話ではなくなってきたんですね。

笹原 運営本部は「このままじゃ生放送に間に合わないぞっ!」って野戦病院状態ですよ。それって生中継だけではなく、各方面に影響が出てきますから。例えば休憩後の試合に出る選手は、その休憩時間も込みで準備しますから、すぐにはグローブをつけないですし、いわゆる前室という登場ゲートの前に入る部屋に移動しないんです。で、その予定どおりに選手の周りにいるスタッフはシフトしていますから。

――全体の動きやスケジュールが変わってくるんですね。

笹原 そうです。関わるスタッフが多いのでコントロールするのが容易ではないから、そこは久しぶりに痺れました。あ、当然お客さんにアナウンスする会場コメントなんかも変わってきますから、運営本部で私が手書きでアナウンス原稿書いてましたよ(笑)。で、一番の安全策だったのは生中継時間前にすべての試合をできるだけ早く終わらせることなんですよ。

――テレビの中継に合わせて進行するやり方。

笹原 でも、イベントを観に来ているお客さんのことを考えれば、セミ前にそんなに長い休憩は取れないですよね。間延びしちゃってお客さんも冷めちゃいますから。というわけで、かなり大変でしたけど、ある程度の数字も獲れましたし、チャレンジして本当によかったです。

――博打が当たったというわけですね。フジテレビからは「強力な裏番組からすれば大健闘」という評価だったんですよね?

笹原 これで評価を受けなかったら、レインボーブリッジを封鎖しますよ!

――ハハハハハハハ! いままでの2時間枠から3時間枠に伸ばした上で数字も上がったわけですし。

笹原 強力な裏番組がある中であの数字は手前味噌ながら大健闘だと思います。トーナメントという勝負論が中心の興行で、カード編成を見てもらえればわかりますが、いつものメンバーではあったんですね。

――食材はそんなに変わりない。

笹原 でも、今回はその食材を調理せず、生のまま出したら好評だったということですね。いままでは煮たり、焼いたり、こねたり色々工夫してたんですけど(笑)。

――やっぱりスポーツはライブなんですねぇ。

笹原 ですね。結果がわからずに見るスポーツの力は当然一番大きいと思います。お膳立てが整ったところで、天心くんとRENA選手が凄い試合をやってくれたおかげですよね。いくら生中継とはいっても、あたりまえですけど、試合が面白くなかったら数字は伸びないですよ。実際今回はセミ、メインまでフラストレーションがだいぶ溜まっていたところもあったと思うんですね。

――ボクはPPV観戦だったんですが、試合内容はそこまで悪くはないと思ったんですね。でも、格闘技に馴染みの薄い地方大会だったことと、熱気が伝わりにくい大会場だったことの影響もあったんじゃないかなと。

笹原 福岡の方たちって、自ら能動的に「ワー!!」と騒ぐことはない気質って聞いてたんですね。それにMMAの大きなイベントは2002年の『PRIDE.17』以来ですからね。

――その年に生まれた子供は高校生になってますね(笑)。那須川vs藤田大和戦から会場の空気が明らかに変わりましたね。

笹原 いやあ、凄かった。

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――那須川選手って世間に出てきてまだ1年も経ってないんですけど。

笹原 2016年の年末ですから、世の中に名前が出てまだ10ヵ月ですよ。それであそこまでのカリスマ性を持っちゃうわけですからねぇ。これはツイートしましたけど、1週間ぶりに自宅に帰ったら、天心vs藤田大和を何度も見直したカミさんが「那須川天心の入場シーンを完コピした」ってことで、クタクタのまま見せられましたからね。セコンドの動きまで、真似してましたから(笑)。

――旦那不在ということもあって酒浸りだったんじゃないですか?(笑)。

笹原 シラフですよ! そこまで酔わせる力が天心くんにはあるってことですけど、「今回の天心くんは負けるかもしれないなあ……」って思ってたんですよ。MMAに専念してるとは言えない天心くんと違って、藤田くんはMMAの練習だけやっていますし、アマでも数戦こなしている。MMAのレベルで言ったら、天心くんより高いのではと思っていたので。

