大会後恒例となったRIZIN笹原圭一広報による展望インタビュー! 今回もいろんなことをしゃべってます!(聞き手/IGFマイスター・ジャン斉藤)
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笹原 Dropkickのインタビューは大会直後の疲れ果てているときに受けるので、「顔が死んでいます!」とかいつもゾンビ扱いされてますよね。
――ゾンビというと現実的じゃないので、平日23時以降の井の頭線の帰宅サラリーマンのようなくたびれた感が……今回は違うんですか?
笹原 いや、もちろん疲れましたよ。毎回毎回、こんなイベントをやり続けていたら10年持つ身体が……みたいな感じですけど、今回は精神的には凄く楽だったんです。なぜなら未来の格闘技界を担う新入社員が入ったからなんです!
――あっ、“第2の笹原圭一”が!
笹原 いろいろと仕事を任せることができて、体力的というより、すっごく精神的に余裕があったんですよ。なので5月2日に福岡入りして、大会まで毎晩飲んでましたから。しかもけっこうな量(笑)。で、これまでだと大会直後は「しばらくはもういいや……」って感じだったんですけど、今回は元気なのですぐにでも大会をやりたい!って感じです。
――今度のRIZINは7月末ですから、もうすぐですよね。
笹原 そうなんですよぉ。7月29日が終わったら2週間も経たずに8月12日の愛知県体育館大会があって、さらに9月かぁ……って冷静に考えると死にますね、これ(ゲッソリ)。
――ハハハハハハ。7月は地上波ゴールデンタイム中継も予定されたビックマッチのようですが、8月の愛知大会はどういうコンセプトなんですか?
笹原 いまのRIZINって男子と女子のMMA、そこにキックの試合も入ってきますから、試合枠がどうしても足りないんですね。でも、いつも決まった顔ぶれだと新しいドラマが生まれないじゃないですか。8月大会の放送形態はまだ未定ですけど、RIZINに新しい風を吹かせたいという狙いがあります。やっぱり選手って何がきっかけで開花するかはわからないですよね。方法論が明確にあるわけじゃないし、選手が自分自身で探すしかないんですけど、我々ができることは、まずは試合機会を作ることですから。
――ネクストスターを作る役割が愛知大会にあると。
笹原 チャンスを活かしきれるかどうかは選手の力ですけど。それはRIZINに限らず、どこのイベントでも同じだと思うんです。たとえば那須川選手はMMA2連戦から始まって、最大限にチャンスを活かした結果、RIZINキックトーナメントができることになりましたよね。
――という話を聞くと、RIZINって常連メンバーで固められがちに聞こえますが……今回の福岡大会って12試合中、12名が初出場なんですよ。出場選手の半分が新顔。
笹原 積極的にニューフェイスを起用するこの姿勢! 本当にRIZINはマジメに格闘技に取り組んでますよね。「愛がない」とか言われちゃうと、本当に傷つくんだよなぁ(笑)。
――ただ、複数回出場同士のマッチアップは堀口恭司vsイアン・マッコール、マネル・ケイプvs朝倉海だけなんです。これだけ初出場選手の試合が続くと、試合内容によっては興味が持たれづらい面も……。
笹原 顔なじみの選手だと「見ていられる」攻防も、どっちも知らないと伝わりづらいところもありますよね。とくに今回のヘビー級の2試合は……。
――まさかまさかの判定決着で。
笹原 ヘビー級らしい迫力のある試合内容を期待したんですが、うまくハマりませんでしたね。例えばマネル・ケイプと朝倉選手の試合は判定決着でしたけど、2人とも去年の活躍が見る側に記憶として残っているので、見ていられる部分も大きいと思うんです。なので「内容の濃い判定決着」みたいな評価になるじゃないですか。だからやっぱり何度か使わないとキャラクターは浸透していかないですし、選手も毎回100点満点の試合内容ができるわけではないではないし。でも懲りずにヘビー級は組んでいきますけどね。
――今回衝撃的なKO勝利を飾ったダロン・クルックシャンクは日本人選手に2連敗してますから、従来のマッチメイクのセオリーだと普通は使いづらいですよね。
笹原 ですね。
――今回はダロンを使いたいというより、松本選手の対戦相手ということで起用されたのかもしれませんが、ダロンは勝っても負けてもインパクトのある選手だから、使い続けるといい出目が出るんだなって思ったんです。
笹原 これはどの選手にも言えることですが、負けがこんでいてもその内容や、選手に何か感じるものがあったらガマンして使うことが大事ですよね。そこは目利きが必要になってくるんですけど。
