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小説『神神化身』第九話 「名探偵・皋所縁と怪盗ウェスペルの『夢の対決』再び!?」
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小説『神神化身』第九話 「名探偵・皋所縁と怪盗ウェスペルの『夢の対決』再び!?」

2020-07-21 17:26
    小説『神神化身』第九話
    「名探偵・皋所縁(さつきゆかり)と怪盗ウェスペルの『夢の対決』再び!?」

    (ざわつく!ネットニュース)



     先日、都内エクステンドホテルで催された『世界の至宝、再び展』にて、怪盗ウェスペルが「『世界の至宝、再び展』運営殿 お世話になっております、皆様の怪盗ウェスペルでございます。さて、今宵は西村剣人(にしむらけんと)氏のアーガイルピンクダイヤモンドコレクションをいただきます。どうぞ歓待ください。怱々不一」(原文ママ)という予告状を送付した。主催者は西村氏にティアラの展示を取り下げるよう要請したが、西村氏はそれに応じず、時間を限定した展示を決行、名探偵・皋所縁(さつきゆかり)氏を招聘(しょうへい)し、警備員を普段の倍にして怪盗ウェスペルを迎え撃つ姿勢を見せた。


     しかし、怪盗ウェスペルが警備員に紛れてやってくる可能性を指摘した皋所縁氏は西村氏と真っ向から対立。展示開始前に一悶着を起こして半ば現場を放逐(ほうちく)されていたという。その所為もあってか、展示開始からわずか八分後にはコレクションの目玉であるアーガイルピンクダイヤモンド・ティアラが盗まれてしまう。

     しかし、早々に皋所縁氏が西村氏の娘に変装していた怪盗ウェスペルを看破した為、怪盗ウェスペルはその時点で逃亡。全十二点のコレクションの中で怪盗ウェスペルが奪ったものはティアラ、ネックレス、ウエディングリングの三点のみであり、残りは手つかずのまま残されていた。

     皋所縁氏は怪盗ウェスペルを追い詰めるが、怪盗はそのまま屋根伝いに逃亡。皋所縁氏の懸命な追跡と、ヘリコプターから撮影していた各局テレビカメラの目を掻い潜って姿を消した。二度目となったこの対決は引き分けと言っていいだろう。

    以下は、皋所縁氏と怪盗ウェスペルが屋根の上で交わした会話の書き起こしである。


    皋所縁氏(以下、皋) 「ハイヒールで屋根の上に上ってんじゃねーよ危ないだろうが!」

    怪盗ウェスペル(以下、怪盗) 「こんなもの、縛りプレイのうちにも入りませんよ。心配してくれるんですか、所縁くん。嬉しいですね。というか、スニーカーなのに私より足下が覚束ないようですが、大丈夫ですか?」

    皋  「うるせーな! そもそも俺はこういう探偵じゃないんだよ! 屋根に上るな部屋にいろ! この馬鹿!」

    怪盗 「でも、所縁くんはこういう事件の方が好きでしょう? 誰も傷つかず、誰も死なず、皆さんがエンターテインメントとして消費してくれる方が。皋所縁でいても辛いものを見ずに済む」

    皋   「盗まれた西村剣人氏が迷惑だろうが!」

    怪盗 「十二個の内の三つなんて誤差ですよ。六分の一です」

    皋  「過小申告すんな、四分の一だろ! というか、なんでわざわざ西村明美(あけみ)に化けたんだよ! 常識的にっつーかセオリー的に警備員に化けるところだろ!」

    怪盗 「常識もセオリーも局地的なスラングに過ぎません。そんなものにこだわっている君には興奮しませんね。それでも見破ってくれた所縁くんは流石です」

    皋   「おい、話してる最中に後ずさるな。逃げようとしてるだろ」

    怪盗 「流石にここで捕まりたくはありません。もっともっと二人で楽しもうじゃありませんか。夢は大きく映画化です。あー、私の役誰にやってもらおっかなー、私は変装が得意だから、初回はレオナルド・ディカプリオで二回目はサンドラ・ブロックになっちゃったりなんかしちゃったりしてー! 『さらば怪盗ウェスペル』の後に『帰ってきた怪盗ウェスペル』とか『またしても怪盗ウェスペル』が公開しちゃったりなんかして」

    皋  「俺の要素が少なすぎるだろ」

    怪盗 「そういうわけで所縁くん。また会いましょう」

     以上、二分に渡る応酬の末に怪盗ウェスペルは去って行った。

     その後、展示場内に戻った皋所縁氏は、会場内で起こった殺人事件をその場で解決。怪盗ウェスペルの犯行を半ばで食い止め、加えて殺人事件まで解決してみせた皋所縁氏の活躍を鑑みるに、これは最早皋所縁氏の勝ちと言ってもいいかもしれない。一方、記者たちにコメントを求められた皋所縁氏は一言も発さず会場を出てしまった。

     街ではこの怪盗と探偵という組み合わせにフィクション的な面白さを見出す声も多い。

     皋所縁氏と怪盗ウェスペルの宿命の対決は今後も続くのか? 注目が集まっている。





    本編を画像で読みたい方はこちら↓
    (テキストと同様の内容を画像化したものです)

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    著:斜線堂有紀

    この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


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    ©神神化身/ⅡⅤ

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