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どちらかといえば格闘技寄りのDropkickチャンネルのユーザーでもその名前に聞き覚えがあるであろう、ユニオンプロレスの「ミスターパーフェクト」福田洋。あのカート・ヘニングそのままであるニックネームから全身の出で立ちまで貫かれたアメプロ愛あふれる男は、『夏の魔物』発のパフォーマンスユニット・DPGではメインキャラクターを務めるなどプロレス界を超えた活動を展開している。そんないま注目すべき福田洋のプロレス脳に迫ってみた。(聞き手/橋本宗洋)
――福田選手はユニオンプロレス所属ですけど、最近は『夏の魔物』発のパフォーマンスユニット・DPGのメンバーとしても名前が浸透していますね。
福田 DPGは『夏の魔物』主宰者の成田大致に誘われて始まったユニットなんですけど、ボクにとっては良い面しかなくて。ユニオン、DDTではなかなかメインを張ることもないですし。ただ、「DPGは何をやってるユニットなのか?」と聞かれても明確に答えられないんですけどね(笑)。
――アイドルも出るイベントで、リングで踊ったり、歌ったり、闘ったり……総合エンターテインメントというか。そういった活動内容からすると、福田選手はプロレスファン以外に見られてる率もけっこう高いと思うんですよね。
福田 『週刊プロレス』向きではないですよね。そんなに取り上げられませんし(笑)。音楽系サイトのナタリーとかのほうがよく載りますよ。
――ああ、やっぱりそっち方面ですよね。
福田 プロレスを見てる層が限られていることから「プロレス村」という言い方をよくされますけど、気付いたらボクが村の外で有名になっていたというのが理想なんですよね。やっぱりプロレスってネームバリューがすべてですから。
――プロレスはネームバリューが肝心ですか。
福田 そう思ってますね。いまだと真壁(刀義)さんが存在感ありますよね。あの風体でスイーツ好きって凄くかわいいですし。『スッキリ』でお茶の間に定着してて、ツイッターもアゲアゲの感じで素敵じゃないですか。プロレスラーってどうキャラクターを打ち出していくかだと思うんですよね。
――福田選手は「ミスターパーフェクト」を名乗ってますけど、そこはアメリカンプロレスの影響が強いんですよね?
福田 そうなりますね。いまはアメリカンプロレスしか見てませんし。基本的にほかのプロレスを取り入れないようにしてますね。
――見るのもアメプロだけ。簡単には言い切れないと思いますが、日本とアメリカのプロレスはどこが違いますか?
福田 どこが違う……たとえば日本のプロレスは上下関係をもとに成り立ってるところはありますけど。そこはアメリカンプロレスではあまり見られないですよね。
――そういえば、アメプロはキャリア何年とか気にして見ないですね。世代闘争とかもあんまりないですし。
福田 基本的に思想の違いで闘ってますから。有望な若手でも最初から性格悪かったり(笑)。
――日本のプロレスだと「先輩・後輩」の関係が常に張り付いてるところがありますね。福田選手はニックネームにもあるようにカート・ヘニングをお手本にしてるわけですけど、DDTに入ったとき「誰が好きなの?」と聞かれて「カートです!」と答えたらみんなカート・アングルだとばかり思ってたから驚かれたとか。
福田 あのときプロレスで「カート」と言ったらカート・アングルでしたから(笑)。
――最初からお手本はカート・ヘニングだったんですか?
福田 プロレスに入った当時はヘニングが大好きでしたね。そもそもプロレスが好きになったきっかけは四天王プロレスだったんですよ。ただ、子供の頃だったから刺激が強かったのか、見てるうちに疲れてしまって……。
――ああ、四天王プロレスはハードだから見るほうも体力を使いますね(笑)。
福田 そのうちWWFも並行して見るようになったんですけど。プロレスの原点というか、本質を追求しているのはアメリカのプロレスなんじゃないかな……って思うようになったんですよ。
――プロレスの本質と言いますと?
福田 技そのものの攻防よりも試合中に見える感情や表情の動きに惹きつけられていったんですね。ボクは柔道をやってましたけど、基本、柔道は争いごとじゃないですか。プロレスは争いもしますけど、ただ憎しみ合ってるだけでは進まないものではありますよね。
――ああ、なるほど。そこをどうやって表現するかがプロレスの本質ではありますね。
福田 で、プロレスラーになろうとしたのは「プロレスがうまい」ってなんだろうと疑問に思ったからです。
――というと?
