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以前、AKB48の振付とダンス指導を手がけられた夏まゆみさんが、新人のオーディションに際して、「選ぶなら、むしろダンスを習っていない子の方が望ましい。下手にダンスの経験があると、変なクセがついていて、それを取り除くのに苦労するから」と言っていた。
後に、ぼくはそれを自ら体験することになる。
お笑い養成所で講師をしたとき、下手にお笑いをしていた子は、それまでについて変なクセが邪魔をして、教えたことをなかなか吸収してくれない。しかし、お笑いを全くしていなかった子は、色んなものを抵抗なく吸収するので、成長が早いのである。そのため、下手にお笑いを経験していた子よりも、すぐ実力で追い越してしまうのだ。
以来、何かを教えるときは、その人が経験者かどうかを重視するようになった。もちろん「経験していない方に見込みがある」と考えるようになったのである。
ぼくは、クリエイター志望でなまじっかな経験がある子は、変なクセがついていることに加え、「自分の好みを持っていること」が、大きなネックになっていると感じている。
お笑いでいえば、「自分の好きな笑い」を持っている子は厄介だ。それをやりたがるうえに、こだわりも人一倍強い。
これだけ聞くといいようにも思えるのだが、しかしそうしたこだわりは、ほとんどの場合「お客さんが望まないもの」に対して抱いているのだ。その人の好きな笑いは、大多数の人が嫌いな笑いだったりするのである。
なぜそうなるかというと、彼らはほとんどの場合「自分の個性を発揮すること」を目的にしているからだ。
クリエイター志望の若者には、「自らの個性を発揮するため」にやっている人が多い。小説を書くのもマンガを描くのもお笑いをするのも音楽をするのも、みんな「他の人とは違う自分」を見せつけようとしてやっているのだ。
なぜそういう目的でやっているかというと、「自分の個性のなさ」に悩んでいるからである。大勢の中に埋没することに焦燥感を覚えているからだ。そうして、無理やりにでも個性を発揮しようとしているのである。
なぜそういう焦燥感を覚えたかといえば、それは子供の頃、大人たちから「きみたちは一人ひとりが特別な人間なんだよ」と洗脳され、すっかりその気になってしまったからだ。多くの若者が、「自分は特別な人間なんだ」と信じ込まされているのである。
しかし、そう信じ込まされたのにもかかわらず、現実では大勢の中に埋没してしまって、個性を発揮できずにいる。そのため、アイデンティティを確立できず、いつも不安な気持ちの中で過ごす羽目になっている。
その不安を解消するため、クリエイターを志す人が多いのである。彼らは、そもそも制作することが目的ではなく、自らの個性を発揮し、そこで「自分は特別な存在なのだ」ということを周囲に、そして誰よりも自分自身に知らしめるためにやっているのだ。
だから、彼らは他の人と違うことを好んでしようとする。多くの人が「面白い」と思うものがあれば、その逆をしようとするのだ。
そのため、ほとんどの場合で「つまらない」ものを作ろうとする。なぜなら、多くの人が「面白い」と思うものは本当に面白いものだから、それと違うことをしようとすれば、自然とつまらないものになってしまうからである。
しかし、彼らはそれでもかまわないと思っている。何しろ、自分が特別な存在であることを示すのが目的だから、面白いかどうかは二の次なのだ。
そうして、いつまで経っても上達しない。今、そういうクリエイター志望の若者が本当に多い。
ただ、そういう状況でもクリエイターは求められている。すぐれたコンテンツはいつでも供給不足なので、面白いものを作れる人が現れれば、多くの人が歓迎するところだからだ。
だから、「どうやったら面白いものを作れるか」というメソッドを教え、クリエイターを育成することには大きな意義があると思っている。また、そのためには教わる側が「面白いものを作る」ということにちゃんとフォーカスしていることが重要だと考えている。「面白いものを作って他者を喜ばす」というその目的が、ブレてはならないのだ。
そして、その目的をブレさせないためには、むしろクリエイションに興味のない方が向いているのである。例えば、仕事だから仕方なくやっているとか、なりゆきでやっているといった方が上手くいくのだ。
先日、鈴木敏夫さんと秋元康さんの対談がニコ生で配信されていた。
鈴木敏夫×秋元康 特別対談~「風立ちぬ」「かぐや姫の物語」ブルーレイ&DVD発売記念~ - ニコニコ生放送
