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2013年5月第1週号
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2013年5月第1週号

2013-04-29 10:49
    めるまがアゴラちゃんねる、第040号をお届けします。
    発行が遅れまして、大変申し訳ございません。

    コンテンツ

    ・ゲーム産業の興亡(50)
    40年前のパソコン黎明期に見る、パラダイムが変化する瞬間

    ・マネーの知恵 by 
    個人向け金融サービスについて考える 「セールス」と「コンサルティング」の違い


    アゴラは一般からも広く投稿を募集しています。多くの一般投稿者が、毎日のように原稿を送ってきています。掲載される原稿も多くなってきました。当サイト掲載後なら、ご自身のブログなどとの二重投稿もかまいません。投稿希望の方は、テキストファイルを添付し、システム管理者まで電子メールでお送りください。ユニークで鋭い視点の原稿をお待ちしています http://bit.ly/za3N4I

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    特別寄稿:

    新 清士
    ゲーム・ジャーナリスト

    ゲーム産業の興亡(50)
    40年前のパソコン黎明期に見る、パラダイムが変化する瞬間

    任天堂やソニー・コンピュータエンタテインメントの苦境の理由は、今の時代のパラダイムの変化についていけないのが一つの理由ではないかと考えている。
    イノベーションは何をもってイノベーションと呼ぶのかは、あまりにも広義に使えるために難しい点がある。ただ、大きなトレンドとして、ある特定の時期に革新的な事象が起こり、その後の未来に対して大きな影響を与え続ける事象は確かに存在する。私は、今の時代は、家庭用ゲーム機のパラダイム変化が進み始めている時代だと考えている。

    ■先進的なユーザーが牽引するイノベーション

    決定的な変化が起きる時期には、それまで常識とされていたルールが突然変わる。我々は、パソコンについては、今では決められたハードウェア構成に、決められたOS、それから、ソフトウェアを選択していくというのが当たり前だと考えている。しかし、それは今の時代の常識に過ぎない。

    先進的なイノベーションや、先進的な発想を持つ人々が登場して、自分の求める形の製品をカスタマイズする時代が来ると、決められたルールが変わる。その時期には、膨大な量の多様性を一時的に生みだす。しかし、一方で、ディファクトスタンダードが決まると、急激に収れんしていく。

    日本のホビープログラマの「空白の10年」について説明を進めているが、それは多くのホビーユーザーが引っ張ってきたカスタマイズカルチャーの消失が大きいとはすでに述べた。言い換えるならば、日本国内の家庭用ゲーム機が、ハードウェアの開発環境を一般に開放しないという状況が常識というパラダイムが一般化した影響が大きい。

    ■1974年のAlteir8800の登場が変えた常識の決定的な変化

    すでに40年あまり前のことではあるが、一例として、パラダイムが変換する瞬間の事例を紹介しておきたい。これは現在の我々も大きなヒントになるはずだ。このときの変化は、パーソナルコンピュータは「組み立てる物」という時代の常識が、「ソフトウェア中心」に変わる瞬間のことだ。

    パーソナルコンピュータの特にハードウェアの技術発展を引っ張ってきたのは、1970年代から、1980年代までの、アメリカの西海岸を中心としたホビーのハッカーたちが牽引したイノベーションによるものだ。そして、1990年代のIBMのDOS/V 互換機の登場、そして、マイクロソフトがWindowsを標準化するまで続く。それ以降は、完全にソフトウェア中心のイノベーションの時代に転換する。

    1970年代中盤の人たちにとっては、パーソナルコンピュータとは、直接自分でハードウェアを組み立てていくことが、当たり前の時代だった。1974年に米MITSの「Alteir(オルテア)8800」はコンピュータのパーソナルキットとして、世界を大きく変えた存在だ。創業者のエド・ロバーズは、当時、インテルが開発したばかりのマイクロプロセッサ「8080」が登場したばかりのときに、これを利用したパーソナルコンピュータを開発できると考えた。

    ■切実に求められていた安価なコンピュータ

    コンピュータは大学で閉じた大型のものであり、しかも、何万ドルもするため、大学に通うことができる一部のユーザー以外は、手を出すことができる存在ではなかった。しかし、ロバーズは貧弱な性能でもあってもホビーユーザー向けのハードウェアを販売することが可能と考えた。チップの8080は350ドルもしたが、交渉の末に75ドルにまで引き下げることに成功した。一方で、ホビーとしてコンピュータのハードウェアを触りたいと思うユーザーなど存在するとは考えられなかった。

    価格は400〜500ドルと当時としては破格の値段設定が行われたが、マシン性能は、お世辞にも豪華な物とは言えなかった。モニターもなければ、音声も付いてない。いくつものボタンが付いている2進数のプログラムを、スイッチを押して簡単なプログラムを入力すると、二個の赤いLEDランプが光るだけの代物だった。送られてくるのはパーツだけで、基本的に自分で複雑な組み立て作業を行わなければならなかった。(比較として、日本では74年前後の1円のドルレートは約300円、15万円。物価レートも現在と比べると1円の価値は現在とは大きく違うために、日本人には簡単に手にできる物ではなかった)

    ところが、1974年に発売されていた雑誌『ポピュラー・エレクトロニクス』に、そのプロトタイプの写真が掲載されると、とんでもないことが起きた。注文が「組み立てキット」にも関わらず殺到したのだ。3週間で4000台もの注文が来たため、400台程度しか売れないと想定したこともあり、生産が追いつかない。これはアメリカ国内中にコンピュータを「組み立てたい」と考えている人たちがたくさん存在している証拠だった。

