(号外 2015.9.7発行)
ゴーマニズム宣言「中国の軍事パレードは有難かった」 中国が坑日戦勝記念日としている9月3日、中国共産党と軍、政府は「抗日戦争勝利70周年」の記念式典を開き、大規模な軍事パレードを行った。
他の戦勝国の多くは、日本が東京湾上の戦艦ミズーリで「降伏文書」に調印した9月2日を対日戦争勝利の記念日としているが、中国では国内で祝賀行事が行われた翌3日を記念日としているそうだ。
10年前の終戦60年の際も記念式典は行われたが、この日に記念行事を開催することが定例化されていたわけでもなく、法律で9月3日が「抗日戦争勝利記念日」と定められたのは習近平体制になってから。この日に軍事パレードが行われたのは、今年が初めてである。
中国の軍拡・覇権主義路線に対しては、国際社会、特に欧米からの不信感が増大している最中である。G7の西側諸国の首脳がこの行事に出席しなかったのは、もはや中国の「反日プロパガンダ」が過剰で歪んでいるということを先進諸国が周知しているからであり、「軍事パレード」という覇権主義の誇示が野蛮だという認識も共有されているからである。
西側諸国のこの反応は習近平にとっては誤算だっただろう。
日本は「抗日」という言葉に過剰反応する必要はない。支那の兵法の伝統は「指桑罵槐」(しそうばかい)であって、「桑を指さして槐(えんじゅ)を罵る」だから、抗日と言いつつ、武器の陳列を見れば、対アメリカの核弾頭ミサイルが一番目立つ。
国内的には共産党政権が軍事を一手に握っていることを誇示し、統治を安定させる目的がある。
その目論見はある程度は成功し、テレビでパレードを見た庶民の多くは自国が強国であると実感し、好意的に受け止めたらしい。
とはいえ、この日の北京を青空にするだけのために、周辺地域1万以上の工場が操業停止、車の量や建設工事まで激減させられ、北京周辺の経済状況は一時マヒ状態となった。
折しも中国経済は減速が懸念されている時でもあり、「こんなことにお金をかけている場合か」と冷ややかに受け止める市民もいて、反応には温度差があったという。
こんな軍事パレードの映像を朝から晩まで見せられれば、日本人は恐怖を感じるだろう。またしても中国脅威論が感情的に高まることは確実で、安保法制賛成の世論が増えてしまうかもしれない。
これでは、中国はまるで安倍総理を応援しているようだ。不思議なことに、安保法制成立の最大の応援団が中国という状態である。
アメリカでは、9月2日の対日戦勝記念日に合わせた声明でオバマ大統領が日米関係について「かつての敵国が最も安定した同盟国となり、和解の力を表す手本だ」と称賛し、暗に中国を牽制した。
こうなると、あたかも日米が手を組み、日本海を挟んで中国と対峙するという、「新冷戦」的な対立図式が出来上がったかのような感覚が生じる。そして、その緊張状態に恐怖して、日本はますますアメリカの属国化を加速させて行くのだ。
韓国の朴槿恵大統領は記念式典と軍事パレードに出席し、破格の厚遇を受けていたが、これは外交上、完全な失敗である。
今回の記念式典や軍事パレードには、中国の覇権主義を警戒して西側諸国の首脳が全く出席していない。中国はその点で明らかにメンツをつぶされている。そんな中で韓国だけが出席したのだから、そりゃ厚遇もするだろう。
コメント
コメントを書く号外配信ありがとうございます。
「有難かった」という逆説や皮肉と取れる表現は、丁寧に読み進めていけば納得のいくものでした。
欧州や国際社会の常識や反応は、この軍事パレードを(個人的にはほんの少しだけ)見た限りでは掴めなかっただけに新たな認識となりました。
翻って「私には何かできないものか」という思いも、少しではありますが抱きました。
「号外」の意味を噛みしめつつ、また次の配信が楽しみになります。
私は、野田聖子の「総裁選出馬の動き」は、安倍の人気取りのための演出だろう、とひねくれた見方をしています。
号外の配信、ありがとうございます。
