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■久瀬太一/8月9日/21時
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
「箸で食うパスタは、やっぱりフォークで食うパスタとは別物だ」 と八千代が言った。 オレたちはチェーンのスパゲッティー屋で向かい合っていた。「ここに誘ったのはお前だろ?」「嫌いだとは言ってない。別物だ、と言っただけだよ」 たしかに箸で醤油バター味の麺をずるずると食っていると、それはパスタだとは思え...
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■久瀬太一/8月8日/26時45分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
石版の汚れを落とすのには、そう時間はかからなかった。 そこにみえたのは、マス目に埋まったひらがなの羅列だった。 ――なんだ、これ。 とオレは思う。「なんだ、これ」 と窓の向こうのオレが呟く。 サクラは言った。「これは、王国の成り立ちの伝説に登場する、勇者様が残したといわれる石版ですね」 なにをし...
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■久瀬太一/8月8日/26時30分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
気分を変えたかったのかもしれない、オレはホールにある、大きな石版の前に立つ。 そこにはなにか、どす黒いものがべっとりと付着していて、なにが書かれているのかは読み解けない。この辺りで戦った兵士のものだろうか、と考える。悲しい気持ちになる。「この石版が、気になりますか?」 とサクラが言った。「まあ...
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■久瀬太一/8月8日/26時20分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
まだ頭の芯の辺りが熱い。 なんだかわけがわからない、奇跡みたいな時間を抜けて、窓の向こうのオレとサクラは薄暗い城の中を進んでいく。 オレたちは地下を抜けたようだった。 だが1階に上っても、城からは出られないようだった。 巨大な扉――おそらくは出入口へと繋がる通路に、うず高く瓦礫が積み上がっていて...
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■久瀬太一/8月8日/26時15分
コメ1 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
「11番、おいオレ、八千代にイコンについて訊け! ミュージックプレイヤー、あるいはアカテがイコンの可能性があるらしい!」 隣のサクラが、「どうしたんですか?」と驚いた様子で尋ねるが、窓の向こうのオレは気にせずに叫ぶ。「12番は質問がみつからない。13番、ソルは水曜日のバスの件や水曜日の噂の件を八千代に...
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■久瀬太一/8月8日/25時55分
コメ1 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
「キュウ、イコンの確認、了解した!」 それからオレは、困った風に眉を寄せる。「あとは、黒くて読めない。19ページ、すべて黒い! 」 叫び疲れたのか、オレはぜいぜいと息をあげる。「ジュウ、わかった。ストレートに聞いてもおしえてくれない気がするが、意識しておく!」 それからオレは、また適当な方向に向か...
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■久瀬太一/8月8日/25時45分
コメ1 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
とりあえず窓の外のオレは、少しだけ先に進むことにしたようだった。 なんだか慌てた様子で部屋を探索し、先へと進んでいく。 牢屋の前のあたりで再び足をとめて、オレは叫んだ。「左の方は黒い! サンノイチ、山本美優。当時はショートカット。赤い小物をよく持っていた。たぶんテニス、やってたわけじゃないがや...
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■久瀬太一/8月8日/25時30分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
窓の向こうのオレは、きょろきょろと周囲を見渡す。「おい、オレがみてるのか?」 と奴は言った。 なぜ気づく? ……いや、考えればわかることかもしれないが、なんか気持ち悪い。「幸弘が越智幸弘なら、仲がよかったのは白石隆、山本美優のふたりだ!」 なぜいきなり、そんなことを叫び出す? たしかに越智幸弘と...
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■久瀬太一/8月8日/25時20分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
それからオレは、サクラと共に、順調に城の中を進んでいるようだった。 ドラゴンに食われかけたり、悪魔に魔法で襲われたりいった慌ただしいイベントは、その先はあまりないようだ。 オレは毒沼というものの実物を始めて目にしたが、それはただ灰色の泥が堆積しているようにみえて、毒でなかったとしてもわざわざ足...
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■攻略本リアルタイム交流
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
Aot(3D小説bell没入中) @aot_sol 2014-08-09 01:17:09 未来がリアルタイムに書き換わってるw おもしろい子泣き少将@優とユウカの背後さん @conaki_pbw 2014-08-09 01:17:20みさきさんが尾道に向かったの書いてみた! アオ @bluen25 2014-08-09 01:22:00愛媛の同級生の、越智くん以外のふたりのフルネームとか? コ...