そこで印象的だったのは、お二方とも「コンテンツ制作は成り行きだ」ということを強調していたことだ。クリエイションは、初めは好きでも何でもなかったし、そのつもりもなかったが、成り行きで仕方なく始め、それが今に続いていると。
ジブリ鈴木敏夫プロデューサーと秋元康の共通点は「行き当たりばったり」? | シネマカフェ cinemacafe.net
ぼくは、これこそがクリエイションの極意ではないかと考えている。だから、自分でもなるべく成り行きに任せて作るようにしているし、また育成するクリエイターも、なるべくクリエイションに興味のない人を登用するようにしている。
例えば、これはぼくの会社の新人ディレクターが作った動画なのだが、たった半年で、驚くほどクオリティの高いものが仕上げられるようになった。これを見て、ぼくはあらためて「経験がない」ことの重要性を思い知った。
【Sony α7s】Kessler CineSlider&Parallax SETUP/TEST【カメラスライダー】 - YouTube
そして今、新たに「ラノベ作家」を育成する――という企画を立ち上げようと考えた。条件は、25歳以下の女性で、希望としては、「小説に興味がない人」「ほとんど文を書いたことがない人」がいい。
ただし、たとえ小説や文を書くことが好きでも、個性を発揮することではなくお客さんを喜ばせることに目的をフォーカスできる人なら大歓迎だ。
詳細は、こちらにも記してある。
人気ラノベ作家は人気声優のように育成できる! - Togetterまとめ
我こそはという方は、ぜひ以下のアドレスにご応募頂きたい。
その際、写真と簡単な経歴を添えていただけるとありがたい。
huckletv@gmail.com
「ラノベアイドルプロジェクト係」
後に、ぼくはそれを自ら体験することになる。
お笑い養成所で講師をしたとき、下手にお笑いをしていた子は、それまでについて変なクセが邪魔をして、教えたことをなかなか吸収してくれない。しかし、お笑いを全くしていなかった子は、色んなものを抵抗なく吸収するので、成長が早いのである。そのため、下手にお笑いを経験していた子よりも、すぐ実力で追い越してしまうのだ。
以来、何かを教えるときは、その人が経験者かどうかを重視するようになった。もちろん「経験していない方に見込みがある」と考えるようになったのである。
ぼくは、クリエイター志望でなまじっかな経験がある子は、変なクセがついていることに加え、「自分の好みを持っていること」が、大きなネックになっていると感じている。
お笑いでいえば、「自分の好きな笑い」を持っている子は厄介だ。それをやりたがるうえに、こだわりも人一倍強い。
これだけ聞くといいようにも思えるのだが、しかしそうしたこだわりは、ほとんどの場合「お客さんが望まないもの」に対して抱いているのだ。その人の好きな笑いは、大多数の人が嫌いな笑いだったりするのである。
なぜそうなるかというと、彼らはほとんどの場合「自分の個性を発揮すること」を目的にしているからだ。
クリエイター志望の若者には、「自らの個性を発揮するため」にやっている人が多い。小説を書くのもマンガを描くのもお笑いをするのも音楽をするのも、みんな「他の人とは違う自分」を見せつけようとしてやっているのだ。
なぜそういう目的でやっているかというと、「自分の個性のなさ」に悩んでいるからである。大勢の中に埋没することに焦燥感を覚えているからだ。そうして、無理やりにでも個性を発揮しようとしているのである。
なぜそういう焦燥感を覚えたかといえば、それは子供の頃、大人たちから「きみたちは一人ひとりが特別な人間なんだよ」と洗脳され、すっかりその気になってしまったからだ。多くの若者が、「自分は特別な人間なんだ」と信じ込まされているのである。
しかし、そう信じ込まされたのにもかかわらず、現実では大勢の中に埋没してしまって、個性を発揮できずにいる。そのため、アイデンティティを確立できず、いつも不安な気持ちの中で過ごす羽目になっている。
その不安を解消するため、クリエイターを志す人が多いのである。彼らは、そもそも制作することが目的ではなく、自らの個性を発揮し、そこで「自分は特別な存在なのだ」ということを周囲に、そして誰よりも自分自身に知らしめるためにやっているのだ。
だから、彼らは他の人と違うことを好んでしようとする。多くの人が「面白い」と思うものがあれば、その逆をしようとするのだ。
そのため、ほとんどの場合で「つまらない」ものを作ろうとする。なぜなら、多くの人が「面白い」と思うものは本当に面白いものだから、それと違うことをしようとすれば、自然とつまらないものになってしまうからである。
