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  • 2014年12月第2週号

    2014-12-09 11:21
    めるまがアゴラちゃんねる、第120号をお届けします。
    配信が遅れまして大変申し訳ございません。

    コンテンツ

    ・今週の池田信夫
     アゴラ研究所所長、池田信夫のエントリーでアクセスが多かった記事、アゴラ・チャンネルの動画を紹介します。

    ・ゲーム産業の興亡(132)
    地獄を見たDeNAのフィーチャーフォンからスマホへの転換
    新清士(ゲームジャーナリスト)


    アゴラは一般からも広く投稿を募集しています。多くの一般投稿者が、毎日のように原稿を送ってきています。掲載される原稿も多くなってきました。当サイト掲載後なら、ご自身のブログなどとの二重投稿もかまいません。投稿希望の方は、テキストファイルを添付し、システム管理者まで電子メールでお送りください。ユニークで鋭い視点の原稿をお待ちしています http://bit.ly/za3N4I

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    今週の池田信夫

    NYタイムズの敗北宣言
    http://agora-web.jp/archives/1623054.html
    マーティン、
    久しぶりに、君の記事を熟読したよ。君は私のところに2度やって来て日本経済について話し、われわれの意見はほぼ一致した。君の日本語は見事なので、この手紙も日本語で書く。英語の手紙は前に書いたけど、読んでくれたかな。

    朝日新聞は自分の仕掛けた罠にはまった
    http://agora-web.jp/archives/1612853.html
    一時は朝日新聞の誤報騒動に茫然として言葉を失った韓国メディアも、ようやく反撃に転じている。ハンギョレ新聞は安倍首相の「慰安婦の女性たちを強制連行したのではないという事実を(朝日)新聞がさらに積極的に世に知らせる必要がある」という発言を批判し、「吉田証言が...

    朝日新聞のねらいは「慰安婦」ではなく「国家賠償」だった
    http://agora-web.jp/archives/1611966.html
    朝日新聞の誤報事件を解明する上で重要なのは、なぜ彼らがこんなマイナーな数十人の(真偽も疑わしい)紛争に30年以上もこだわってきたのかという疑問だ。この口火を切ったのが、清田治史記者の書いた1982年9月の記事だ。朝鮮人男性の抵抗に備えるため、完全武装の日本兵十人...

    「そこまで言って委員会」の放射能デマ
    http://agora-web.jp/archives/1622742.html
    きのうの記事に反響が大きいので、経緯を補足しておく。チェルノブイリ事故については、ちょうど先週のGEPRで紹介したので、読んでほしい。

    「この道しかない」ってどんな道?
    http://agora-web.jp/archives/1623118.html
    衆議院選挙が公示されました。これは「アベノミクス解散」というのだそうです。安倍首相は「景気回復、この道しかない」といっていますが、意味がよくわからない。郵政解散のときみたいに、国会でアベノミクスが否決されたのならわかりますが、それを今やってるのに解散して...

    世代間格差を是正する選挙制度改革が必要だ
    http://agora-web.jp/archives/1621791.html
    きょうのアゴラこども版に書いたのはわかりきった話だが、問題はこんな当たり前のことを主張する政党が一つもないことだ。特に三党合意で増税を決めた民主党まで増税先送りに賛成したのは無責任だが、現在の有権者の構成からはやむをえない。高齢者に迎合しないと、選挙に勝...

    アベノミクスの終焉
    http://agora-web.jp/archives/1621033.html
    今年の7?9月期のGDP速報値が、予想以上に悪かった。これを増税の影響だという人が多いが、それは誤りである。増税の影響は一過性なので、右の図(朝日新聞)の比較でもわかる通り、半年たつとGDPはプラスに戻るのが普通だ。増税率はほとんど同じなので、この差は消費税以外...

