第287号 2018.10.2発行
「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしの人たち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…先日、わが「よしりん企画」は「仕事の属人化」が起こっていて、かなり危険だとメーリングリストで批判してきたゴー宣道場門下生がいた。「属人化」とは企業や組織などにおいて、ある特定の仕事を特定の人が担当し、その人にしかできない状態になっていることをいう。「属人化」の対義語は「標準化」で、どの仕事をどの人でもやれる状態にすることをいう。すなわち「マニュアル化」である。働く上で「属人化」「標準化」はどう考えるべきだろうか?
※「泉美木蘭のトンデモ見聞録」…世の中、間違った傷つき方をしている人が多すぎる。今回から時々、「それ、傷つくところじゃないですよ!」と言いたくなる人を紹介して、その背中を全力で叩いて励ます回をもうけたいと思う。『日経ビジネス』の記事に、トランスジェンダーについてのレポートがあったのだが、そこに全力で励ましたい人が登場していたのだ。その女性はいったい何に傷つき悩んでいるのかというと…?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!バリアフリーと文化財保護、どう考えれば良い?若者は選挙に行くべき?ベーシックインカムをどう思う?自分の子供が学校でいじめられたらどうする?学校で少年少女に性教育をするべき?「成長」と「慣れ」の違いは?貴乃花親方と日本相撲協会の対立をどう見る?…等々、よしりんの回答や如何に!?
【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第295回「属人化と標準化を考察する」
2. しゃべらせてクリ!・第244回「見逃してクリ閻魔しゃん! ぽっくん嘘ついたことありましぇん!の巻〈前編〉」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第99回「お嬢さん、それ、傷つくところじゃないですよ!」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記
第295回「属人化と標準化を考察する」 先日、わが「よしりん企画」は「仕事の属人化」が起こっていて、かなり危険だとメーリングリストで批判してきたゴー宣道場門下生がいた。
「属人化」とはあまり耳にしたことのない言葉だが、それはどういう意味で、よしりん企画はどう危険だというのだろうか?
「属人化」とは企業や組織などにおいて、ある特定の仕事を特定の人が担当し、その人にしかできない状態になっていることをいう。
「属人化」の対義語は「標準化」で、どの仕事をどの人でもやれる状態にすることをいう。すなわち「マニュアル化」である。
属人化のメリットは、個人が特定の業務についての専門家となり、自分の頭で考えて行うことで仕事が進み、個人の価値が大きくなることにある。
一方デメリットは、その人がいなくなると仕事が立ち行かなくなる、後任者への引継ぎがうまくいかないといったことが挙げられる。
標準化のメリットは、誰が欠けても仕事が回ること、誰でも同じ仕事ができるので、他の人の仕事のミスに気づきやすいことなど。
そしてデメリットは、自分で考えず、決められたことをするだけなので、やる気が失われ、成長がなくなり、個人の価値が失われることが挙げられる。
どちらにもそれぞれ長所・短所はある。
よしりん企画の「属人化」を指摘した門下生は、よしりん企画の仕事も、誰でもできるように「標準化」しなければ「組織としては致命傷です」と主張した。
だが、まず言っておかなければならない。
よしりん企画は一般的な企業「組織」ではない。「職人集団」だ。
いくら「属人化」なんて聞き慣れない言葉を知っていても、組織の一員と職人は違うという、当たり前の前提を理解していないのでは全く無意味である。
職人に「属人化するな」と説教するなんて、ほとんど非常識だとしか言いようがない。
だったらわしの仕事が「標準化」できて、他人に交代できるとでも思っているのだろうか? 大企業の社長から、中小零細企業の社長まで、誰に聞いても、漫画家の職人スタッフを「標準化」できるなんて言わないはずだ。
そもそも、ちょっと前までは「マニュアル化」にプラスのイメージは全然なかったはずだ。
一時は何かといえば、マクドナルドのバイトの仕事には徹底的なマニュアルがあるということが例に出され、マニュアルでしか人が動けなくなっただの、決められたことしかできない若者が増えただのと、さんざん非難されていた。
「マニュアル人間」といえば「ロボット人間」と同義語で、ほとんど「使えない奴」を意味していた。
それなのに、いつの間にマニュアル化が推奨される時代になったんだ?
それを推奨する人は、自分を「私はマニュアル人間だ!」と誇りに思っているのだろうか?