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■久瀬太一/8月8日/25時10分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
――ん? スマートフォンを覗き込んでいたオレが顔を上げる。「読めてるよ。みんなには助けられてばかりだ」 サクラも足を止めて、振り返った。「え? なにかいいましたか?」「いや」 オレはまたスマートフォンを確認しながら、先へと進んでいく。「それはなんですか?」 とサクラが尋ねる。 彼女はスマートフォ...
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■久瀬太一/8月8日/25時
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
スマートフォンをみるオレの手つきをみて、思い当る。 オレが確認しているのは、メールではないようだ。 ――向こうのオレにも、電波は届いていない? なら、あの制作者から届いたアドレスか。 これでカンペキ、とアドレスに入っていたページ。 本当に時がくれば、あのページを読めるようになるみたいだ。 とりあ...
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■久瀬太一/8月8日/24時45分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
ようやく扉の錆を落としたオレは、またスマートフォンをチェックする。ずいぶん慎重になっているようだ。 小さな声で、ぼそりと、「常にダッシュって。歩いてる余裕ないよ、こんなの」 と呟いた。 ――なにがあるんだよ。 軽く深呼吸をして、ドアノブをつかむ。 そして、ドアをあけた直後、オレは駆けだす。 オレ...
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■久瀬太一/8月8日/24時30分
コメ1 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
棚の上に残されていた、2本のボトルを回収したオレは、次に古びた壺の前に立つ。オレの胸に届くくらいの、巨大な壺だ。あちこちにひびが入っている。 中には水が入っているようだ。オレはいったん、2本のボトルを足元におき、ゆっくりと壺を傾ける。 流れ出た水が足にかかり、オレは顔をしかめた。すでにその水は...
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■久瀬太一/8月8日/24時20分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
アナウンスが告げる。 ――次は青と紫の節、9番目の陰の日です。 窓の外にみえるオレは、あのリアルすぎて嘘みたいなドラゴンに背を向けて、一心不乱に逃げていた。 その光景をみて、オレはまず希望を感じた。 ――持っている。 バスの窓の外にみえる、未来のオレは、手に持ったスマートフォンを横向きにして覗き込...
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■久瀬太一/8月8日/24時10分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
シンプルなアナウンスが聞こえた。 ――次は、8月15日です。 窓の外にみえた景色に、オレは、息を飲んだ。 ※ そこにいたのは八千代だった。 八千代は縛られて倒れていた。 うつぶせで、顔はみえない。だが頭部の辺りから、じっとりと血が広がっている。 ――聖夜協会は、人を殺さないんじゃなかったの...
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■久瀬太一/8月8日/24時
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
24時になるころ、オレは夢の中でバスに乗った。 今回は、バスの中にいるのは、あのきぐるみだけだった。リュミエールの姿も、グーテンベルクの姿もない。 オレは最後尾の座席に腰を下ろす。 ソルのスマートフォンが奪われた、と告げると、少年ロケットのきぐるみは言った。「なるほど。そりゃ大変だ」 ちっとも感...
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■佐倉みさき/8月8日/17時
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
東京を出発して、名古屋、秋田ときて、次は尾道である。 さすがにもう少し理性的なルートはなかったのだろうかとつい考えてしまうが、どうやら久瀬くんの年齢を辿っているようだから文句もいえない。 ノイマンとニールは誘拐犯であり、私はその被害者だからということで、飛行機は避けている。結局のところ、新幹線...
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■久瀬太一/8月8日/14時
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
ホテルの部屋に戻って、違和感に気づいた。 鞄の位置が変わっている。 ――誰かが、この部屋に入った? 書き物机の引き出しを開ける。 そこになければならないものが、なかった。 思わず舌打ちがもれた。視界が暗くなったような気がした。 オレは部屋を飛び出し、すぐ隣の八千代の部屋をノックする。 ドアはすぐ...
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■久瀬太一/8月8日/13時45分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
ファーブルとの面会は、表面上は何事もなく終了した。彼とはファミリーレストランを出てすぐに別れた。 オレは当事者にみえて、当事者ではなかったのだと思う。これはきっと、八千代とファーブルとのつばぜり合いのようなものだ。 オレのみたところ、その結果は引き分けだった。 八千代の「魔法の言葉」は確かにフ...
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■久瀬太一/8月8日/13時
コメ1 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
真面目に目一杯高いランチを探したけれど、聖夜協会員と長ったらしいコースを食う気にもなれなかった。 だんだんどうでもよくなって、オレはホテルからそう離れていない駅前にファーブルを呼び出した。直接店を指定すると、事前に仲間を送り込まれる可能性があるように思ったのだ。一応、警戒した。 13時になる頃、...