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【ジュニアドクター育成塾】第1回「見る,聞く,まとめる,伝える」【愛媛大学/愛媛新聞社】
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【ジュニアドクター育成塾】第1回「見る,聞く,まとめる,伝える」【愛媛大学/愛媛新聞社】

2017-08-10 09:17

    8月6日に,ジュニアドクター育成塾事業「科学イノベーション挑戦講座」第1回,「見る,聞く,まとめる,伝える」を実施しました。今回の講師は,愛媛新聞社の報道部,白川英樹副部長にお願いしました。

    1 はじめに
    みなさんは『理系人材に新聞!?』とかんがえるかもしれません。どうして,新聞について学ぶ必要があったのでしょうか。そう,学習には目的がなくてはなりません。『なぜそうなるのか』という疑問は,理系分野の一番はじめにある問いです。

    なぜ,生物がこのような進化をしたのか?
    なぜ,この化学反応は起こるのか?
    なぜ,地球や星々が生まれたのか?
    なぜ,かさ袋ロケットは正確にコントロールできないのか?
    なぜ,ロボットを動かすときの命令は決まっているのか?
    なぜ,プログラミング言語はいくつもあるのか?
    なぜ,病気になるのか?
    なぜ,なぜ

    『当たり前』なことなどなにもないのです。昔の人は月が満ち欠けをする理由も,太陽が毎日登ったり沈んだりする理由も知りませんでした。『なぜ』という問いをもち,『なぜ』を解消するために行動したからこそ,みなさんは,それを『当たり前』だと『思っている』のです。『おぼえている』ことと,『理解している』ことには,大きなちがいがあります。

    話をもどしましょう。『なぜ』新聞なのかです。新聞記者は,まったく未知のできごとを取材して,だれにでもわかる言葉で,多くの人に伝えなければなりません。これは,このプログラムに参加する受講生のみなさんとおなじですね。知らないことを学び,理解を深めて,自分自身の力とする。そして,新聞をつくるということは,多くに人にとっての『なぜ』を意識して,『なぜそうなるのか』と興味をもってもらえる文章を書く必要があります。そうです。新聞を作ることは,理系分野にとって,もっとも必要な『なぜ』をかんがえる機会なのです。

    2 ムズカシイをわかりやすいに
    私たち研究者は,新聞社から取材を受ける側ですが,記者の方は物事を理解して,わかりやすくまとめる力に優れていると思います。研究者は,自分の仕事にこだわりがありますので,正確な表現を心がけています。しかし,その正確な表現は,ふつうの人にとって,とてもわかりにくいことがあるのです。

    講師をつとめてくださった白川副部長によると,新聞記者は,そういったむずかしい話を聞いたとき,わからない点は何度も質問して,自分のなかで,だれにでもわかり,かつ興味をもって読めるように,話のイメージを作っていくそうです。

    これは,研究でも,とても重要です。私たち研究者も新しいことをはじめるときは,わからないことだらけです。しかし「わからない」を良くかんがえ,「なに」が「どのように」わからないのかを明確にして,自分のなかでイメージを作り,「どうすれば」わからないことを知ることができるのかをかんがえるのが研究なのです。

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    図1 愛媛新聞社報道部 白川副部長

    図1では,愛媛大学から発表されたプレスリリースをもとに,記事作成について説明していただきました。愛媛大学は世界をリードする3つの研究センターをもっています。今回は地球深部ダイナミクス研究センターがNature誌(とても有名な学術雑誌です)に研究を掲載したプレスリリースについて取り上げていただきました。

    プレスリリース
    超高圧下で安定な新しい水酸化鉄の発見
    ―地球深部の水の循環に関する論文がNatureに掲載―

    愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)の西真之助教、桑山靖弘助教(現東京大学大学院理学系研究科)、土屋旬准教授、土屋卓久教授の研究チームは、地球マントル深部の超高温高圧環境で安定な、鉄・水・酸素からなる新しい結晶構造の水酸化鉄(すいさんかてつ)の存在を世界で初めて明らかにしました。本研究結果は、水酸化鉄は地球マントル深部で脱水分解するという従来の学説を覆(くつがえ)す発見であり、いまだに解明されていない地球深部における水の循環を明らかにするための新たな知見となると期待されます。本研究は国際科学雑誌「Nature」の7月3日版(オンライン版)において発表されます。
    ※カッコ内のルビは大橋が追加しています。

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    参考URL
    https://www.ehime-u.ac.jp/data_relese/data_relese-58867/

    省略しましたが,参考URLでは,もっとくわしい説明もされています。
    従来の学説では予想されていなかった,まったく新しい事実を明らかにしたので,すばらしい成果です。しかし,この文章から,この研究がどうしてすごいのかを読み取るには,地球科学や化学について,ある程度の知識や経験が必要になりそうです。折角すばらしい研究をしたのですから,多くの人にそのすばらしさをわかってほしいですね。そこで,新聞社の出番です。

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    図2 ムズカシイをわかりやすいに

    新聞記者は,専門家にとってわかりやすい科学的な文章を,良くかんがえ,質問してイメージを作って,ふつうの人にとってわかりやすい一般的な文章に書きかえるのです。私たちが毎日さまざまなニュースにふれて,なんとなくわかった気になることができるのは,伝えるプロ,新聞社の働きがあってこそなのです。

    プレスリリースが,どのような記事になったのかは,みなさんの目で確かめてください。

    愛媛新聞社Yahoo!ニュース
    https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170704-04628901-ehime-l38

