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第43号 2013.6.25発行


「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、よしりんの心を揺さぶった“娯楽の数々”を紹介する「カルチャークラブ」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」、珍妙な商品が盛り沢山(!?)の『おぼっちゃまくん』キャラクターグッズを紹介する「茶魔ちゃま秘宝館」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが無限に想像をふくらませ、とことん自由に笑える「日本神話」の世界を語る「もくれんの『ザ・神様!』、秘書によるよしりん観察記「今週のよしりん」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)


【今週のお知らせ】
※極めて重大な局面に突入している「皇位継承問題」。事態は、男系カルト派「さる有識者」の暗躍による、宮内庁、政府関係者、マスコミを巻き込んだ、前代未聞の「謀反」という最悪の状況に。今週の「ゴーマニズム宣言」から、日本の命運を賭けた死闘が始まる!
※読者を“文化の窓辺”へと誘う新連載「カルチャークラブ」をスタート!!記念すべき第1回、取り上げるのは、レオナルド・ディカプリオ主演の映画『華麗なるギャツビー』!ギャツビーで読み解く女の真実と、AKB48を巡る意外な共通点とは!?
※隠れた名作をご紹介する「よしりん漫画宝庫」。“普通”のキャラを描こうとしても、どうしても暴走する異常者になってしまう…そんな、自身が“ナチュラルに普通じゃない”よしりんが「それなら最初っから奇想天外な話を描こう!」と始めた作品『次元冒険記』。果たして、どんな次元まで行ってしまうのか!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第44回「皇室消滅をもたらす謀反が起こっている」
2. ☆新連載☆カルチャークラブ・第1回「華麗なるギャツビー」
3. しゃべらせてクリ!・第5回
4. よしりん漫画宝庫・第43回「『次元冒険記』①よしりんのSF奇想天外!」
5. Q&Aコーナー
6. 今週のよしりん・第42回「よしりんの秘書は『アホ』なのか?」
7. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
8. 読者から寄せられた感想・ご要望など
9. 編集後記




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第44回「皇室消滅をもたらす謀反が起こっている」

 皇位継承問題は、極めて重大な局面に突入している。

 以前から「女性宮家創設」を宮内庁長官と前侍従長が共に訴えている以上、これが天皇陛下のご意思であることは明らかだった。
 そして男系に固執する自称保守派はそれが決定的に都合の悪いものなので、口を揃えて「陛下のご意思を忖度してはいけない」などと頓珍漢なことを言っていた。
 ところがいつの間にやら最近の女性週刊誌等では、女性宮家創設が天皇陛下のご希望であることを当然の前提として書いている。「週刊新潮」も「女性宮家の創設は両陛下の強いご意向」と宮内庁の風岡長官が安倍首相に伝えたと報じた。

 宮内庁は週刊新潮が報じた風岡長官の発言について「事実無根」と抗議しているが、それは当然である。憲法の制約で皇位継承問題が国会案件とされ、天皇陛下がご意見できないことになっている以上、宮内庁長官が「両陛下の強いご意向」とストレートに言うわけがなく、こんな記事が出たら「事実無根」と言うしかない。

 だがそれは「女性宮家創設は陛下のご意思ではない」ということを意味するものではない。風岡長官はストレートな表現は決してしないが、聞けば誰でも「陛下のご意思」と推察できるような官僚一流の言い回しをしたはずである。わしには100%の確信がある。


 今や尊皇心のある国民には「女性宮家創設は両陛下の強いご意向」という暗黙の了解が進んできた。そしてこれに焦った男系固執派の人物が、無知な一部週刊誌を騙して異常な世論操作を進めている。

 その第一弾が週刊新潮6月20日号の「『雅子妃』不適格で『悠仁親王』即位への道」という、巻頭7ページにも及ぶ極悪記事だ。
 宮内庁が皇室典範改正を安倍内閣に申し入れており、その内容は、皇太子殿下がご即位後、比較的早い時期に退位し、継承順位第2位の秋篠宮殿下も即位を辞退、悠仁親王殿下が即位できるようにするものだというのだ。
 これは、雅子妃殿下が皇后になるには「不適格」なので、一足飛びに悠仁さまを天皇にしようというプランであり、しかも天皇陛下はじめ皇太子殿下や秋篠宮殿下もご了承しているとまで、その記事は書いている。

 絶対に、ありえない。
 本当にこのプラン通り、本人の意思で「退位」や「即位の辞退」が認められる制度になったら、もし悠仁さまが「即位を辞退する」と言ってしまえばもうオシマイ、日本から天皇が消滅してしまう!!

 天皇の存在を極めて不安定にしてしまうようなバカげたプランを宮内庁が提案し、天皇陛下はじめ皇族方が賛成されるなんてことは、1万%ありえないのである!