しかも実際はマクドナルドのバイトだって、特に接客なんかにおいては、マニュアルに書いていない事態に出くわすことなどいくらでもありうる。
そういう時には自分の頭で判断しなければ仕方がないもので、何の仕事にせよ、完全なマニュアル化なんてできるのかということ自体にも、大いに疑問がある。
「会社の歯車になるな」というのは使い古されたお説教だったはずなのに、いつの間に「交換可能な歯車のような人間にならなければいけない」なんて、真逆の説教をされる世の中になっちゃったんだろうか?
標準化のデメリットを、もっと重視した方がいい。あんたは交換可能なネジ一本なのだから、あんたの仕事は誰がやってもいいのだよとなったら、人はどんな気持ちになるだろうか? 人間としての尊厳を傷つけられ、やってられるかという気分になって、仕事の質はどんどん低下していくに違いない。
コメント
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皆様生きづらさをかけてらっしゃいます
→皆様生きづらさを抱えていらっしゃいます
失礼しました。
門下生チャンネル、
初めて参加させていただきました。
やはり門下生のお話は勉強になります。
まだ見られたことがない方も、
是非今UPされている分をご覧ください。
あなたの探求心を満足させ、
人生を変えるかもしれないものがそこにあります。
ライジング感想、改めて記します。
「属人化と標準化を考察する」
会社などで標準化や仕事のマニュアル化が必須とされるのは、人間は過失を犯す動物だ、という事実に基づくのでしょう。則ち、何千万とか何億とかのお金が流れる作業で、個人の誤認による失敗があった場合、責任をとったり埋め合わせができるのか、ということなのだろうと想像します。
しかし、その標準規範やマニュアルや手引き書、手順解説の段階で、作成者などの勘違いや、未知の事態への配慮不足などが現れる場合もあり、その場合、現場責任者や個人の裁量が必要とされるわけです。
結局のところ、人間が完全ではなく、どこかかけているからこそ、この問題が生じるのでしょう。ありふれた言葉ですが、ケースバイケースと言うしかないのでしょう。しかし、人間は機械ではないので、各自の判断を優先することも肝要だろうと言えるのではありますまいか。
機械というのは融通がきかないもので、ビデオでも録画時間のセットを勘違いすると、番組が途中でもそこまでしか録画してくれません。機械はそういう判断はしてはくれません。だから、AIとか開発されているのでしょうけれども、それもどこまで人間の誤認を補ってくれるのでしょうか。
そのような機械のようにすることが、人間を、社会全体を幸せにしてくれるのでしょうか。
私がプレイした戦争趣味レーションPCゲームで、上官と、君主とどちらの命令を優先するのか、という選択肢が出たことがあり、正解は、上官の方でした。当たり前のようなことを記しましたが、これだって、絶対ではなく、大部分の場合においてでしょう。それこそそれぞれの能力の差なのだと思います。
以上、とりとめのないことを記しました。
「お嬢さん、それ、傷つくところじゃないですよ!」
胸の話については先に記しましたが、人間は他人の予想もつかぬところがコンプレックスになっているところがあったりして、複雑です。私も、「空気」問題のほかにも「睡眠」問題で傷ついたりします。睡眠はそんなに快楽なのだろうか、人間の行動範囲を狭め、不意に訪れる刺客のような感じがしています。
思うに、人が生活することは、誰かをおとしめるつもりがなくとも、傷つけ合ったり、誤解し合ったりすることの連続なのでしょう。褒めたつもりで言ったことでも、不快な気分になったり、とか、仕事を軽減化するつもりで代役をかって出たとしても、その人にとってはその仕事に力を入れていることがあった場合、餘計なお世話ととられることもあり、個人はそれぞれ異なっているので、こんなことが、というところで相手の心証を悪くすることもあります。
しかし、そのことを恐れていては何も進まないのだろうと判断します。なるべく誤解をさせないようにする工夫は必要ですが、まずは動いてみないといけないのだと言えるのではないのでしょうか。安倍政権の不正や失政に対して声をあげ、立憲的改憲の必要性を訴え、天皇陛下の気持ちに添って、天皇制を永続させるためには何が必要かを考え、実施することが大切でしょう。
巨乳の話で終わってしまってはいけないと思いましたので、少し堅苦しく記してみました。
