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先々月に掲載されたヤノタクこと矢野卓見の骨法ロングインタビュー。 90年代の格闘技界を席巻した堀辺正史氏率いる骨法の実態を赤裸々に語り尽くし、離脱時の修羅場、密かに実現していた堀辺氏との師弟対決エピソードは大反響を呼んだ。今回は“その後のヤノタク”に触れるために再び矢野氏のもとに訪れたが……まさかの展開に! 


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――今日は前回聞けなかった骨法退会後のお話をうかがいます。
ヤノタク いやいや、骨法の話はまだ終わってないですよ!
――えっ、あのインタビューで“骨法完成”してなかったんですか!
ヤノタク これ読みました?(BUBKAを差し出して)。先月号なんですけど……堀辺師範がインタビューを受けてるんですよ。
――あ、そうみたいですね。ここに来て骨法ブーム再び(笑)。
ヤノタク この記事のことは知らなかったんですけど、こないだラジオを聞いていたら吉田豪がいろいろとしゃべってて。まあ明らかに小馬鹿にしてる感じなんですけど。
――いや、吉田さんはそんなつもりはないかもしれません(笑)。
ヤノタク いやいやいやいや、もう完全に小馬鹿にしてるわけですよ。とりあえず持ち上げておけばいろいろとしゃべってくれるから。しかし、先生の写真を見ると死にかけてますよね。いま73歳だから俺の母親のひとつ下ですよ(笑)。
――インタビューにはどんな感想を持たれましたか?
ヤノタク この言い分だと(ドン・中矢・)ニールセンがやる気があるなら闘ってたとか言ってますけど、どう考えたってニールセンがやらないのを見越して挑発してますよね。ヘタしたらニールセンは「このおっさん誰?」って感じなのに。道場で弟子たちも「あのときの先生はカッコ良かった~」とか言ってたりしてたんですけど(笑)。弟子の山田(恵一)がやられたところで師匠が敵を討つといえばカッコはつくわけじゃないですか。やる気なんてないのに。
――単なるパフォーマンスだ、と。
ヤノタク あと、いつも思うんですけど、この人は格闘技側の立場からプロレスを語るじゃないですか。「私はプロレスを下に見ていない。プロレスは格闘技にも参考になる!」とかなんとか。それはそれでべつにいいんですけど、肝心の格闘技の話はどうなってるんだっていう。そこは誰も突っ込まないですよね。
――そこはヤノタクさん側の視点から補填していくしかないですね。
ヤノタク まあ、そこまで骨法に興味がある人間がいるのかって話ですけど(笑)。
――ところがこないだ無料公開した前半部分は5万人が読んでるんですよ!(笑)。
ヤノタク へー! やっぱり真実は人間の心を打つんですねぇ……(しみじみ)。でも、インタビューのコメント欄を見たら「ヤノタクが道場に消火器をまいた」とか書いてあったじゃないですか。それって前から2ちゃんねるとかもで書かれてて。たぶん道場内でもそういう話になってるんでしょうけど、俺じゃないですよ!(苦笑)。
――そんな疑惑があるんですか!(笑)。
ヤノタク 消火器なんてブチまけてないですよ。俺がやったのは道場のシャッターに先生の似顔絵を小さく書いたことくらいですよ!
――消火器はぶちめけてない。でも似顔絵は書いた(笑)。
ヤノタク 1年後に確認したらまだ残ってましたけどね(笑)。
――では、消火器事件の犯人は誰なんですかね?