福田 世間的に「うまい」と言われてるレスラーってたくさんいると思うんですよ。でも、その「うまい」ってなんだろうって思って。
――「プロレスがうまい」ってよく使われる表現ですけど、僕もよくわかってないです(苦笑)。
福田 僕はやらずに語ることが嫌いで。そこはやってみないとわからないじゃないですか。だから「うまい」を知るためにプロレスラーになったところがあります。いまだにわからないんですけど……。
――でも、福田選手も「うまい」と呼ばれるレスラーじゃないですか。
福田 そうなんですかね。「うまい風」レスラーというか。
――「うまい風」ですか(笑)。
福田 「うまい風」ってなんだか馬鹿にしてるみたいですけど(笑)。ボクの場合、アメリカンプロレスが試合のスタイルとしてやりやすいところはありますね。「ミスターパーフェクト」を名乗ってますけど、卓越した運動神経があるわけじゃないですし、球技もうまくない。体育大卒ですけど体育が苦手で(笑)。そんな自分にアメプロは相性がよかったんです。でも、カート・ヘニングは相当の身体能力があるんですよね。
――ヘニングがあらゆるスポーツで「ミスターパーフェクト」ぶりを見せつける映像シリーズがありますけど。バスケでスリーポイントシュートを簡単に決めたり、ボーリングであざやかにストライクを決めたりするシーンって実際に本人がプレイしてますよね。
福田 あれ、カットなしでやってるって聞いたことあります。ヘニングは本当になんでもうまくて天才で。さっき言っていた「プロレスのうまい」を考えたときにインターネットで検索したら、その際にカート・ヘニングの名前が挙がっていたんですよ。それでブレット・ハート戦なんかを見て。
――プロレス史に残る名勝負ですね。
福田 それを観たときはやはりブレット・ハートよりヘニングに惹きつけられましたね。ヒットマンもカッコいいんですけどね。
――ヘニングはアルティメット・ウォリアー戦もメチャクチャ面白いんですよね。
福田 アルティメット・ウォリアーも大好きなんですけど。でも、いまいちばん見るのはヘニングじゃなくてハルク・ホーガンなんですよ。
――ああ、ホーガンってどの年代も凄く興味深いですよね。
福田 面白いんですよねぇ。この業界に入ってからホーガンの凄さを再確認できたというか。
――プロレスラーになってホーガンの魅力があらためてわかるっていい話ですねぇ!(笑)。
福田 これはリック・フレアーとかもそうですけど、いま見るとホーガンは何かキメて試合をしてるとしか思えないようなテンションなんですよね。あの域に近づける努力をしないといけないな、と。
――「うまさ」もあるけど「テンション」も大事だぞ、と。
福田 テンションはかなり重要ですね。昔のレスラーは一般の人間とは違うところをアピールするために肉体を大きくしたりするわけじゃないですか。それってテンションも同じなんですよ。一流のレスラーほど、リングに上がった瞬間キ●ガイになるというか。
――あらゆる面で過剰性が求められるというか。
福田 ボクが理想とするレスラー像のひとつに『バットマン』とかのアメコミに出てくるヴィラン(悪役)があって。ジョーカーもペンギンも気が狂ってて、言ってみれば精神病患者じゃないですか。
――実際、バットマンの悪役は捕まると精神病院に入れられますからね。つまりプロレスの達人はジョーカーでないといけない(笑)。
福田 みんながキ●ガイであるべきとは思わないですけど(笑)。でもボクが目指すのはあのキ●ガイなんですよね。
――福田選手の行き着く先は「うまい!」というより「頭おかしい……」と言われたいんですね。
福田 「うまい」という評価もありがたいですけど、そこはレスラーとして落ち着いて見えるところはありますよね。スター性というのは狂気から生み出されるものだと思います。
――しかし、そうやってアメプロを振り返ると、日本のプロレスは格闘技志向があったことでナメられてるところがありましたが、たとえばホンキートンクマンの狂気って凄いですよね。まさにゴッサム・シティの住人感があって。
福田 ホンキートンクマンも狂ってますねぇ(笑)。そこからわかるのは、一流レスラーはプロレスそのものが好きだったりするんですよね。ダメなレスラーはプロレスもまぁまぁ好きだけど、自分もそれ以上に大好きというか。こういったらなんですけど、日本は同じようなタイプのレスラーが多いと思うんですよね。それは自分がなりたいようなレスラーしか存在しないというか。でも、アメプロは世間から求められた役割を正面からこなすから狂ったレスラーが生まれやすいのかもしれませんよね。
――それまでの自分と違うものに変身することで個性が引き裂かれて狂気性が増幅する……まさにジョーカーやペンギンですよね。
福田 変身願望が強いってことですよね。そういえば、ホーガンの試合で面白いといえる試合はかなり高確率でジミー・ハートが出てくるんですよ。
――悪役マネージャーのジミー・ハート。あの存在もいい感じですよね(笑)。
福田 ジミー・ハートが試合に介入するとかならず良い試合になります。去年、見た試合の中でベストバウトはホーガンvsホンキートンクマンwithジミー・ハートですから(笑)。
――2014年のベストバウトがそれ!(笑)。
福田 プロレスってマネージャーがいると試合に厚みが出ますよね。それこそカート・ヘニングなんかもコーチ(ジョン・トロス)やランディ・サベージの弟がついてたことでより面白くなったわけですから。
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