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渡部真【勝手気ままに】Vol.30「大川小事故検証委の最終報告を前に」
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渡部真【勝手気ままに】Vol.30「大川小事故検証委の最終報告を前に」

2013-12-24 06:43
    ※今号は無料公開版です。

    石のスープ
    特別号[2013年12月24日号/通巻No.102]

    今号の執筆担当:渡部真

     

     12月22日、宮城県石巻市の合同庁舎にて、第8回大川小学校事故検証委員会が開催された。

      東日本大震災で起こった津波によって、児童74人(うち4人は未だ行方不明)と教職員10人が犠牲となった大川小学校。震災後の学校や市教委、市の対応が 遺族に対して不誠実だった事で、事故の検証は混乱。震災から約2年後の今年2月、ようやく「第三者事故検証委員会」が立ち上がり、今年一杯に最終報告をま とめる事を目標に、検証を続けてきた。
     しかし、検証に時間がかかり、当初予定していた年内最終報告は断念。あと数回の会合を重ねる事となった。

     今回の会合は、午前10時半から始まり、夕方までの長丁場。主な議題は以下の通りだった。

     ○当日の避難行動の分析について
     ○事後対応について
     ○遺族との検証委員との意見交換
     
     
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    ■期待できない遺族達のジレンマ

     当日の避難行動や、事後対応について、今回も特に目新しい情報はなかった。

     これまで、頑なに生存教師や生存児童の証言を記録してこなかった検証委員会。今年11月ごろになってから、ようやく生存者達の聞き取り調査を行った。

     今回の報告では、当時校舎にいた教師の中で唯一生き残った教員、4人の生存児童、当日に学校に不在だった校長、生存教師の当日の様子を目撃していた地元事業者などの証言が、それぞれ報告された。
     しかし、これらは、すでに昨年末までに、市教委の調査や遺族達の調査で明らかになっていたものばかり。すでに出ていた情報を精査することも検証ではあるが、それにしても、あまりにも遅い印象だ。

     今年2月、第1回目の検証委員会が終わった直後に、遺族の方々から話を聞いた際、
    「月に1回程度集まって1年経っても、地元の人間であり、当事者である自分達が2年間で集めた情報以上の事実が出てくるとは思えない」
    と、複数の遺族が、検証委員会の行く末に不安を口にしていた。残念ながら、現状の検証委員会を見ていると、遺族達の危惧は的中したと言える。

     震災当時に大川小学校の6年生だった次女のみずほちゃんを亡くした佐藤敏郎さんは、今回の検証委員会の後、
    「(生存者たちの証言が報告されたが)ようやく、ここまで来たという気持ち。しかし、まだまだ(自分達が事前に認識していた情報に)追いついていない。もっと、我々の持っている情報も活用していってほしい」
    と話した。
     佐藤さんは、検証委が立ち上がる際、中立性を担保するために、「ゼロベースからスタートし、1から情報を検証していく」という方針を打ち出したことが、かえって足枷になり、検証に時間がかかっている点を指摘した。

     別の遺族に、「いよいよ、あと1カ月ほどで最終報告が出る予定だが、実際に検証が遅れている中で、満足な最終報告を期待できるか?」と質問したところ、「期待できるはずない。最初から期待してなかったが、その通りになってる」と答えた。

     佐藤さんや一部の遺族は、これまで何度も、行政や検証委員会に申し入れを行ってきた。それは、新しい事実は示されないまま、無駄に時間だけが過ぎて行く事へのジレンマだ。
     昨年まで、市教委や学校の不誠実な対応に振り回されてきた遺族達を訴えから立ち上げられた第三者検証委員会だが、遺族達のジレンマは深まるばかりである。


    ■情報は誰のものか?

     午前から始まった会合も、2回の休憩を挟み、午後3時半ごろから、遺族との検証委の意見交換会となった。

    「生存教員の聞き取りをさらに行い、追加で確認して欲しい点がある」
    「これまでの検証委の報告の中で事実誤認があるので修正して欲しい」
    などの要望が、約2時間にわたって、合計11人の遺族から出された。

     その中で、僕が重要だと感じたのは、震災当時に大川小学校の6年生だった長男を亡くした今野浩行さんの質問だ。

    今野さん「生存教員への質問内容と回答内容については、遺族に公開する事は考えていますか?」

    室﨑益輝委員長「プライバシーの問題もあり、全てを公開する予定はありません」

    今野さん「どういう質問をしたかという内容が分からないと、われわれ
    の意思を汲んで質問したか判断できない。遺族の知る権利もあるので、ぜひ公開してほしい」

    佐藤健宗委員「関係者のプライバシーに配慮をしながら、できる限りたくさんのことを正確に調べています。信用してほしい。質問や回答のすべてを公開する予定はありません。生存教員には、事前に公開しないという約束で質問と回答を交わした。約束は破れない」

