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山田玲司のヤングサンデー 第322号 2020/12/28

潮時の匂い

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潮時の匂い    幻想の終わり



いつか自分は何者かになれると思ってた。

自分は他人とは違い大器晩成型だと。


こう思うにはワケがあった。


思い返せば社会人になってから今に至るまでずっと華やかな環境にいれた。


当時日本1と言われていたカリスマサロン在籍時には、沢山の芸能人のお客さんが来店し、Mステ収録直前の有名アイドルのご来店で絶対失敗できない施術を担当したり、俳優さんのドラマの撮影のための無茶な施術をしたり、なかなか経験できない緊張感ある仕事を沢山体験できた。またサロンだけでなくプライベートでも今日にいたるまで親しくさせてもらってる方もいる。


そのサロンを辞め、フリーになって在籍した都内のサロンも芸能人の方が多く来店するお店だった。自分も某ミュージシャンの方を担当したりして、HEY!HEY!HEY!に出演されたのを見てニンマリしてた。


そして、その頃からヤンサンも始まり、多くの著名なクリエイターの方々と知り合うきっかけもできた。


特別な体験を幾重にも重ねたことで、いつか自分も何者かになれる思いに疑いを持つことはなかった。


それに加えて自分がティーンを過ごした90年代はミリオン時代でもあり、CDがバカ売れし、アーティストが成り上がってく姿もよく見てた。


沢山の夢物語が現実の物語になる時代だった。


そんな時代をリアタイで過ごし、自分もきっと何者かになれる夢をみて、それはいつか必ず現実になる!と不思議な自信だけはあった。



2020年


この幻想は急に幕を閉じた。


この幻想はただの勘違いだった…


コロナウィルスは、ぼんやりと心地よい幻想に包まれた生活に突如残酷な現実を突きつけてきた。


突きつけられた残酷な現実は、自分を包んでた心地よい幻想を全て剥ぎ取り、剥き出しの自分と否応なく向き合うハメになった。


コロナによって突きつけられた残酷な現実は、自分の中では2020年に2回あった。4月の緊急事態宣言のとき(この時の状況は6月のブロマガをご参照下さい)と11月だ。


一度目のショックからはなんとか浮上し、5、6、7、8月と売り上げは右肩上がりに成長した。


しかし、9月からは停滞し、10月には下降。

そして11月には売り上げはガクンと落ちた。4月の時に逆もどりのギャグにならない状況になってしまった。


週休4日が二週も続いた。


オレ一人だけがサロンで暇人だった。


なんなのこの状況…

全く理解できなかった。


4月の緊急事態宣言では売り上げは激減し、なんとかしようと勉強するも、現場で思うような結果を出せず、不甲斐ない自分への怒りからドープな集中力を身につけ、少しずつ結果がでてき始めた5月からは浮上したはずなのに……


11月にまさかの急降下。

一体何が原因かわからなくなってしまった。


わからないから原因は全てコロナのせいにした。11月の上旬に都内へ戻ったことでお客さんがそれを察して来なくなってしまったと…


しかしこんな子供騙しで気が紛れることはなく、思い悩む日々は続いた。


この頃からある匂いがするようになっていた。


それは……


潮時の匂いである。