    原油暴落と闘う日銀
    http://agora-web.jp/archives/1622561.html
    原油価格が暴落している。今夜10時の段階で1バレル66ドルと、半年でピークから4割下がった。これが10月の消費者物価指数(総合・コアCPIとも)の前年比上昇率が0.9%に下がった最大の原因だが、このときはまだ90ドル台だから、今後もCPIはさらに下がるだろう。


    池田信夫の【アゴラVlog】総選挙の争点から消えた「戦後レジーム」
    http://youtu.be/yFtMVi29D_I
    池田信夫の「アゴラ読書塾」講義より
    安倍首相が語る戦後レジームからの脱却ですが、驚くべきことに今回の総選挙の自民党マニフェストには自身あれほどこだわった集団的自衛権については全く触れられていません。戦後レジームの発端である「吉田茂」を描いた、井上寿一著「吉田茂と昭和史」をテキストに、「吉田ドクトリン」から連綿と続く現在日本の政治のわかりにくさを考えます。


    特別寄稿:新清士(ゲームジャーナリスト)

    ゲーム産業の興亡(132)
    地獄を見たDeNAのフィーチャーフォンからスマホへの転換

     4日に、コーエーテクモの研究教育機関向けの研究費援助を行う科学技術融合財団(HOST)の20周年記念講演会「ゲームの未来」が行われた。4名の講演者の一人が、ディー・エヌ・エー(DeNA)の取締役・ファウンダーの南場智子氏だった。「調子に乗っていると、スマホで地獄を見た」と語る内容は興味深いものだった。

    ■信じられない成功「怪盗ロワイヤル」
     09年にフィーチャーフォン向けにリリースされた「怪盗ロワイヤル」は、大ヒットしたが、その開発の背景には、ライバルであったグリーの「釣りスタ」のヒットがあったようだ。当時、フェイスブックで、米ジンガの「ファームヴィレ」などブラウザを使ったゲームがヒットしており、それらのゲームを研究したという。「ゲーム開発経験ゼロで、ゲームを遊んだことがなく、社内で腐っていたスタッフにゲームを作らせてみたのが、ブラウザゲームでの成功になった」
     当時は「信じられない成功、桁違いの収益一体何なんだろうと思った」(南場氏)という。しかし、このときの大成功が「成功の呪縛に後々に苦しめられることになる」(南場氏)ともいう。
     09年には、内製タイトルが成功している間に他社タイトルの参入も可能にするオープン化に踏み切った。ただ、実施すると、収益率が低下する可能性があり、アメリカの投資家に向けて、IR活動を行うと「まさかオープン化しないですよね」といわれたり、「グリーはオープン化しない」という噂が流れていたという。ただ、社内の開発リソースには限界があり、様々なタイトルの登場を促しユーザーニーズを登場させることを意図してオープン化をはかった。
     結果的に、それがDeNAの大きな飛躍を生みだすことになり、通信パケットのシェア2割が、DeNAが展開するサービスのモバゲーが占めるという状態になった時期もあった「カードゲームバトル」と呼ばれる、現在の日本のソーシャルゲームでは一般化した分野が登場したのも、その肯定的な結果だった。
    「オープン化をする決断をしてよかったなあ」(南場氏)

    ■フィーチャーフォンの成功体験がネイティブへの移行を阻害した
     ところが、その後、フィーチャーフォンの市場は急速に、スマートフォンへと移行が始まる。12年2月にはガンホー・オンライン・エンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ」のiPhone版が登場してヒットが始まる。そうした動きに、DeNAは適応することができなかった。
    「エンジニアは優秀で、その優秀さがよくない」(南場氏)
     同じゲームシステムを他のアニメ等のコンテンツに切り替えるといった)側を変えたりカードの絵柄を豪華にしたりといった表現を豊かにするのは得意で、また、そうして開発したゲームが当時は中途半端にヒットが出てしまったという。そのため、「まだスマホ向けのネイティブ(専用)ではないのではないか、と社内的にはなってしまい、ブラウザ型のゲームの開発が中心になってしまう。根性のある会社は、成功の呪縛に長いこと直面する」(南場氏)
     社内では、ネイティブ向けの技術を勉強すればいいじゃないか、ということになる。ところが、フレームレートの調整、メモリ解放など、細かい技術蓄積をやっていかないといけない。そういうノウハウはどこにも書かれておらず、蓄積には一つ一つ手こずるという状態が起きるようになった。
     ネイティブの開発チームからは、もっと開発スタッフが必要という要求が来ていたという。ところが守安功氏を含めた経営トップは、「もっとフットワークを軽くやろうよ」とその要求に対して否定的な立場を取っていたという。「怪盗ロワイヤル」の開発チームはわずか5人で、数週間の開発で大きく成功した。なぜ、同じことができないのかと、経営陣は考えてしまっていたのだ。

