ずいぶん前の話になりますが、TDCホールで行なわれた『DEEP62』はたいへん面白いイベントでした。ウェブ上では中村大介戦における北岡悟選手の戦術が熱い議論を呼んでいたようですが、私は白井祐矢選手vsダン・ホーンバックルのDEEPミドル級タイトルマッチに目が離せませんでした。チャンピオンの白井選手に『戦極』で活躍した強豪のダン・ホーンバックルが挑む。ファイトマネーや渡航費等がかさむため、名のある外国人ファイターを招聘するのは困難になっている昨今、こうやって正統派の国際戦をマッチメイクする佐伯代表の手腕はさすがのひと言であります。試合も白熱した内容となり、また現在のMMAのスケールの大きさを感じずにはいられませんでした。国内無双の白井選手を判定で下したダン・ホーンバックル選手はたしかに実力者ではありますが、この階級にはGSPという大正義が存在します。『北斗の拳』で言えば、ダン・ホーンバックルはカイオウやハンのような羅将ではありません(名も無き修羅でもないですけど)。ダン・ホーンバックルという選手を通してあらためて世界の広さ、格闘ロマンを感じてしまったわけです。
このような現在のMMA戦線で日本人選手が苦戦している、という印象を抱いてる方は多いと思われます。実際、日本人選手が世界最高峰のイベントUFCと契約することですら厳しくなっている。やはり「世界の壁」はどんどん高いものになっているのでしょうか。現場に携わる選手、関係者たちからは世界との差を感じさせるコメントが出されていますが、見る側からするとあくまでイメージが先行してることもあったりします。そこで実際の戦績から「日本人vs世界」の現状を紹介しようと思い立ちました。
これから書くものは、調査した数字と当時の状況に私見を述べたもので何か正解を導き出すものではありません。しかしながらそこから格闘技界の移り変わりは見えてくると思います。いや、それもイメージかもしれませんが。。。。
とりあえず、ゼロゼロ年代で多くの国際戦を実施していたPRIDEを調べてみました。階級事の結果や対外国人勝率等、細かいデータもおいおい出していきますよ。
あらためて説明するのもなんですが、PRIDEといえば、高田延彦vsヒクソン・グレイシー実現のために産声を挙げたイベントであり、その後、桜庭和志vsグレイシー一族やプロレスラーが登場する格闘大河ドラマを経て、ヒョードルやミルコたちがしのぎを削る世界最強路線へと突き進みます。そして2006年3月のイベントを持って事実上の消滅するまでのあいだ、10年間で64の大会、545の試合が行なわれました。そこで実施された「日本人vs世界」は304試合、対戦戦績は131勝168敗4引き分け1無効試合でした。
結果は負け越し。皆さんはこの結果にどのような感想をもったでしょうか。「ホームで負け越しとは……」と呆れたのか、それとも「世界の強豪が集う中では善戦している」と拍手を送ったのか、「高田延彦のマーク・コールマン戦も勝ちに入ってるのか」と毒づいたのか……。私は「日本で外国人対決が200試合近くもやってるのかよ!」と驚きました(ちなみに日本人対決は30試合程度あります)。
PRIDEには、ヘビー級やミドル級の重量級のマッチメイクが中心となる「ナンバーシリーズ」と、軽・中量級の日本人選手がメインで起用された「PRIDE武士道」の2つのブランドが存在していました。対世界の戦績をブランド別に分けてみると……
【ナンバーシリーズ】 77勝110敗4引1無効試合
【PRIDE武士道】 54勝58敗
あら、どちらも負け越し!! 重い階級では日本人は歯がたたないイメージがあったのでナンバーシリーズの結果はぐう納得なんですが、『武士道』はちょっと意外な結果です。勝ち越しのイメージが強かったです。しかし、ここから時期別に分けることで負け越した理由がおぼろげながら見えてきます。
まずPRIDE.1からPRIDE.12まで①とします。
そして4点ポジション膝蹴り攻撃が認められたPRIDE.13からPRIDE.27までを②。桜庭和志がヴァンダレイ・シウバに敗れ、苦しい闘いを強いられていくきっかけとなったあのイベント以降の戦績です
最後の③はPRIDE.28から最終イベントまで。PRIDEがK-1と決別して、ミルコやヒョードル、ノゲイラらを擁する世界最高峰路線後です。
①創世記 65戦32勝31敗2分け
②4点ポジション後 48戦10勝37敗 1分
③世界最高峰路線 79戦34勝43敗1分1無効試合
②で負けすぎぃ! 4点ポジション導入後は尋常ではない負けっぷりです。そして、世界最高峰路線後にそこそこ持ち直したのは日本人レベルの上がったからでしょうか……?(その理由はのちのち明らかにしていきます)
『PRIDE武士道』は前期・後期に分けます。其の1から其の8までを前期、軽・中量級特化宣言後を後期とします。
前期 46戦16勝30敗分
後期 64戦38勝28敗分
前期、日本人最弱!! しかし、軽・中量級特化宣言後にハイスパートで借金返済。 のちほど詳しく触れますが、ポイントゲッターとなったのは五味、川尻、石田、青木選手らライト級ファイター(石田、青木選手の外国人戦績は無敗)。70キロ以下級となるライト級は『武士道』でいちばん人気があった階級であり、PRIDE消滅後もファンから幻想を抱かれたことが充分わかります。
それにしても問題は②4点ポジション導入後と『武士道』前期の負けっぷり。次回の更新ではPRIDE.13以降「日本人はなぜこれほど負け続けたのか」を探っていきます。水曜日くらいになります。もしかしたら木谷会長の麻雀感想記を先にアップするかもしれません(ジャン斉藤)
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