自称保守の側から毎日のように垂れ流される「米国に抱き着きたい」という感情に基づく「中国脅威論」は、今回の号外による関係各国の正確な情報分析と、そこから導き出される「非脅威論」で、ほぼ完全に論破されたと思います。自称保守にこれを聞き入れる強さや賢さはあまり期待できないことこそが最も懸念材料なのですが…。
それにしても、民族性というものは何百年経っても変わらないものです。韓国の事大主義、中国のまとまりの無さ、ロシアの侵略性、米国の絶対正義病、日本の事なかれと増長との反復…。戦前は中国本土(満州より南、長城以南)への日本の不必要な介入が東亜における紛争に米英を介入させる口実を与え、戦後は中国に対する不必要な恐怖心が米国への日本の属国化を進めています。そして、米国には事なかれ、中国には増長という今の姿勢のままでは、いつの間にか地球の裏側での侵略戦争において米国の先兵になっていたという事態になります。
台湾も北朝鮮も中国も、やはり現状維持が望ましいのかもしれません。米国も中国も戦争する覚悟が無いわけですから。もし日本の保守派が好きな台湾独立派を本当に応援したいのなら、あるいは、もし日本のリベラルが主張するように北朝鮮人民に本当に同情するのなら、日本が米国からの独立を果たして外交のフリーハンドを得ることから始めるしか道は無い、そういう結論に達します。
中国の野蛮性が欧米人の認識として定着してきたのは良いことですが、これには経済的な理由もあるような気がします。中国ではベビーブーマーの高齢化と一人っ子政策による少子化が進み、これにより市場は急速に縮小しており、また賃金上昇によって世界の工場としての魅力も失われています。進出している欧米の企業から本国に伝えられる情報も、今までは欲に目がくらんで上がらなかったものが徐々に正確さを取り戻してきたのかもしれません。
しかし、中国の経済状況には関連する別の懸念もあります。景気刺激としてのインフラ整備には非常に無駄が多く、富裕層以外の人民には投資する余裕が無くなってきているはずです。つまり、中国の民主化などは絶対にあり得ませんが、崩壊の目はあるような気がするのです。
難民という名の民族大移動は欧州でも起こっており、もはや世界のトレンドともなっており、東アジアで起こっても不思議はありません。米国政府やグローバル企業群の命令でTPPが推進されているわけですが、その労働分野では移民の受け入れが推奨されている時期なのです。ここにも米国が暗い影を落としています。
たとえ中国が脅威でなくても、米国にNOが言えないと日本に未来は無い na85
号外配信お疲れ様です。
中国もアメリカも、格好ばかりつけていますが実際は手一杯なのですね。今回の号外でアジアを取り巻く状況を知り、様々な思惑があり戦争は回避されていることに安堵している一方で、「このままで良いのか」と疑問が募ります。
自称保守が言う「積極的平和主義」などハナから信じてはいませんが、「一国平和主義」も何時か通用しなくなるのではないかと思っています。
ただ、どうであれ日本が主権を取り戻さないことには話になりませんね。
号外と通常配信で二度美味しいですね、ありがとうございます。
支那も北も政府自民から施しを受けてるんじゃ無いかと思う位のグッドタイミング的な行動ですね。
今時軍事パレードで周辺国がビビるなんて考えても居ませんでしたが、口実には丁度良いのでしょう。
アメリカが北や支那やロシアとも協議しながら日本から金も人も武器も根刮ぎ使い棄てようとしてるんじゃ無いのか?
と、穿った見方しか私には出来ませんね。
ありがとうございました。
号外の配信、ありがとうございました。
ゴー宣は本当に勉強になります!!政治情勢や景気動向その他諸々、世の中を正確に読み取るには、対峙する側の当事者としてのマインド(メンタリティ)の理解が超重要ですね。台湾人やシナ人やアメリカ人、韓国人や朝鮮人、彼らのマインドや歴史を十分理解していないと、とても小林先生のような地に足のついた分析は不可能です。もし各国首脳が今号を読めば、全員説得されてしまう勢いです(笑) 拙者も表面上の現象や解釈にすぎない事実(仮)に惑わされないよう注意したいと思います!