    ■基礎技術と感覚の積み上げによって生みだされた成功
     DeNAにとって、初の本格的なネイティブアプリの成功タイトルは、9月にリリースされた「ファイナルファンタジー レコードキーパー」(iPhone、アンドロイド用)になる。ファイナルファンタジーのIPのライセンスをDeNAが借りて、完全に独自開発を行ったものだ。現在は、アップルのAppStoreランキングで16位前後をつけている。リリースから1カ月で登録ユーザーは300万人を超え、月商も10億円に達している初の本格的なヒットタイトルだ。
     このヒットが出るまでは、DeNAの売上はじりじりと減少して苦戦が続いていた。フィーチャーフォン市場の中で苦しい競争を強いられていた。
     この開発タイトルを担当した執行役員は、経営会議で「怪盗ロワイヤルの成功は、5人で作ったからですか? 短期間で開発したからですか? あれ、おもしろかったからですよね」と主張したという。ユーザーにとっておもしろい、気持ちいいと感じる物が変わっている。それに合わせたゲームを作らなければならないという。結局、経営会議にも出てこなくなり、社内で反逆者的な存在になっていったという。

     レコードキーパーのおもしろさを「剣を振って、気持ちよいキャラクターの動き」を実現するために力を入れたのだという。そのために、技術の蓄積を行ったという。スマホ向けの「忍者ロワイヤル」で失敗し、「三国志ロワイヤル」をリリースし、もう1タイトル開発して、細かい技術蓄積を行ってやっと実現できたものだという。運用はブラウザ時代の積み上げがあったので、
     DeNAの経営陣は、ユーザーがおもしろいと感じるか、気持ちよいと感じるかの部分の理解は弱いと、執行役員は述べたという。
     最近、社内で行った、業績評価の表彰式で、関わった全スタッフが、壇上に集まったのだそうだが、「こんなにたくさんのスタッフが関わっていたのかと驚いた」(南場氏)

     南場氏は、フィーチャーフォン時代のゲームの「ボタンを押す」がまだ中心で、スマホのタッチパネルを活かした操作システムである「引っ張る」といった表現には「ついていけていない」と述べた。「表現を豊かにした大本営発表」だったと。
     まとめとして、「モバイルゲームの未来は、3年語はこうなっているという人の話は信じない、わかっているはずがない」(南場氏)と述べた。「次の波に乗り遅れるのではと、ゆっくり正月気分を味わえる気がしない。ただ、あのときは見誤ったよねと、言えるようになった」と。




    □ご意見、ご質問をお送り下さい。すべてのご質問に答えることはできないかもしれませんが、できる範囲でメルマガの中でお答えしていきたいと思っています。連絡先は、sakugetu@gmail.com です。「新清士オフィシャルブログ」http://blog.livedoor.jp/kiyoshi_shin/ も、ご参照いただければ幸いです。

    新 清士(しん きよし)
    ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
    Twitter ID: kiyoshi_shin

  • 2014年12月第1週

    2014-12-08 12:04
    めるまがアゴラちゃんねる、第119号をお届けします。
    配信が遅れまして大変申し訳ございません。


    コンテンツ

    ・今週の池田信夫
     アゴラ研究所所長、池田信夫のエントリーでアクセスが多かった記事、アゴラ・チャンネルの動画を紹介します。

    ・ゲーム産業の興亡(131)
    Oculus Riftでも強くなると予測できるF2Pモデル
    新清士(ゲームジャーナリスト)


