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ファーブルとの面会は、表面上は何事もなく終了した。彼とはファミリーレストランを出てすぐに別れた。
オレは当事者にみえて、当事者ではなかったのだと思う。これはきっと、八千代とファーブルとのつばぜり合いのようなものだ。
オレのみたところ、その結果は引き分けだった。
八千代の「魔法の言葉」は確かにファーブルの口を閉じさせ、一方でファーブルの「八千代の秘密」は確かにオレの胸に小さな棘を突き立てた。
――八千代は、すでにプレゼントを持っている?
本当に?
あいつはつい最近まで、聖夜協会員ではなかった。だが彼の父親は聖夜協会の連絡役をしていた。以前から、八千代も聖夜協会と関わっていたのかもしれない。
答えの出ないことを考えながら歩いていると、ふいに、すぐ隣から声が聞こえた。
「どうだった?」
八千代だ。タイミングが良すぎる。
「オレを見張っていたのか?」
「見張るふりをしていたよ。君がひとりで出て行って、オレが後をつけないのはおかしい」
八千代が首を傾げる。
「で、ファーブルに会った結果は?」
「エビフライが美味かったよ」
嘘だ。味なんてほとんど覚えちゃいない。
並んで歩きながら、オレは尋ねる。
「イコンってのはなんだ?」
「キリスト教の、敬拝の対象だろ。絵だったり、聖典のエピソードだったりする」
「そんなことを聞きたいわけじゃない。聖夜協会のイコンだ」
「ああ。だと思ったよ。でもオレも詳しいことは知らない」
「じゃあ、あんたがすでにプレゼントを貰ってるってのは?」
八千代はちらりとこちらをみた。
「ファーブルが言っていた、オレの秘密ってのはそれか?」
「ああ」
「その話、信じたのか?」
「まだ判断していない。本当なのか?」
「嘘でも本当でも、プレゼントなんか貰ってないって答えるよ、オレは」
「どうして隠す必要がある?」
「持ってないんだから隠しているわけじゃない」
「でも、もし持っていても隠すんだろう?」
「ああ。オレはニールほど自信家じゃないんだ。切り札になりそうなものは全部隠しておく」
「そうかい」
別にひどいとは思わない。
オレだってそれほど八千代を信用しているわけではないんだから、向こうに信用されていなくても仕方のないことだ。
「イコンってのは」
と、八千代が言った。
「プレゼントとなんらかの関わりがある。それは間違いない。だが聖夜協会でもかなりの上層部しか、その言葉の正確な意味は理解していない」
「あんたにもわからなかったのか?」
「まだ調査中だよ。今の状況じゃ、聖夜協会から情報を得る手段は酷く制限されているがね」
「そりゃ大変だな」
「おいおい、君が厄介なことに巻き込んだぜ?」
「ヒーローバッヂさえみつかればいいんだろ」
「ああ。期待してるよ、本当に」
炎天下をオレたちは並んで歩く。
ファーブルにつく気はない。
だが、もちろん八千代も、まだまだ信用できない。
テイル@SOL埼玉班 @Tailchaser 2014-08-08 13:50:46
悪魔の呪いってのが記憶消去とか時間飛ばしみたいなものなんだろーか
しながわりんこ @yuzuyuzuyuzuppe 2014-08-08 13:56:45
ファーブル怪しい・・・
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