    後に、メモリを4Kバイト(!)に拡張するキットが発売された後、マイクロソフトを作ることになるビル・ゲイツとポール・アレンがコンピュータプログラム言語のBASIC言語「Altair BASIC」を利用することができるようになったために、高級言語も使うことができるようになった。そして、一斉に組み立てる型のコンピュータを作る小さな企業が次々に登場する。

    ■組み立てられないコンピュータは無意味と言われた「アップルⅠ」

    しかし、その常識的なパラダイムはすぐに変化する。1976年のアップルコンピュータが発売した「Apple I」の登場だ。これはスティーブ・ジョブスとスティーブ・ウォズニアックが自宅のガレージを利用して開発した世界初のパーソナルコンピュータといえるものだった。

    Apple 1のこれまでのパーソナルコンピュータと違っているのは、最初から、コンピュータの回路基板が完成した状態で販売されたことだ。購入したユーザーは組み立てる作業は必要だったが、それでも、細かいチップなどの取り付け作業を行う必要性はなく、今までより、はるかに組み立てやすいものだった。木製の筐体を持ち、キーボードを搭載していた。テレビ受像機に接続するポートを所有しており、価格は実質価格500ドルだった。

    ただし、当時はおもしろいことに、ハッカーたちを熱狂させなかった。それは、AppleⅠの量産モデルは、組み立てられた形のみで売り出されたためだ。「自分で組み立てられないコンピュータは買ってもしかたない」というのが、当時のハッカーたちの基本的な考えだったからだ。そのため、生産したモデルは200台だったにも関わらず、実際に売れたのは170台に留まった。

    しかし、コンピュータは、最初から組み立てられて出荷される物が常識へと変わる時代へとまもなく変わる。特に、1977年に、さらに洗練された完成形で発売された「アップルⅡ」が大ヒットしたことで、ソフトウェアの時代へと変化が急激に進み始める。「組み立て時代」のパラダイムの変化が終わったよい例だと思う。



    □ご意見、ご質問をお送り下さい。すべてのご質問に答えることはできないかもしれませんが、できる範囲でメルマガの中でお答えしていきたいと思っています。連絡先は、sakugetu@gmail.com です。「新清士オフィシャルブログ」http://blog.livedoor.jp/kiyoshi_shin/ も、ご参照いただければ幸いです。

    新 清士(しん きよし)
    ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
    Twitter ID: kiyoshi_shin



    ・マネーの知恵 by 伊藤英佑

    個人向け金融サービスについて考える 「セールス」と「コンサルティング」の違い

    不定期で個人投資の考え方について連載します。公認会計士・税理士の伊藤英佑と申します。今回は個人向け金融サービスについて考えてみたいと思います。

    金融機関が顧客に対してフェイス・トゥ・フェイスで提供する「サービス」には、大きく分けて、「セールス」と「コンサルティング」の2つのスタンスがあります。
    ここで言う個人向け金融サービスにおける「セールス」と「コンサルティング」の違いは、その姿勢と収益をどこで取るか(金融機関にとってのゴール)の違いです。

    例えば、現在のマーケット環境であれば、顧客は、下記のような点が気になっているでしょう。

    ・今の日本の株式市場はプチバブルか?いつまでダンスは続くのか?
    ・為替はさらに円安が進むのか?
    ・現在の日経平均はどこまで期待が織り込まれていてどの水準が現実的か?為替水準と妥当な日経平均のラインはどうか?
    ・まだ割安感のあるセクターは残っているか?
    ・ここまで下がった10年国債の長期金利はどうなるか?
    ・J-REITはバブルか?
    ・トレンドのピークと歯車の逆回転がはじまるとしたら考えられる要因は何か?
    ・政局の波乱要因はあるか?
    ・参院選までは今の調子?消費税増税が決まるとどう反応する?
    ・国内要因ではなく海外要因でのショックはあるか?
    (あるいは、投資初心者であれば、もう少しシンプルに、これからまだ上がるか下がるかという結論を、「まだ上がりそうな銘柄を探している」といったことが最も気になるでしょうから、これに何らかの固有名詞を提供出来ればOKなのかもしれません。)

    仕事でもって金融機関で働いている人であれば、これらについて何らかの見解を持っているはずです。
    現場では、顧客が納得し、顧客のレベルに応じた、信頼され優れていると思ってもらえる洞察を提供することが重要です。
    鼻くそをほじりながら日経の上っ面を読んでいることを言えば尊敬してくれる顧客から、あらゆる意見と判断材料を集めた上で意思決定をどうすべきかを提案する真剣勝負が必要な顧客まで、顧客の属性はさまざまだと思いますが、顧客に応じて、顧客の金融リテラシー、性格、スタンス、価値観、好みや望みといった要素を総合的に捉えることが必要です。

    ここまでは、セールスもコンサルティングも大きくは変わらないのではないかと思っています。次回も個人投資の考え方を紹介していきます。ご愛読いただければ幸いです。

    伊藤会計事務所
    公認会計士・税理士
    伊藤英佑
    個人ブログ
    マネーの知恵(仮) http://money-learn.seesaa.net/
    マネーのネタ帳 http://moneyneta.blogspot.jp/
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