ところで、やはり記しておきます。話は変わるのですが、鷲尾さん(ボードレールさん)という人はどうしてこの場から離れてしまったのでしょうか。私はカレーさん同様、あの人は最後までよしりん先生のために貢献してくださる方っだと思い、一時この場をはなれていました。いきさつをご存じのかたがいたら、教えてください、と一往記しておきます。
また何か記すかも知れませんが、とりあえず、次号を期待します。みなぽんさんがはやく恢復しますように。お大事に。
いちおう、誤字修正をあげておきます
趣味レーション→シミュレーション。何だか間違って覚えていました。
最後の方の「方っだと思い」→「っ」を省く
老婆心ながら記しておきます。
結構な罵詈雑言が含まれたコメントが散見されますが、勘違いしちゃいけませんよ。
自分は「公」について考えているつもりなのでしょうけど、そこまで感情的になっている状態は完全に「私」の世界ですから。
私は正しいんだよっ! って、強弁しているだけですから。
『ゴー宣』『ライジング』の読者で、アンチやネトウヨではないからといって、何書いてもいいってもんじゃあありません。
自分が私的な感情を吐き出しているだけだということを、自分で認識できていないという状態は、アンチやネトウヨとほぼ同じです。
ちなみに、小林先生や師範方、トッキーさんらもブログで辛辣な表現を使われることがありますが、それは「公」に供するべきプロとしての政治家や知識人らに対する批判であったり、社会に対する皮肉(ユーモアが大事)であったりするので、読んでいて何ら不快感を感じることはありません。
素人同士の罵り合いを、なんで見せられにゃならんのか。
公的空間としてのマナーを守って下さい。
「相手に言われっぱなし=負け確定」なんて、誰も思ってない(というより、関心がない)。
「本当にこれを今書かねばならんのか?」ということを、反芻してみる(脳を介する)余裕をもって下さい。
こんにチワワ!
もくれん師匠のトンデモ見聞録を読みまして。
拗らせてますね〜、小胸さんも記者さんも。
小胸さんは本気で褒めたとしても素直に受け取らず却ってバカにされてるとか感じてそう。
だいたい人に好感を持つかどうかは、人間性や距離感の相性とかの総合的なものであって、胸のサイズで判断してる男なんてほとんどいないと思うけどなぁ(ですよね?男性諸君!)。
その僻み根性が人間関係をややこしくしてるんじゃないかな。
その現実を受け入れていかなきゃぁ、だよ。
記者は記者で友人をバカにしてるんじゃないか?
そもそも小胸で生き辛さを感じる女性に関してトランスジェンダーの記事に載せるかね?
いろいろ間違えてますね。
木蘭さんの記事の文の「本当に深刻な精神病を発症…」が、色々な事に当てはまっていて空恐ろしくも感じます、某人(もう誰とか書く必要も無く奴ら)なんか正にそうだし…
自分を勘定に入れて生きろよ、マジで、じゃ無いと世の中からはみ出たまま生きる事になるわ、旦那も擁護しているようで妻を◯◯ガイ認定しているようなものだし。
社会的弱者やマイノリティを曳けらかしても鬼と悪魔のこの世間誰も助けてもくれないですからね。
ライジングの配信、ありがとうございます。
今回の記事で、よしりん先生は、仕事に高い意識とやりがい(=やる気)を持って臨むことの大切さに主眼を置かれているのだと受け止めました。
「標準化」が持て囃される背景には、構造改革の頃から流行ったと思われる「自発性」「自己責任」「OJT」といった言葉に踊らされて、社内での教育体制が崩壊してしまったことへの反動があるように思われます。
教育体制の立て直し自体は必要だと思います。
しかし、社員のやる気と合わさって初めて能力の向上は望める訳で、単にワークフローを整理するだけでは、何の成果も上げられないでしょう。
教育体制は、社員の仕事に対する意識付けまで含めて行われるべきだと思いますし、社員の側も、仕事をより深く理解する積極性が必要だと思います。
「松下型経営」を取り上げられたところでは、高度経済成長が望めないのに、そんな経営戦略が現代において実現可能なのだろうか、と疑問に思いました。しかし、待遇面というよりも、濃密な人間関係の中で、信頼関係とやりがいを生み出す育成環境に目を向けられているのだと理解しました。
共同体が失われつつある日本では、仕事は単に生活費を稼ぐ場としてでなく、公共心の発露の場として、一層重要な位置を占めていくと思われます。
仕事への意識が軽くなってしまっては、いよいよ日本人は社会との関係性を実感できない、砂粒の個と化してしまいます。
他者への貢献感が無ければ幸福感は得られない、と聞きます。
仕事への意識は、人生を幸福に過ごせるかどうかにつながる問題だと思います。
今号のゴー宣を読みまして、天皇陛下のことが思い浮かびました。