 このヨタ記事には案の定、宮内庁が内閣官房と連名で、文書で正式に「事実無根」として厳重抗議し、訂正を要請した。
 風岡宮内庁長官は「このようなことは一切なく、強い憤りを感じている」とまで表明し、菅官房長官も「皇位継承という極めて重要なことがらで国民に重大な誤解を与える恐れがあり、極めて遺憾」としている。

 記事で「提案した」とされた側と「提案を受けた」とされた側の双方が揃って否定したのだから、よほどの証拠を出さない限りデマ確定である。
 ところが週刊新潮は翌週6月27日号で、抗議を完全に無視し、記事が真実であるという証明も一切しないまま、前週のヨタ記事の内容をあたかも既成事実のように繰り返す「続報」を載せた。新たな証明がない時点でデマ確定なのに、無視して居直るのだから悪辣この上ない。


 一方「週刊ポスト」6月28日号には「宮内庁内でも議論噴出!『秋篠宮を摂政に』は是か非か」なる記事が載った。
 将来、皇太子殿下が天皇になられる際、皇后となる雅子妃の公務負担を軽減するため、 秋篠宮殿下に摂政に就任していただくべきとする意見が「宮内庁内部や一部の宮家関係者」などの間で出ているというのだ。

 これも、絶対にありえない。
 これは「摂政」とは何なのかを全く知らない不見識者の暴論としか言いようがない。

 古代、推古天皇の補佐のために聖徳太子が摂政になったとされるが、それはここで問題となる皇室典範に定められた摂政とは異なる。
 摂政とは、天皇陛下が未成年か、もしくは憲法に定められた天皇の国事行為を行えないような心身の状態が長く続く場合に限って置かれる、天皇の代行のことである。
 わかりやすい例では、大正天皇のご病気が重篤になられた際に、皇太子(後の昭和天皇)が摂政に立たれている。

 天皇に成り代わり、天皇の役割をほぼ100%代行するのが摂政であり、天皇が健康なのに、皇后が病気だからその負担軽減のために摂政を置くなんてことは絶対にないのだ。


 ところがこの記事中で、こんな愚にもつかない意見に対して「いま考えられる最も現実的な選択肢だ」と大賛成のコメントをしている無知な知識人がいる。「神武天皇のY染色体」の信仰を広めた宣教師、八木秀次だ。

 八木は秋篠宮・同妃両殿下が海外をご訪問する際も「摂政宮とその妃という立場ならば重みが生まれ」るなんて発言をしているが、 摂政とは「箔をつける」程度のために立てられるものではない!
 繰り返すが、摂政を立てるのは、その時の天皇が天皇の役割を果たせない場合に限られる。皇太子殿下が天皇に即位したら摂政を立てようというのは、皇太子殿下には天皇の役割を果たす能力がないと言っているのと全く同じであり、これほど不敬な発言はないのである!!


 新潮の記事もポストの記事も、皇太子殿下を完全に蔑ろにしているという点で共通している。

 皇太子殿下が次代の天皇になられても、ご在位を短期に終わらせるか、形骸化させようと意図しているのである。

 高森明勅氏は、これを「皇位の尊厳に挑む、まさに万死に値する『謀反』」と断じている。


 以前から「天皇陛下のご学友」による「廃太子論」とか、山折哲雄の「退位」勧告とか、その他自称保守・自称尊皇の言論人による「皇太子バッシング」が続いているが、これらもその一環である。
 「皇太子バッシング」をやっている者たちは、要するに「自分は皇太子よりも秋篠宮の方が好きだから、秋篠宮を天皇にしたい」と言いたいのだ。自分の好き嫌いで皇位継承者までも決められると思い込んでいる、「国民主権病」の極致である。


 今回の週刊新潮のヨタ記事に書かれたような皇室典範改正がもし実現し、本人のご意思で退位や即位辞退が可能になったら、皇太子殿下に「即位辞退」を求める署名活動やデモが起こりかねない。あるいは「皇太子派」と「秋篠宮派」に国民が分断され、激しい対立が起こることだってありうる。
 大衆は常に無責任で、小泉構造改革を熱烈に支持した者が、次に民主党への政権交代を支持し、その次に安倍政権を支持し、どんどん社会を不安定にしてしまう。

 天皇はそんなポピュリズムを超越した権威を持っていることに決定的な意味がある。これは社会を安定化させ、民主主義の暴走を抑止する、伝統に育まれた大切な智慧なのだ。
 ところが今や、保守を自称する者が天皇を自分の好みで決めたいと主張し、天皇の存在までポピュリズムにさらして、歴史に培われた天皇の存在意義を破壊しようとしているのである!


 しかも今回は秋篠宮殿下も飛び越して、一気に悠仁親王殿下を即位させようというのだ。わしはそこにもう一つの魂胆を感じる。