小林先生の仰るように自国の主権を取り戻して外交のフリーハンドを奪還すれば、戦後日本の奴隷マインドや集団依存マインドなどの、いわば子供マインドを克服して自主独立できるように思います。一方で、国民一人ひとりが大人として自主独立できれば、自ずと外交のフリーハンドも持てるとも思います。鶏と卵の関係みたいですね。まず身近にできることとして、ライジングや道場などでしっかり勉強して、自主独立の「個」を磨き続けたいと思います。
配信ありがとうございます。
アメリカの極東戦略はいかに東アジアにアメリカの影響力を保持できるかです。
そのためには脅威なる国が必要であり、昔はソ連、今は中国となっています。
日本はアメリカがアジアにおいての地位を守らせている子分であり、金庫番でもあります。
アメリカが対中脅威論をいえば、おうむ返しのように対中脅威論を世界中に宣伝してくれるので、アメリカにとっては良いポチだと思います。
アメリカの戦略に乗らない為には中国との連帯、連携は必要でしょう。
好戦的だから、愛国者だと思うのは大きな間違いだとわかりました。ありがとうございます。
号外配信お疲れ様です。
ライジング本編(Vol.147)のQ&Aで、わたしは中国の軍事パレードについて、「(西側の国が不参加なのは)有色人種に対する侮蔑という意味合いもあるのでは」という旨の質問をしましたが、あまりにも底の浅い見識でした。ただただ反省するばかりです。
中国の実態が悪い形でますます国際社会、西側諸国に知られてしまっては、さすがに中国も迂闊な行動はできませんね。
国境付近での小競り合いならともかく、領土侵略を目的とした戦争なんて、成熟した国家ならそんな馬鹿なことはしないでしょう。
確かに中国に突発的な事態が発生して、東アジアの力の均衡が崩れることもありうるから、その為の備えを日本はしておくべきですが、それはいま議論されている安保法案(戦争法案)とは全く別のものでしょう。
集団的自衛権ではなく、個別的自衛権の範疇で法改正すべきなのに、与党は個別的自衛権には一切手をつけず詭弁を弄してただひたすらアメリカ様の手となり足となって尽くしているお粗末さです。
与党、自称保守は中国・北朝鮮の脅威を盛んに言い立てて法案の成立を急いでいますが、実は自衛隊を米軍と一体化させて
自衛隊員を米軍の代わりに中東に送り込もうとする事実にはいっさい目をつぶっています。その先鋭として辺野古基地の固定化、オスプレイの配備があるのでしょうが、これらは一切日本を守らないばかりか、中東侵略のきっかけにしかならないことに、政治家も自称保守もいい加減気づいてほしいものですね。
アメリカは超大国という地位を笠に着て、侵略戦争を仕掛けて不利だとわかったら退却するという、狡猾な国であることを
もうそろそろ全国民は認識してもいいんじゃないでしょうか?サヨクは戦争法案は否定するくせに憲法9条は上に押し戴いて信奉するが、自分たちのしていることが矛盾していることにいい加減気づいてほしいものです。
かつて砲艦外交で無理やり開国されて原爆まで落とされたのに、そんなアメリカの制度を無条件、無批判で受け入れるのは、自分たちが長い歴史を経て培ったものを食い潰す行為に他ならないのに、戦後レジームの権化である政権にエールを送り、気に入らない相手を敵とみなして示威行為をするのは成熟した国家のするべきことではないでしょう。
中国の脅威におびえる暇があるのなら、日本は真の意味で独立する手立てを考えるべきだと思います。
号外を読んで、よしりん先生の多角的で視野の広いグローバルな分析に納得すると同時に、執筆で毎日多忙な先生より時間がありそうな知識人層は何で
冷静に分析できないのかと呆れてしまいます。
色々なメディアを見ていると、異常にビビっている人や以上に反発する人、これでも安保法案は戦争法案か?などと狂ったことを言っている人もいました。
私はカツカツのお財布事情のくせに見え張っただけのパフォーマンスだろうと思っていましたが、ゴー宣を読むとさらに色々な側面があるのだと気付かされ、ものすごく勉強になりました。
思ったのは韓国も日本と同じで、ネット民やらの評判を気にして政治をしているという情けない状況であること。
そして日本を含むアジアの状況というのはまさに世界のバランスによってなんとか生かされている情けない状況であること。
それはそもそも日本が一人立ちする以外が無い事が原因ということが情けないです。
書かれているとおり、自立してちゃんと世界に主張し米中との友好度を高めていくこと、これが日本の生きる道だと思いました。