c3f0d4ea8027341f15369617681477ec895171d2
第198号 2016.10.26発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが見舞われたヘンテコな経験を疑似体験!?小説「わたくしの人たち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…蓮舫の二重国籍問題が、まだくすぶっている。法的には問題ないといっても政治家が、しかも閣僚を経験し、現在は野党第一党の代表で、首相を目指すという人物が二重国籍では問題だというのは、一応正論と言えば正論ではある。しかし、すでに蓮舫が国籍を日本一国に決定して、手続きを済ませたのなら、この問題にいつまでもこだわって延々と責め続けているネット内の言論は、異常としか言いようがない。「武士の情け」「判官贔屓」といった感覚を忘れ、「強きを助け、弱きをくじく」連中は果たして日本人と言えるのだろうか?
※小説「わたくしの人たち」…“意識高い系・元モデル起業女”西川麻央の事務所に行ってみると、そこに“洋服なんか着たことない女”西明寺夏子が登場。「さくら茶会理事」「『日刊偉人マガジン』ディレクター」という肩書らしいが、そんな彼女が「心から尊敬できる方」として紹介したのが、なんと宮様詐欺師・溶田宗泰!!今回も引き続き怪しい人物が続々と登場!!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!タイの国王崩御に関して何か思うところはある?豚骨ラーメンの面の硬さはどれ位が好み?俳優・堺雅人をどう思う?犬は好き?もし文化勲章を戴く事になったらどうする?「自由」と「天皇制」をどう考えるか?お父さんのまくらが匂うのはなぜ?「リアリティ」が気になって「フィクション」を楽しめないことってある?コンタクトレンズにしようと思ったことはある?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第195回「『武士の情け』という日本人の倫理観」
2. しゃべらせてクリ!・第156回「代わりばんこの御坊家の肖像ぶぁ~い!の巻〈後編〉」
3. 泉美木蘭の小説「わたくしの人たち」・第5話「類は確実に友を呼ぶ」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 読者から寄せられた感想・ご要望など
7. 編集後記




52a3b137a0692a0be577bc3e3e87398ba3440f97

第195回「『武士の情け』という日本人の倫理観」

 蓮舫の二重国籍問題が、まだくすぶっている。
 二重国籍は、法的には何の問題もないということはライジングVol.193で詳述したとおりだ。(http://ch.nicovideo.jp/yoshirin/blomaga/ar1107347
 ただし法的には問題ないといっても政治家が、しかも閣僚を経験し、現在は野党第一党の代表で、首相を目指すという人物が二重国籍では問題だというのは、一応正論と言えば正論ではある。
 しかし、すでに蓮舫が国籍を日本一国に決定して、手続きを済ませたのなら、この問題にいつまでもこだわって延々と責め続けているネット内の言論は、異常としか言いようがない。
 特にこの問題の火付け役となったウェブサイト「アゴラ」の池田信夫と八幡和郎はほとんどストーカー状態で、しつこく女一人に粘着しまくっている。
 この異様な執念はどこから来るのかといえば、基本的に民進党が大嫌いで、党首を潰してやりたいという負の欲望からでしかないだろう。実はわしはもっと意地悪く見ていて、彼らの顔が悪すぎて、モテなかったためにストーカーになったのだろうと思ってたりする。

 彼らは、ひたすら自民党の味方、権力の味方なのだ。もともと「強きを助け、弱きをくじく」という性質の連中であり、特に今は安倍政権が強いから、なおのこと強力な権力にすり寄って媚びていたいのだろう。
「違う、ただ正論を述べているだけ」と言い張ったところで、結果として安倍政権という権力に得になる効果だけを発揮しているのは間違いない。
 わしは、権力が肥大しすぎることには警戒感を持つ。
 民主制の危うさを回避するために、権力が独裁に向かうことを回避するために、バランスを保たないといけないという警戒心は、持っていようとわしは思っている。
 実際、庶民もそう思っており、だからこそ世論調査では蓮舫代表に「期待する」と答える人が50%を超えているのだろう。
 自民党の独裁に任せておいても怖い、民進党に対抗勢力になってもらった方がいい、それなら民進党の中に他にもう人材がいないから、蓮舫の新鮮さに期待しておこうと考え、二重国籍問題を大ごととは捉えていない。
 この一般的感覚がある限り、二重国籍問題でこれ以上蓮舫がダメージを受けることはないだろう。

 これは「武士の情け」というものだ。
 本来、日本には日本独自の倫理観、道徳律のようなものがあったはずで、その中には「武士の情け」というものがあった。
 圧倒的に弱い側に不利なことが出てきた時には、「武士の情け」で見逃そうという感覚が働くのだ。これは極めて状況に依るものであって、権力の側、強者の側の不正には適応されない。
 あくまでも「情け」だから、弱い方に適用しなければならないルール感覚である。だから歴史感覚を有する庶民は、蓮舫に「武士の情け」というルールを適用して、片目を瞑っているのだろうと考えられる。
 世の中には「近代的な法」のルールだけで、正しいか、正しくないかを判断できない例がある。
 その一例としてわしが蓮舫の件から連想したのが、わし自身の小学生の時のエピソードだ。
 知らない人もいるだろうから、ここに掲載しておこう。