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2013年5月第5週号
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2013年5月第5週号

2013-05-27 10:07
    まるまがアゴラちゃんねる、第044号をお届けします。
    発行が遅れまして、大変申し訳ございません。

    コンテンツ

    ・アゴラチャンネルのご報告
    5月24日放送:4Kテレビのシナリオ ホントに売れるのか 西和彦 × 松田俊介


    ・ゲーム産業の興亡(54)
    【特別篇】東南アジアのゲーム市場の将来成長性をどうみるか


    アゴラは一般からも広く投稿を募集しています。多くの一般投稿者が、毎日のように原稿を送ってきています。掲載される原稿も多くなってきました。当サイト掲載後なら、ご自身のブログなどとの二重投稿もかまいません。投稿希望の方は、テキストファイルを添付し、システム管理者まで電子メールでお送りください。ユニークで鋭い視点の原稿をお待ちしています http://bit.ly/za3N4I

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    アゴラチャンネルのご報告
    5月24日放送:4Kテレビのシナリオ ホントに売れるのか 西和彦 × 松田俊介

    毎週金曜日9時からお届けする言論プラットホーム・アゴラの映像コンテンツ「アゴラチャンネル」。5月24日は西和彦氏と元松下電器産業(現パナソニック)技監の松田俊介氏の対談「4Kテレビのシナリオ ホントに売れるのか」という対談を放送しました。

    西和彦氏はアスキーの創業など、日本のIT産業の草分けの一人として知られ、現在は尚美学園大学大学院教授などを務めています。一方、松田俊介氏は松下電気の情報技術の開発を主導し、IT、映像などの技術開発を担った技術者。2人の対談には、技術好きの人々が視聴に集まり、同時視聴は800人、事後視聴は800人と盛り上がりました。

    ■世界の流れは4K

    4Kテレビとは、フルハイビジョンの4倍ある、高画質化を追求したテレビ。横(水平画素)がこれまで主流の1000〜2000から、4000になりました。1000はKで表されるため、4Kと呼ばれています。画質がきれいに、そして詳細になり、大画面化に対応することが期待されています。

    冒頭、西氏が「テレビの歴史は高画質化の時代。4Kテレビの時代は来ますよね」と発言しました。松田氏はそれに同意。世界の映像の流行を決める全米放送者協会の会議・見本市に今年4月に松田氏が出席したところ、展示品は4Kばかり。ここ数年の流行だった3Dの展示は一服していました。

    松田氏は「放送者、番組制作者、メーカー、ユーザー全員の関心が4Kに向かっています。これは変わらないでしょう」と述べましたた。さらにカメラメーカーのキヤノンなど、放送では主役でなかった企業の展示が大きく、意気込みを感じられます。「新しい使い方が模索され始めている」と言います。

    ■新しい世界市場への期待

    ただしビジネスとして、4Kテレビは有望菜商品なのでしょうか。「最近の大きな動きは、中国のメーカーが、1万元約15万円で60インチの4Kテレビを売り出したこと。最近、力のなくなった日本メーカーは大丈夫なのですか」と西氏は述べました。松田氏は、「価格は下がるでしょうが、今、インドという新しい市場が開こうとしています。豊かになると高画質のテレビが売れます。世界での需要が大きく増えるので、それほど悲観していません」と述べました。

    そしてテレビの使い方も変わる可能性があると言います。例えばサッカー場で全画面を移し、一人の選手にクローズアップを、視聴者が行います。こうしたことも高画質の4Kでは可能だ。「高画質化による使い方の工夫はいろいろできるはず」と松田氏は述べました。

    「値段がこなれたら、消費者に受け入れられ、売れるはず。テレビが先行して、放送局やコンテンツの製造者が技術を追いかけることが続いた。4Kの新しい流れもそんな形になるのではないか」。西氏は4Kの未来予想をこうまとめました。

    (アゴラ編集部)



    特別寄稿:

    新 清士
    ゲーム・ジャーナリスト

    ゲーム産業の興亡(54)【特別篇】東南アジアのゲーム市場の将来成長性をどうみるか

    5月21日から23日までシンガポールで行われた「カジュアルコネクトアジア」というBtoBイベントに調査取材に参加してきた。今週も特別篇として成長著しい、東南アジア市場が、日本企業にとって、どの程度の可能性があるのかを紹介する。

    ■東南アジアの中心はシンガポールだが単体市場は小さい

    東南アジア地域にとっての中心地はシンガポールだ。英語圏でもあり、多くの企業の本社や支店が置かれ、また、言うまでもなく金融の中心地として、東南アジア地域全体のビジネスの中心地であるためだ。国民一人当たりのGDPも日本と変わらず、先進国並みの水準を持っている。しかし、シンガポールの人口は400万人と少ない。そのため、BtoCの市場として考えた場合の成長に限界が存在している。これまでも、ソニー・コンピュータエンタテインメントが積極的に進出しているが大きな成果を出せていない。

