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■久瀬太一/8月3日/17時
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■久瀬太一/8月3日/17時

2014-08-03 17:00
    久瀬視点
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     八千代は躊躇いのない足取りでマンションに入る。オレもその後ろに続いた。
    「どうしてここがわかったんだ?」
     彼はいつもの、こちらの内心を見透かしたような動作で肩をすくめる。
    「協会内には、何人か知り合いがいる。実のところ、君の彼女の誘拐にも知り合いのひとりが関わっている」
    「なら、今いる場所もわかるんじゃないのか?」
    「そう上手くはいかない。さっきの、派閥の続きだよ。悪魔を誘拐を実行したのはオレの友達がいる派閥だけど、そのあとでもう一方の派閥に引き渡された。そこにはどうやら、メリーの意思が関わっているらしい」
    「それで?」
    「ふたつの派閥は対立しているからね。やっぱり悪魔をみつけて誘拐した方としてはおもしろくないわけだ。だから必死に、彼女の居場所を捜していた。そしてここがみつかった」
    「なら、やっぱりみさきはここにいるんじゃないのか?」
    「可能性は低い」
     八千代がエレベーターのボタンを押した。ドアが開き、オレ達は乗り込む。
    「まだここに悪魔がいるなら、もっと手柄を立てたいスイマが飛びつくさ。もう別の場所に運ばれたあとだよ。オレは聖夜協会じゃまだ新人だから、空っぽになった部屋でも調べてこいといわれれば調べにいくさ」
     そんなものだろうか。
     エレベーターがゆっくりと上昇する。
     緊張していた。あわよくばこの先にみさきがいるのではないか、と想像した。同時に最悪の事態もイメージできた。
     オレの不安を表情から読み取ったのか、八千代は言った。
    「もうすぐ、エレベーターが止まる。ドアが開けばその先には無数の男たちがいる。黒服を着てサングラスをつけた、体格の良い男たちだ。ベルトコンベアで作られたように、みんな同じ顔をして、同じ動作で、同じ銃口を君に向ける」
     オレは首を振った。
    「そんなの考えちゃいない。オレをどうこうしたいなら、あんたひとりで充分だろ」
     最悪は、そんなものじゃない。
     佐倉みさきが血を流していなければそれでいい。
     エレベーターが停まり、ドアが開く。
     先はなんてことのない、ありきたりな通路だった。もちろん、拳銃を構えた黒服なんて奴らはいなかった。
     八千代のあとについて、オレは歩く。八千代はためらいなく、あるドアの前に立ち、2度チャイムを鳴らす。反応がないのをしばらく確認してから、ドアノブをつかんで回す。
     ドアはあっさりと開いた。
    「どうして鍵がかかってないんだ?」
     とオレは尋ねる。
    「理由は知らない。でも、想像はできる。君にだってできるはずだ」
     答えを知っているなら教えろよ。
     八千代は靴を履いたまま部屋に入る。オレもそれに倣った。
    「誰かをこの部屋に招き入れたかったから、鍵をかけなかったのか?」
    「そうかもしれない。でも、オレは別の可能性を考えている」
    「じゃあ、あのニールって奴が絡んでいるのか」
     八千代は笑った。
    「ちゃんとわかってるじゃないか」
     ニールは瞬間的に場所を移動する。あの能力で部屋の中に入り、帰りは普通にドアを開けたのだとしたら、辻褄があった。
     ――行きには瞬間移動を使い、帰りはそうしなかった理由はなんだ?
     オレは思わずため息をつく。ほんの先週まで、真面目に瞬間移動について考えることになるなんて思いもしなかった。
     玄関からは廊下が伸び、左手に2つドアが並んでいる。八千代はそれを順に開けていく。一方はバスルームで、もう一方はトイレだった。
    「もうひとつ、わかったことがある」
     とオレは言った。
    「へぇ。なんだい?」
    「あんたは敵を想定している。だから靴を履いたまま、部屋に入った」
    「ああ」
    「その敵はおそらく聖夜協会員だ。無関係な人間がこの部屋にやってくることは想定しづらい」
    「その通り」
     八千代は廊下の奥にある、曇りガラスがはめ込まれたドアを開けた。そこはリビングだ。ダイニングも兼ねているのだろう、広く、右手にはキッチンがある。
    「穏健派と強硬派の対立って奴か?」
    「ま、そんなとこだよ」
    「お前はどっちだなんだ?」
    「どっちでもない。ただの潜入捜査だ」
    「でも潜入した以上、どっちかにはついてるんだろう?」
    「友達は過激な奴が多い。協会内にはね」
     八千代は隣の寝室を覗き込んでから、リビングの片隅にあったPCラックの前に座った。そこにはノートPCが載っている。電源が点滅していて、スリープモードになっているようだとわかる。
     八千代はノートPCを起動させた。まずメールソフトを開く。オレも後ろからモニターを覗き込むが、気になる情報は目につかなかった。未開封のダイレクトメールばかりが並んでいる。おそらくほとんど使用していないメールアドレスなのだろう。
     続けて八千代はインターネットブラウザを立ち上げ、グーグルとヤフーのメールサービスを確認した。どちらにもログインできない。さらにツイッターやフェイスブックなどSNSサイトにアクセスしようとするが、なんらかの制限がかかっているようで、画面にはエラーメッセージが表示されるだけだった。
    「なかなか難しいもんだな」
     とオレは言う。
     八千代は笑った。
    「PCごと持って帰って調べてみれば、なにかみつかるさ。じゃなきゃわざわざ、ロックなんてかけない」
     なるほど。それはそうか。
    「なら別のところを捜した方がいいんじゃないか?」
    「そうだな。でも、捜し物の指針が欲しい。もう少しだけ」
     八千代はブックマークを開く。
     歴史あるゲーム制作ツールに関するサイトが、いくつか登録されていた。ノイマンという人物には、そんな趣味があるのだろうか。他にはニュースサイト、通販サイト、動画共有サービス、個人ブログ――
     オレは思わず、そのブログで視線を留める。
    「愛媛の愛情100%?」
     ずいぶんあんまりな名前だ。友人のブログを仕方なく登録した、というところだろうか。
    「なんであれ、違和感ってのは大切にするべきだ」
     八千代は笑顔で、そのサイトを開いた。
    読者の反応

