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ニールは不機嫌そうに膝の上で頬杖をつき、続ける。
「簡単な話だ。オレがこの部屋に入ったとき、血は流れていなかった。センセイはおそらく死んでいたがな」
思わず叫ぶ。
「なんだよそれ」
めちゃくちゃだ。
「じゃあセンセイは死んでからナイフで刺されたってのか? そんな話、信じられるか」
ニールは首を傾げる。
「お前がさっき騒ぎ立ててなかったか? センセイは無抵抗だった。ナイフで刺される前にもう死んでたんだ」
いや、おかしいだろ、なんだそれ。
「だったら早くいえよ」
「うるせぇそのガキが犯人ってことで話がまとまってただろうが。余計なことをべらべらしゃべって話を長引かせたくなかったんだよ」
「冤罪でいいってのかよ!」
「そもそも犯人を捕まえるのは警察の仕事だろうが。オレたちがどうこういうことじゃない」
「なら山本を犯人扱いするのもやめろよ」
「知るかこいつしかいないと思ったんだよ、仕方ないだろうが」
ニールは舌打ちする。
「状況は、ややこしくなるだけで本質は変わってない。犯人は、オレがこの部屋に入って、一度出て、また戻ってくるまでにセンセイにナイフを突き刺した。そのあいだ部屋にいたのは山本だけだからこいつが犯人だと思った。だが確かに証拠はない、別人がどこかに潜んでいたのかもしれない、お前の言う通りオレがついでにナイフを突き刺した可能性だってある。もう推理ごっこは終わりにしようぜ。オレたちには答えを出せない」
「不思議ね」
宮野さんが言う。
「ナイフが凶器じゃなかったなら、いったいどうしてセンセイは死んだの?」
そうだ。
別の死因、なんてものが、あるのだろうか?
ニールが、つまらなそうに白いサイドテーブルを指さした。
「ただの推測だがな。そこに紅茶がある。たとえばあれに、毒が入っていたんだとしたら?」
オレたちは思わず、そのサイドテーブルをみる。
確かに今も、そこにはティーカップが乗っている。
口をつけた跡はあるか? わからない。
と、ふと、肩に手が置かれた。
小さな手だ。山本の手。
「だとしたら、本当に、犯人は私かもしれない」
彼女は顔を上げて、まっすぐにオレをみて、言った。
「私、センセイに頼まれて、紅茶に薬を入れたの」
――実は、知っていた。
あのバスでリュミエールにみせられた「光景」で、その場面をすでに目撃していた。
確かにセンセイは、山本に「薬を入れてほしい」と言って。
山本はそれに従って、紅茶に薬をいれた。
――あれが、毒薬だったのか?
だとすれば山本は悪くない。
センセイは、ほとんど自殺のようなものだ。
でも、オレの肩に乗った彼女の手は、僅かに震えている。
「少し考えさせてください」
と、オレはそう言って、オレは彼女を連れて部屋を出た。
※
オレたちと一緒に部屋を出た人物が、もうひとりいた。
アルベルト。彼女はノートPCを脇に抱えていた。
「私は『あ段の桶の中』を調べる」
そうだ。
ニールが目撃されていたことで意識が向かなかったが、目撃者は確かに、言っていた。
――どこからみていたのですか?
――あ段の、桶の中。
「あ段の桶の中って、なんですか?」
「昨日、館にいた人間ならわかる」
そちらは任せて、と彼女は言った。
みどぽん@(_・ω・)_ダァン!!班 @Mitosiba_ho
ニール白状せいとしか言いようがないこの状況
ラピス @rapiss
センセイ自殺とかじゃねえよなあ
カカロー@ソル岐阜班 @kakaro_sol
紅茶のカップあれ回転してるよね?
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