――キャリアを考えれば合格点の動きでしたけど、藤田選手が勝ちきってもおかしくなかったですね。

笹原 なのでボクは試合が始まったら、藤田選手はすぐにタックルしてテイクダウンをするんじゃないかと思っていたんです。で、そうしたら序盤ですぐにタックルに入ったじゃないですか。「お!これは」と思ったら天心くんの反応も凄かった。まぁ那須川天心の天才ぶりはみなさん知ってのどおりですけど、やっぱりあの試合は、藤田大和の負けん気と才能があったからこそ、あそこまで盛り上がったんだと思います。

――那須川選手もMMAに専念したらどうなっちゃうんだろう? ってワクワクしちゃいますね。

笹原 あの試合の何が面白かったのかって「無敗の天心に土がつくのでは?」っていうドキドキ感ですよね。もはやキックで天心くんをあそこまで追い詰める選手って見当たらないじゃないですか。

――キックでは立ちはだかる壁はないと。

笹原 もちろん世界中にはキックの強い選手はいるんでしょうけど、MMAでしか見せられない那須川天心の魅力って、やっぱりありますよね。

――那須川選手は大晦日のRIZINも当然出るわけですよね。

笹原 去年のMMA2連戦じゃないですけど、那須川天心じゃないとできないことをやってもらいたいですね。「そんな無茶なことやるの?」っていう、これまでの格闘技の枠を飛び越えるようなことを、天心くんなら間違いなくできると思います。UFCにはコナー・マクレガーがいますけど、「日本にも那須川天心がいるぞ!」と世界中にアピールしたいですもん(笑)。

――天心vs大和の盛り上がりを受けたあとのRENAも凄かったですね。

笹原 相手の計量オーバーもあってRENA選手はめっちゃブチ切れていたじゃないですか。怒っているRENAは最高ですね!(笑)。本当に格好いい。

――ボクもRENAに「ダメでしょ!?」って怒られたくなりましたよ!(笑)。あの計量オーバーの取り扱いを巡ってなのか、前日はかなりドタバタしてましたね。

笹原 競技的な話でいえば、1グラムでもオーバーしていれば失格なんですよ。ただ、これはUFCやどこのMMAイベントでも同じなんですけど、体重オーバーしたから即試合中止ってわけにはいかないじゃないですか。それはチケットを売っている、その選手にスポンサーがついている、大会の目玉だからとか……理由はいろいろありますよね。

――無理な減量が健康問題に繋がらないのであれば、条件付きで試合を成立させる方向ですね。

笹原 再計量させるか、キャッチウエイトでやるのか、そもそもオーバーされた側が試合を受けるかどうなのか……試合を成立させるためにいろんな方法を話し合うわけですね。よくあるのは、オーバーされた側が勝てば試合成立、負けたらノーコンテストというものなんですけど。2015年大晦日の元谷(友貴)選手の試合もそうでしたけど。

――よく見聞きする処置ですね。

笹原 それだとRENA選手が勝とうが負けようが準決勝進出……ってそんなトーナメントは聞いたことないし、見ている方も興醒めしますよね。 

――女子スーパーアトム級GPだからキャッチウェイトにするわけにはいきませんし……。

笹原 再計量にしても、いまってギリギリまで落とすことはさせていないんですよ。この時間までと区切って落とせなかったらオーバー。外国人選手って追い詰めて体重を落とさせると「もう試合をやらない……」って諦めちゃうというか、逃げますからね。

――プレッシャーの掛け方が難しいんですね。

笹原 今回競技陣とは「契約体重を守ってこなかったらどうするか?」と事前に話はしていたんですけど……こんな大事なメインの試合でこんなことが起こることまでは想定していなかったんです。で、RIZINは競技とプロモーターはできるだけ距離を置いていて、競技運営については基本的には口出ししないんですよ。

――そこは完全に競技と運営を分けているんですね。

笹原 例えばヘッドレフェリーの福田さんは、競技的に飲めないことがあれば「それならレフェリーはできません」と胸を張って言いますし。そこはナアナアにならずに、決然と競技目線で主張してくれるからこそ、非常に信頼できるんですけど。まぁでも今回のことは、次回以降にどうするのが良いのかという競技的な課題として考えなきゃいけないと思っています。


那須川天心の恐るべき一言、RENAの男気、「頑張ってる奴を出せ」議論について……12000字インタビューはまだまだ続く!