    そのため、ゲーム産業にとっても、市場規模は小さい。国の積極的な誘致政策によって、米エレクトロニック・アーツ、仏UBIソフト、日本ではコーエーテクモがスタジオを構えているが、開発拠点でも欧米圏への家庭用ゲーム機向けゲームの販売を前提としたアウトソース行う場所としての側面が強かった。

    しかし、家庭用ゲーム機市場の世界的な縮小の影響はシンガポールにも及んでいる。CGのアウトソースが中心であった米ルーカスアーツが撤退。CG自体のアウトソースは、ASEANでも、より人件費の低いマレーシアなどの他の地域へと流出が進み始めている。

    ただ、ゲーム産業にとって、この数年、東南アジア地域が注目されているのは、周辺のASEAN地域での携帯電話の普及による急激な新しいゲーム市場の登場だ。特に人口2億人で、若い年齢の世代が中心を占めるインドネシアへの注目は高く、日本企業でもスクウェア・エニックスが進出するなど、将来的な可能性に対して高い可能性が期待されている。

    ただし、東南アジア地域全体に言えることだが、ビジネスとして成立するのかどうかは、まだ容易でない状態にある。一人当たりGDCは、ASEAN全体の平均で3500ドル程度に過ぎないためだ。

    (1)アンドロイド端末の普及は進んでいるが、まだまだ通信環境が不安定

    東南アジアでは、100ドル前後にアンドロイド端末の値段が下がってきたことによって、比較的富裕層は購入しやすい状況になってきている。しかし、まだユーザーが中心的に利用しているのは、フィーチャーフォンが少なくなく、スマートフォンへの移行が進んでいるものの、まだしばらくの時間がかかると考えられる。

    また、同時に各国ごとに通信環境に差が存在しており、ジャカルタといった大都市圏では3G回線の普及が進みつつあるが、地方都市に行くとまだまだ音声通話のみの2G回線の利用者の方が圧倒的に多い。そのため、ゲームを遊ぶ習慣は広がってきて新しいユーザーを確実煮えている。ただ、誰もがゲームを遊べる安定的な環境にまではなっていない。

    そのため、通信環境が安定し始めている地域では広がりつつある「LINE」といったスマートフォンを前提としたテキストメッセンジャーや無料通話ソフトウェアはまだまだ広がりを見せていない。

    (2)東南アジアへの期待値は高いが、先進国ほどの収益性は現在望むことが難しい

    「ラストペイメント」という言葉が、今回何度も繰り返されていたのが印象的だった。これは、実際の決済方法がまだ確立されていないために、収益を生みだしにくい状況を示している。

    例えばインドネシアの場合には、クレジットカードの所有者が少なく、5%前後のようだ。そのため、世界的に、ゲーム開始直後は無料でゲームを遊べるが、途中からアイテム課金方式になることが基本の現在のソーシャルゲームを遊ぶユーザーが、簡単にお金を払う方法がない。「スクラッチカード」と呼ばれるプリペイド―カードを通じて販売されることが一般だ。

    そのため、例えば、インドネシアを中心にマレーシア、バングラディッシュ、ミャンマーなどをカバーするローカルなSNS「mig33」の場合にはイベントを開催して直接ユーザーに向けてスクラッチカードを販売して課金することが少なくない。同社の利益は5割がゲームから得ているが、9割がスクラッチカードを通じた課金の方法による。

    しかし、ユーザーへの直接販売によってでしか、売上を得にくいために爆発的な広がりを生み出せていないのが実情だ。そのため、シンガポールをのぞくと、一人当たりのゲームへの課金金額が小さいため収益が容易に出せるという環境にない。

    ただし、現地の携帯キャリア決済の方法の模索が始まっており、これらが今後数年以内には確立される可能性がある。それらを狙った新しいプラットフォームも登場し始めている。

    ■抱えている3つの課題、一方で集まる日本企業への関心

    東南アジア地域に、潜在的な可能性があることは誰もが認めるところだが、まだ、「スマートフォンといったハードウェアの普及」「通信環境の安定性」「決済方法の確立」といった課題を抱えているため、本格的に大きな市場を形成するには、まだ、数年かかると考えられる。難しいのは、今出るべきか、もう少し待つべきなのかというのが読み切れない点だ。

    期間中に、昨年、進出したDeNAの講演が行われたが現地企業から高い注目を受けていた。一方で、昨年大きく商談ブースを構えていたグリーは、商談ブースも講演もなく、事実上の撤退状態にあると思われる。このあたりに、市場の潜在的な可能性がある一方で、難しさも示していると強く感じられる部分があった。

    ※調査取材予算はJETRO福岡及び福岡市の予算による


    □ご意見、ご質問をお送り下さい。すべてのご質問に答えることはできないかもしれませんが、できる範囲でメルマガの中でお答えしていきたいと思っています。連絡先は、sakugetu@gmail.com です。「新清士オフィシャルブログ」http://blog.livedoor.jp/kiyoshi_shin/ も、ご参照いただければ幸いです。

    新 清士(しん きよし)
    ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
    Twitter ID: kiyoshi_shin
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