    プレスリリースから紙面まで,どのように文章が変わるのかを知ることで,伝えるときになにが大事なのかが見えてきます。紙面では中学生でも理解できることを目標にして,わかりやすい表現で,多くの人にニュースを伝えていることを教えていただきました。

    3 伝える力は5W1H
    文章をわかりやすく伝えるためのコツはふたつあります。
    A 短くまとめる
    B 5W1Hで書く

    A 紙面はかぎられていますから,そのなかでできるだけ多くの記事を伝えたいところです。また,長い記事を読むのは大変ですから,内容をかんたんにまとめて「こんな話をするよ」と伝えてから,くわしく書くと読みやすくなります。新聞では,こうした文章をリード文とよぶそうです。120文字くらいで,話のおもしろいところを伝えます。

    B 5W1Hは英語の授業で習ったことがあるかもしれません。
     Why なぜ
     How どうやって
     Who だれが
     What なにを
     When いつ
     Where どこで
     やるのかを文章で示すことで,わかりやすく表現できるという方法です。

    日本語は主語や述語を省いてしまうあいまいな書き方でも通じますが,英語はあいまいな書き方ができないので,英語の文章作成で習う基本です。そして,わかりやすくまとめるコツは,5W1Hで文章を書くことであることを,ご紹介いただきました。

    これは広く理系の分野で必要とされるかんがえかたです。とくに研究を行うときには重要です。

     目的設定 なぜやるのか(Why)
     実験計画 どうやってやるのか(How)
     実験観察 だれが,なにを,いつ,どこでやるのか(Who,What,When,Where)
     結果   だれが,いつ,どこで,どんな結果を,どうやって得たのか(Who,When,Where,What,How)
     考察   なぜその結果がえられたのか,目的は達成されたのか(Why)

    研究はつねに5W1Hのくり返しです。

    4 リード文を作ろう!
    話を聞いただけでは,ピンときません。理系人材として重要なことは手を動かすことです。頭のなかで確かなことも実際にやってみると,不確かであることは,選抜試験でのかさ袋ロケットの開発でわかっています。まずは,自分でやってみることが大事です。

    受講生は白川副部長の指導にしたがって,4人1班ごとに架空の記事をつかって120文字のリード文をつくりました。リード文を自分で作れば良いのではなく,班で話し合いより良いリード文を作るべく活動を行いました。これまで経験したことがない活動でしたので,受講生はかなり苦戦しながら,すべての班がリード文を作成しました。作成したリード文は,全部の班が発表して,白川副部長からコメントをいただきました。

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    図3 リード文の作成(自分で作り,話し合う)

    5 他己紹介をしよう!
    リード文のつくり方を学びましたので,つぎは学んだことを活かしましょう。そのためには,実際にインタビューをするのが一番です。全員がはじめて顔を合わせる機会でしたので,インタビューは他己紹介としました。他己紹介とは,インタビューした相手の紹介記事を書くものです。2人1組となって,相手についてインタビューして,4人1班ごとに紙面で紹介記事を作成しました。

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    図4 相手をインタビューして紹介記事を書こう

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    図5 紙面作成

    他己紹介記事を1人1つ書き,リード文と見出しを作る必要があります。話し合って役割を分担して活動する必要があります。インタビューと紙面作りの時間は,1時間近くありましたが,残念ながら完成した班は半分程度でした。残り時間をかんがえながら,作業をする練習をしていきましょう。

    6 発表しよう
    終了時間で作業が終わったところまでで,各班の紙面を発表して,白川副部長にコメントをいただきました。ジュニアドクター育成塾は,理系人材育成事業ですので,紙面としてはそうした部分を強く打ち出すことが,伝える力としては重要です。インタビュー記事でも,理系分野での活躍を目指す人として紹介記事が書けたでしょうか。また,紙面として伝えるときは,文字の大きさや紙面全体のデザインも大事です。小さな文字は遠くからは見えません。伝える力をかんがえるときは,だれに,どうやって,伝えるかも重要ですね。
    今回の紙面は個人情報が含まれますので,残念ながらくわしくご紹介することはできませんが,次回の紙面からは公開を予定しています。

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    図6 白川副部長からコメントをいただきました

    7 さいごに
    愛媛新聞社様にご協力いただいた,第1回の内容について紹介しました。
    新聞と理系分野。関係ないようでいて,大きな関係があることがわかったでしょうか。
    これは,なぜ学校ではいろいろな教科を学ぶのかとも関係しています。あなたの能力を,うまくつかうためには,ひとつだけではなく,いろいろな力が必要なのです。

    さまざまなことにたいして,あなたの興味があることと,どのように関係しているのかをかんがえることが大事です。

    おもしろいことと,つまらないことは,コインの表と裏にすぎません。おもしろいと思えばおもしろいし,つまらないと思えばつまらないのです。あなたの好きなこと,たのしいことは,すべての物事と関係していると気づいたとき,あなたはあなたの力をうまくつかえるようになるのです。

    だからこそ,このプログラムでは,広い分野について学んでいきます。それぞれが,あなたの興味とどうつながっているのかをかんがえることも,ひとつのたのしみかたですよ。

    次回は,8月20日に愛媛大学で実施されます。
    教育学部理科教育講座,大橋淳史准教授が担当し「食品の安全を守る科学技術」についてまなびます。
    事前学習動画を公開していますので,参考にしてください。


    ネット配信はVR配信で行っています。実際に参加しているような臨場感を得られるのではと期待しています。

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