しかし、彼らはそれでもかまわないと思っている。何しろ、自分が特別な存在であることを示すのが目的だから、面白いかどうかは二の次なのだ。
そうして、いつまで経っても上達しない。今、そういうクリエイター志望の若者が本当に多い。
ただ、そういう状況でもクリエイターは求められている。すぐれたコンテンツはいつでも供給不足なので、面白いものを作れる人が現れれば、多くの人が歓迎するところだからだ。
だから、「どうやったら面白いものを作れるか」というメソッドを教え、クリエイターを育成することには大きな意義があると思っている。また、そのためには教わる側が「面白いものを作る」ということにちゃんとフォーカスしていることが重要だと考えている。「面白いものを作って他者を喜ばす」というその目的が、ブレてはならないのだ。
そして、その目的をブレさせないためには、むしろクリエイションに興味のない方が向いているのである。例えば、仕事だから仕方なくやっているとか、なりゆきでやっているといった方が上手くいくのだ。
先日、鈴木敏夫さんと秋元康さんの対談がニコ生で配信されていた。
鈴木敏夫×秋元康 特別対談~「風立ちぬ」「かぐや姫の物語」ブルーレイ&DVD発売記念~ - ニコニコ生放送
そこで印象的だったのは、お二方とも「コンテンツ制作は成り行きだ」ということを強調していたことだ。クリエイションは、初めは好きでも何でもなかったし、そのつもりもなかったが、成り行きで仕方なく始め、それが今に続いていると。
ジブリ鈴木敏夫プロデューサーと秋元康の共通点は「行き当たりばったり」? | シネマカフェ cinemacafe.net
ぼくは、これこそがクリエイションの極意ではないかと考えている。だから、自分でもなるべく成り行きに任せて作るようにしているし、また育成するクリエイターも、なるべくクリエイションに興味のない人を登用するようにしている。
例えば、これはぼくの会社の新人ディレクターが作った動画なのだが、たった半年で、驚くほどクオリティの高いものが仕上げられるようになった。これを見て、ぼくはあらためて「経験がない」ことの重要性を思い知った。
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そして今、新たに「ラノベ作家」を育成する――という企画を立ち上げようと考えた。条件は、25歳以下の女性で、希望としては、「小説に興味がない人」「ほとんど文を書いたことがない人」がいい。
ただし、たとえ小説や文を書くことが好きでも、個性を発揮することではなくお客さんを喜ばせることに目的をフォーカスできる人なら大歓迎だ。
詳細は、こちらにも記してある。
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コメント
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こだわりの無い人は最初の成長は早い反面、
ある程度で満足してしまい、大成功はしないように思いますが、
そのあたりはどうなんでしょう?
こう考えるのは、いろいろなインタビューなどを見る限り、
例外はあるにせよ、一流のクリエイターの多くは物語を読む・作るのが好きだったり、
絵を描くのが好きだったり、という点からスタートしているように感じるのですが。
実際に心当たりがあって感心出来る反面、逆に言えば「それだけでは足りない」と思うw あくまで「他者のセンスに依存」しているという事は、良い素質を備える為には、その参考となるモノが高Lvである事が前提である。その過程で自身の中に個性(向上心)を見つけられたなら良いが、そうでなかった場合、一度挫折したら誰かに引っ張って貰わない限り自分で立ち直る事は出来ないかと。クリエイトは一人で全てを行うのは難しいので協同で作るのが理想だが、かと言って「ただ目的のモノを作る」だけがクリエイトではないと思う。一人一人が個性を持っていれば、創造の中で生まれる「発見」を見つけやるくなるし、クリエイターなら「創作」を域を出て「創造」に達したいという思いがあっても良いと思う。そもそも造る事を本職にしている人だけが「クリエイター」なのではないのだから、「ニーズに沿ったモノを作れる人がクリエイター向き」という仕事目線での考え方だけでの決めつけも一概には言えないかと。造ったモノが、今までにない新たなニーズを生み出した事例だって幾つも存在しているのだしw