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まぶたを持ち上げる。
目の前に、宮野さんがいた。
「なに寝てんのよ」
彼女は不機嫌そうだ。
辺りを見渡す。あの停留所だ。戻ってきた? ――いや、全部、夢か。
そりゃそうか。謎のバスが現れたり、その窓の外に未来が見えたりなんてこと、あるはずがない。
「バスは?」
と宮野さんが言った。
「……いや」
「ま、くるはずないか。噂じゃ、バスがくるのは水曜日だしね」
今日は木曜だ。そう、だから、バスが来るはずなんてない。
宮野さんは、オレの眉間の辺りを指さす。
「罰ゲーム。プリン買ってきて」
「罰って、なんの」
「あんた寝たでしょ。私は働いてたのに。許せないわ」
宮野さんはさっさと深緑色の軽自動車に乗り込んでしまう。オレも軽に近づき、窓越しに言った。
「どうしてプリンなんですか?」
「食べたくなったから。コンビニのでいいわ」
「車で行けばいいでしょ」
「嫌よ。私だって眠いもの。私が寝ているあいだにキミは働きなさい。目には目を、歯には歯を、惰眠には惰眠を。それが平等ってもんよ」
オレはため息をつく。――まあ、いい。たしかにアルバイト中に眠ってしまったのは、オレの落ち度だ。
「わかりましたよ」
宮野さんが、運転席の座席を倒す。オレは彼女から視線を上げた。――その時、視界の片隅に、なにかひっかかる。
改めて車内を眺めると、ルームミラーの下で、何かが揺れているのに気づいた。不細工な猫を模したキャラクターのようだった。
「これは?」
「ああ、お子様ランチ頼んだらついてきたのよ」
お子様でもないし、ランチって時間でもないし、結局また食べたのかよ。
――いや、そんなことはどうでもいい。
不細工な猫に見覚えがあった。
あのバスの窓から、確かにみえた。事故を起こした車内で、血を流す宮野さんを見下ろして揺れていた。
まさか、と思う。
オレはポケットに手を突っ込んだ。背筋が震える。そこには、スマートフォンが2台、入っていた。壁紙までまったく同じスマートフォン。
――あのバスは、ただの夢じゃなかったのか?
本当に事故を起こすのか? 宮野さんが? これから?
つい、唾を飲む。
「眠いなら、こっちで一泊していきませんか? もう遅い時間だし」
「なにそれナンパ? 絶対いやよ」
「いや。事故を起こす夢をみて、なんだか不安で」
「正夢ってやつ? そんなの信じてるの? バカバカしい」
オカルト雑誌編集者の言葉だとは思えない。
「明日の朝までに会社に戻ってないと、雑誌が出せないのよ。心配ないわ。こうみえても私、ゴールドドライバーだし」
「でも、ほら、5番目の噂がまだですよ」
「それはお家のベッドに期待してるわ」
そうだ。
5番目の噂は、「水曜日の夢には少年が現れる」だった。
少年ロケット――あいつのことなのか?
「30分だけ眠るわ。そのあいだにプリン買っといてね」
宮野さんはスマートフォンをいじってタイマーをセットし、目を閉じる。
瞬く間に、彼女の寝息が聞えてきた。
amor000(ムゲン) @nagaeryuuiti
おぅ、また更新されてる!
ASOBEYA @13Rider
なんか、変わったイベントに参加中。
アンソニー@靴下届け人 @moderate_cat
公式右上の「電波あり」はベルくんと久瀬くんが連絡取れるかどうかの指標ってことでいいのかね
ウイン(まさこ) @Win0036
少年が私たちと話す=夢で交信するってこと?
【常寝】カミガワリ人形 @AlternateSival
ふむん?タイマーをセット、ヨフカシを探せ、宮野さんは眠る。スイマは…襲い掛かる。眠らせては、いけない?
少年(ベルくん) @3d_bell
↓の文章を久瀬さんにメールしました!
KURAMOTO Itaru @a33_amimi
@3d_bell 少年,すまないが「主人公」に「われわれはソルです.あなたは今どこにいますか? 状況を教えてください」とメールしてもらえないか?
少年(ベルくん) @3d_bell
【久瀬さんからの返信】
オレは今、千葉の「動物公園駅」ってとこの近くにいる。
説明が難しいが、これから知人と乗る車が事故に遭うもしれない。
でも、運転手を説得するのが困難だ。
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なお、ツイート文からは、読みやすさを考慮してハッシュタグ「#3D小説」と「ツイートしてからどれくらいの時間がたったか」の表記を削除させていただいております。