    事務局首藤由紀氏「検証委員会が立ち上げられた際に、『原則として、聞き取り調査の内容は公開しない』と取り決めました。冒頭に取り決めた通りに運営しています」

     今野さんと検証委員会のやりとりはここで終わったが、意見交換会のなかでは、他の意見に対して、事務局から「市との契約では、報告書を成果物として提出することだけ。収集した情報の全てを市に提出する予定はない」という見解も出された。

      その後の記者会見でも、複数の記者達からこの点について確認する質問が出された。弁護士である佐藤委員は、「『国民の知る権利』と『プライバシーの保護』 という二つの相反する問題を考慮した上で、『プライバシー保護』を重視する可能性はある」と憲法解釈で説明した。また、室﨑委員長は、「可能性としては、 検証委員会の判断で、聞き取り調査のデータを廃棄する可能性もある」と回答した。

     情報公開についての見解は従前の説明通りだが、問題は、情報を管理している検証委員会が、収集した情報を廃棄する権利まで、自ら有していると見解を示したことだ。その点について、筆者も質問した。

    筆者「憲法解釈ではなく、市の財政によって収集された資料やデータの所有権は、誰にあると考えているのか?」

    佐藤委員「管理権は委託されている検証委にある。所有権は即答できない」

    室﨑委員長「所有権など法的な問題は、確認しないと分からない。ただし、資料の保存や廃棄については、管理を委託されている検証委員会の責任で判断する」

     これは、結構大事なことだ。
     多分、常識的に考えれば、検証委員会が、市教委に無断で収集した情報を破棄するとは考えにくい。少なくとも、最終報告が出る前に、意図的に収集した情報を破棄することもないだろう。
     しかし、「情報の廃棄する責任や権利は、第三者委員会が持っている」と検証委員会が考えているのなら危険なだと思う。

     まず、一番最初に挙げられるのは、検証委員会の正当性を検証する際に、情報が喪失されているかもしれないということ。
     例えば、検証委員会は、唯一の生存教員から聞き取り調査を行ったと報告している。しかし、生存教員が表に一切出てこない状況で、一体、その「聞き取り調査が、本当にあったのかどうか」を、誰が証明するのか?

     検証委員会は、様々な証言者の元データをほとんど示していない。そに対して遺族も市教委もメディアも、「検証委員会が嘘の報告をしていないだろう」という信頼関係だけで信用しているに過ぎない。

      公開するかどうかは別にして、第三者委員会(運営母体は「社会安全研究所」という民間シンクタンク)へ業務を委託している市教委や行政が、詳細なデータを 確認することなく、証拠である証言データが、検証委の独立した判断で破棄されてしまったら、事実の確認をしようがない。筆者は、選挙で選ばれた議会が請求 すれば、最悪でも秘密会で、全ての情報が確認できる状況は担保する必要があると考える。

     非常に失礼な言い方かもしれないが、近い将来に 生存教員が亡くなる可能性だってある。そうなったら、当日を知る学校職員で唯一生き残った大人の証言は、もう聞けなくなってしまう。その貴重な証言データ は、検証委員会という単なる検証を委託された任意団体(もしくは運営母体の民間企業)によって、勝手に破棄される可能性がある……という現状なのだが、そ れは大きな問題がある。

     この点については、次回以降も追及してみたい。

    * * * * *
     
     検証委は、来年1月19日に次回を予定している。

     間もなく、震災から3年が経つ。民事訴訟の時効は3年と定められている。検証委員会の最終報告に不満が残れば、遺族たちはもう、訴訟の場で事実解明を求めるしかなくなってくる。その判断のタイムリミットが近づいている。

     遺族たちの中には、検証不要という意見とともに、徹底検証を求める意見がある。
     前述の佐藤敏郎さんや今野浩行さんら、徹底検証を求める遺族達が繰り返し訴えているのは、「地震から津波が来るまでの50分間に何が起こっていたのかを知りたい」という事だ。

     これまでも筆者が言ってきた通り、大川小学校の犠牲は、日本の歴史の中でも特筆すべき事故だったという問題もある。

     年明けにも予定される検証委の最終報告が、こじれた遺族の気持ちに配慮しつつ、歴史的な事故の検証記録という大きな課題をクリアできるのか……また改めて伝えたいと思います。
     
       

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    渡部真 わたべ・まこと
    1967 年、東京都生まれ。広告制作会社を経て、フリーランス編集者・ライターとなる。下町文化、映画、教育問題など、幅広い分野で取材を続け、編集中心に、執 筆、撮影、デザインとプリプレス全般において様々な活動を展開。東日本大震災以降、東北各地で取材活動を続けている。震災関連では、「3.11絆のメッセージ」(東京書店)、「風化する光と影」(マイウェイ出版)、「さよなら原発〜路上からの革命」(週刊金曜日・増刊号)を編集・執筆。
    [Twitter] @craft_box
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