ヤノタク 普通に考えたら酔っぱらいじゃないですかね。いくらなんでもそんな嫌がらせをするわけないですよ(笑)。
――でも、ヤノタクさんのせいになってる。
ヤノタク 向こうは俺の犯行にしたいんじゃないですかね。ハハハハハハ! だから骨法的にはわかりやすい敵ではあったんじゃないですかね。
――前回聞けなかった話でいえば、当時『格闘技通信』は骨法を大々的に取り上げていましたけど。内部からはどう見えていたんですか。
ヤノタク ひとつ言えるのは『格通』って最初はぜんぜん骨法を載せなかったんですよ。当時の編集長だった谷川(貞治)さんは骨法を嫌ってたと思うですよね。谷川さんは極真方面との繋がりがあったし、大山(倍達)総裁は堀部師範を好きではなかったっぽいですし。それは実績もないのに大言壮語していたわけですから。逆に『ゴング格闘技』のほうがよく取り上げてたんですよ。編集長の近藤隆夫さんの繋がりで。
――あとターザン山本編集長時代の『週刊プロレス』も骨法には好意的でしたね。
ヤノタク ターザンと先生の関係でベースボールマガジン的には取り上げられてましたけど、『格通』は競技として骨法をまったく相手にしてなくて。でも、たぶんターザンからの圧力もあって、大会もやったことで取り上げるようになったんでしょうね。
――『格通』が骨法の他流試合惨敗を受けての「骨法にページを割きすぎました」事件は有名ですけど、『ゴン格』と疎遠になったのは何かあったんですか?
ヤノタク それは骨法第一回大会をプロレスみたいな書かれ方をされて、それで怒って弟子たちに抗議文を書かせたんですよ。そこからだと思うんですよね。でも、いまにして思えば『ゴン格』の見方は正しくて。当時は知らなかったんですけど、俺が骨法をやめたあとに試合立会人をやっていた人間に話を聞いたら「試合で技をかけられたら抵抗するな。そのままかけられろ」という話になっていた、と。
――えっ……!?
ヤノタク これが八百長かというと微妙なんですけどね。「八百長をやれ!」と指示されていないけど、技を見せろということになっている(笑)。
――た、たしかに微妙ですねぇ。
ヤノタク 勝敗もあらかじめ決まってない。八百長をやれと言われてるわけではない。技をかけられたら抵抗するなということになっている。そういう試合がどうなるかというと、道場内の力関係が反映されるわけですよね。
――そうなると純粋な強さというより人間関係がついてまわりますよねぇ。
ヤノタク そこの話をもっと掘り下げると、最初のうちは練習もガチンコだったわけですよ。そうすると、立ち関節なんか滅多にかからない。そうしたら先生がイライラし始めて「キミたちは私の言うことを聞かないから、技がかからないんだ!」ってキレたらしくて。それで選手たちが先生にビビって技にうまくかかるようになったらしいんですよね。
――えええええええええええ(笑)。
ヤノタク そうしたら今度は逆に極まりすぎるようになって「こんなに技が極まるんだったら一本勝負じゃなくて、本数制にするしかない!」ということになったそうなんですよ。
――骨法の本数勝負はそういう経緯があったんですか(笑)。
ヤノタク ……そこで面白いのは、これって先生は弟子たちがやってる試合をガチンコだと思ってたということですよね。
――あっ……!! 
ヤノタク 弟子が先生に気を遣って技をかかるようにしていたら、先生は「俺の指導どおりのかたちになってきた!」と喜んだ。予想以上に技がかかるようになってきたから一本勝負だとお客さんは満足しないということで10分・本数勝負にした。そう言われて骨法の試合を見返すと凄く納得できるんですよね。
――たしかにニコ動に転がってる「骨法の祭典」動画を見ると、流れるような動きすぎて競技性を疑っちゃうんですよね。でも、いまの話が事実だと凄く腑に落ちます。
ヤノタク そういう裏のルールというか「空気読めよルール」が骨法にあったというか。そこは日本的ではありますよね。みんなで空気を読んだ結果がああいう試合になりましたっていうか。俺は当時、選手じゃなかったですからそこは知らなかったし、特訓に参加してるときもわからなくて。俺はガチンコだと思っていてそのつもりでやってたんです。だからいまになって「そういえば……」と思うのは、合宿で先輩のAさんからチョーク一本を獲ったときに騒動になったんですよ……(Dropkickブロマガ会員ページへ続く)。