    達句英知 @tac9999 2014-08-03 17:02:55
      なんかすごいネタ来た ponthe1.hatenablog.com


    ほうな@bellアカ @houna_bell 2014-08-03 17:08:20
    更新きた!この程度の単語で検索トップヒットするからSEO対策すごいなーw さて解析しましょうか   


    コウリョウ @kouryou0320 2014-08-03 17:04:33
    メルアド載ってるけどなんて送ろうか?  


    しゅんまお@ sol軍事班 @konkon4696 2014-08-03 17:05:21
    いろいろ明らかになってきたけど、ゴリゴリ伏線のこってるな…  


    結希@bell新大阪遅刻組 @yuki_seiyudo 2014-08-03 17:15:35
    愛媛の愛情100%にUPされてるLINEスタンプの37番って、確かbellの24日〜25日の紹介動画に出てきてたよな。一瞬だけベッドの布団から目が覗いてた。


    あみー @ryosangata_aisu 2014-08-03 17:06:01
    34番が少年ロケットだね  


    結希@bell新大阪遅刻組 @yuki_seiyudo 2014-08-03 17:16:39
    LINEスタンプ39番目は、新大阪のアパートにあった大量の飴を思い出させる。ガチャガチャのカプセルの中に入ってた飴。


    まぁや @maaaya1011 2014-08-03 17:17:16
    スタンプのやつ、文字はすべて50音順になってる。  


    光輝 @koukiwf 2014-08-03 17:09:26
    4/11から書いてる…。全部読むの骨折れるぞ
     

    @いあ @aia_poke 2014-08-03 17:15:31
    「いーのこいのこ」と歌う行事がある愛媛の地域は愛媛県伊予市・旧南山崎村地区 か愛媛県伊予市・大平武領地区 っぽいです。Wikipediaより  


    セトミ@レンブラント派 @setomi_tb 2014-08-03 17:16:58
    「大街道と銀天街のあたり」ってのも何かあるんでしょうか…地理ぜんぜんわからんけど





    ※Twitter上の、文章中に「3D小説」を含むツイートを転載させていただいております。
    お気に召さない場合は「転載元のアカウント」から「3D小説『bell』運営アカウント(  @superoresama )」にコメントをくださいましたら幸いです。早急に対処いたします。
    なお、ツイート文からは、読みやすさを考慮してハッシュタグ「#3D小説」と「ツイートしてからどれくらいの時間がたったか」の表記を削除させていただいております。
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