――そこの判断はもの凄く難しいですねぇ。
笹原 ファンの声に耳を傾けることも大切ですし、その選手のキャラクターを把握することも必要になってくるでしょうね。たとえば山本美憂選手はRIZINで華々しくデビューしましたが、負けが続いたこともあって、いまは列の後ろの方に回っている感じじゃないですか。今回の福岡大会にいろんな女子ファイターと一緒にゲストで来てもらっていたんですが、もう美憂選手の存在感は圧倒的なんですよ。
――華があるわけですね。
笹原 そうそう。休憩が終わって運営本部からリングサイドに私がアテンドしたんですけど、もう圧倒的に声をかけられるし、振る舞いも自然だし、美憂選手がそこにいるだけで華やかな雰囲気になる。あの雰囲気に接すると、「惚れてまうやろー!」という感じになるんですよ(笑)。昔から「見られる」ことがわかっているというか、そこは本人が演じているわけではなくナチュラルにできるんでしょうね。美憂選手のオーラを見ていると、なんとかしてRIZINで活かしたい!ってまぁ思いますよね。
笹原 いや、ホントそうですよ! あの試合からRIZINの雰囲気がガラリと変わったというか。美憂選手の一般的知名度と、格闘技・冬の時代の中、地道に頑張り続けていたRENA選手が戦ったからこそ視聴率が取れたんだと思いますし。
――結局のところマニア以外はその競技性を見るのではなく「誰が何をやってるのか」に注目しちゃうところってありますね。
笹原 美憂選手の場合は幼少の頃からメディアに注目されていたから他の選手と比べることは意味がないのかもしれませんが、一人一人の選手を磨いていくことがあらためて大事なんだなと思いますね。
――RIZINに何かしら狙いはあったと思うんですが、RENA選手と浅倉カンナ選手の再戦を巡るやりとりがいろんな意味で話題を呼んでいますね。
笹原 なんかRIZINが叩かれてますよね(笑)。RENA選手はリベンジしたいでしょうし、浅倉選手からすればちゃんと実績を積んできてほしいという思いはあるでしょうけど、最終的にはお互いがどんな判断をするかってことだと思います。
――2人が合意すれば再戦はかまわないんですか?
笹原 全然やりますよ! RENA選手が希望している7月大会でもいいです。
――視聴率の重要さが問われる9月大会や、シーズンピークの大晦日でなくてもいいと。
笹原 もちろんRENA選手が2試合くらい勝ち続けて大晦日で再戦……のほうがドラマ性はあるのかもしれませんが、多少ハレーションが起きても面白いことはやっていきたいです。これは社長もよく口にしますけど「どんどんページはめくっていったほうがいい」と。だってRIZINの女子アトム級は選手が揃ってきてますからね。RENA選手、浅倉選手、浜崎(朱加)選手、黒部(三奈)選手、外国人を含めていろんな選手がいるわけですから、何か一つのカードに拘らずに積極的にページをめくって、新しい歴史を描くべきだと思います。
――RENA選手と浅倉選手しかいないなら引っ張るけど。
笹原 そうです、そうです。で、これは中井りん選手、真珠選手、渡辺華奈選手、杉山しずか選手がいる女子フライ級も同じだと思います。
――笹原さんたちって、PRIDEの昔からその選手が持っているパーソナルな部分をどう扱えばファンに共感してもらえるのか、届くのか……ってことを意識されてますよね。
笹原 そこは一番気にしています。むしろそこしか意識してないとも言えます。
――それがエンターテイメント性が強いプロレスであれば緻密な計算のもとにやるんでしょうけど、総合格闘技団体ですから手を下すわけにはいかず、なんとなくの流れの中で転がっていくというか。
笹原 いくらボクらが「こう振る舞って!」と言葉を尽くしても、表に出てくるのはどこまでいっても選手本人の本性なんですね。どんなにプロデュースしても、どれだけ飾り付けても、出てくるのは本人そのもの。笹原GMというキャラを演じていても、滲み出てくるのは笹原圭一でしかないわけです(笑)。
――RIZINファンは「笹原GM」のことなんて知らないですよ(笑)。
笹原 浅倉カンナは可憐で純情な少女なんですけども、心の奥底では何を思っているかわからない部分もあるじゃないですか。
――そんな裏の話、聞きたくない!(笑)。
笹原 いやいや、浅倉選手が腹黒いと言ってるわけじゃないですよ(笑)。RENA選手が負けず嫌いと言われていますけど、浅倉選手の負けず嫌いも本当に凄い。可憐で純情な一面だけではなく、誰にも負けたくない、絶対にトップになってやる、という滾るような思いが絶対にある。
――そこをどうやって引き出していくのかと。