• このエントリーをはてなブックマークに追加
【第378号】姫のキス・裸のハグ
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

【第378号】姫のキス・裸のハグ

2022-02-14 07:00
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    山田玲司のヤングサンデー 第378号 2022/2/14

    姫のキス・裸のハグ

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    【理屈人間】


    「オタクの本質」を乱暴に言うと「こだわりが強い理屈人間」だと思う。


    もちろん「オタク」には様々な側面があるのでこう言い切るのは乱暴だけど「理屈で生きてる」ってのはまあ間違いではないだろう。


    そしてそれは「男という生き物」の本質でもある。


    もちろんそうじゃない男もいるのだけど、男はとにかく「整合性」が好きだし「理論的」「科学的」ってのが偉いと思っていて「気分」や「直感」で判断する人を見下す傾向がある。


    なぜそうなのか?


    おそらくは「不安」なのだと思う。


    無条件に信じられるものもなく、自分自身にも自信が持てない。

    つかまる所がないまま彷徨うのは怖くて「何かしらの理屈」にしがみつくしかない。


    これが宗教の強い環境で育った場合、男であっても「絶対的な神」に身を委ねられる。


    「尊敬できる強い親」がいる場合も同じだろう。


    要するに日本的な「信じられる神や親がいない社会」では「理屈」に頼るしかないのだ。






    今週紹介した漫画「プラネテス」はそういう「宙に浮いた男」の物語だ。

    ddf79061f69cb33f40eabb916ec06bc6abf1e567

    圧倒的な画力と緻密な取材で、この作品は「かなりのリアリティ」を感じさせる本格的SFに見える。


    ところが実際は情緒的で整合性は2の次になっていて面白い。


    月で怪我した仲間を運ぶシーンでは、主人公は仲間を背負って苦しそうに月面を歩くのだけど、考えたら月の重力は地球の6分の1なのであれほど「重い感じ」にはならない気がする。


    でもそれを描いてしまうと、ここで表現するべき「何かを背負って進むと未知の世界と出会う」というテーマが霞んでしまう。


    この作者はかなりの理屈人間に見えるようでいながら「伝える事」を優先しているのだ。




    【正義を超える正義】


    印象的なのは「テロリストの正義」と「主人公の正義」がぶつかり、テロリストに銃を向けた主人公(ハチマキ)がテロリスト(ハキム)を殺そうとするシーンだ。


    格差社会と環境汚染を生み出す「開発」を止めようとテロを起こすハキムと「その先」を目指しつつ「開発が生み出す危険なゴミ(デブリ)」を処理している主人公の対立だ。


    それぞれに納得の行く「正義」があり、この対立を避けるのは難しい。


    そしてその時2人の側にいた女「タナベ」が主人公に唐突に「キス」をする。

     
    この記事は有料です。記事を購読すると、続きをお読みいただけます。
    ニコニコポイントで購入

    続きを読みたい方は、ニコニコポイントで記事を購入できます。

    入会して購読

    この記事は過去記事の為、今入会しても読めません。ニコニコポイントでご購入下さい。

    コメントを書く
    コメントをするにはログインして下さい。