    アゴラは一般からも広く投稿を募集しています。多くの一般投稿者が、毎日のように原稿を送ってきています。掲載される原稿も多くなってきました。当サイト掲載後なら、ご自身のブログなどとの二重投稿もかまいません。投稿希望の方は、テキストファイルを添付し、システム管理者まで電子メールでお送りください。ユニークで鋭い視点の原稿をお待ちしています http://bit.ly/za3N4I

    アカシックライブラリー(旧アゴラブックス)は、あなたの原稿を電子書籍にして販売します。同時にペーパーバックとしてAmazon.comサイト上で紙の本も販売可能。自分の原稿がアマゾンでISBN付きの本になる! http://bit.ly/yaR5PK 自分の原稿を本にしてみませんか?


    今週の池田信夫

    「この道しかない」ってどんな道?
    http://agora-web.jp/archives/1623118.html
    衆議院選挙が公示されました。これは「アベノミクス解散」というのだそうです。安倍首相は「景気回復、この道しかない」といっていますが、意味がよくわからない。郵政解散のときみたいに、国会でアベノミクスが否決されたのならわかりますが、それを今やってるのに解散して...

    大英帝国を支えた「19世紀のインターネット」 - 『海洋帝国興隆史』
    http://agora-web.jp/archives/1622894.html
    資本主義は、イギリスの生んだ特殊なシステムである。大英帝国がなければグローバル資本主義は生まれず、たかだかヨーロッパのローカルな経済システムに終わっただろう。ウォーラーステインも指摘したように、資本主義は生まれたときからグローバルであり、そうでないと存続しえないのだ。

    原油暴落と闘う日銀
    http://agora-web.jp/archives/1622561.html
    原油価格が暴落している。今夜10時の段階で1バレル66ドルと、半年でピークから4割下がった。これが10月の消費者物価指数(総合・コアCPIとも)の前年比上昇率が0.9%に下がった最大の原因だが、このときはまだ90ドル台だから、今後もCPIはさらに下がるだろう。

    世代間戦争としての「原発再稼動」
    http://agora-web.jp/archives/1619974.html
    川内原発の「再稼動」が決まったことで、また原発が注目を集めているが、NHKニュースの世論調査はちょっと意外な結果だ。上の図のように、「賛成」と「どちらかといえば賛成」を合計した回答は、30代以下でもっとも高い。この結果について、小林傳司教授なる人物が、次のよ...

    「そこまで言って委員会」の放射能デマ
    http://agora-web.jp/archives/1622742.html
    きのうの記事に反響が大きいので、経緯を補足しておく。チェルノブイリ事故については、ちょうど先週のGEPRで紹介したので、読んでほしい。

    国の借金は永遠に続けられるの?
    http://agora-web.jp/archives/1621753.html
    安倍首相は衆議院を解散して、12月14日に衆議院選挙が行なわれることになりました。彼は8%の消費税を10%にふやすことを先送りし、それについて「国民に信を問う」というのですが、先送りに反対している党は一つもありません。増税は争点になっていないのに、何を問うんでし...

    世代間格差を是正する選挙制度改革が必要だ
    http://agora-web.jp/archives/1621791.html
    きょうのアゴラこども版に書いたのはわかりきった話だが、問題はこんな当たり前のことを主張する政党が一つもないことだ。特に三党合意で増税を決めた民主党まで増税先送りに賛成したのは無責任だが、現在の有権者の構成からはやむをえない。高齢者に迎合しないと、選挙に勝...

    アベノミクスの終焉
    http://agora-web.jp/archives/1621033.html
    今年の7?9月期のGDP速報値が、予想以上に悪かった。これを増税の影響だという人が多いが、それは誤りである。増税の影響は一過性なので、右の図(朝日新聞)の比較でもわかる通り、半年たつとGDPはプラスに戻るのが普通だ。増税率はほとんど同じなので、この差は消費税以外...

    1000兆円の借金を返す方法
    http://agora-web.jp/archives/1619938.html
    「クルーグマン教授、“消費増税で国債暴落”論を一蹴」とかいう支離滅裂な記事が出ている。「国債暴落」というのは金利上昇と同じことだが、本文では彼は「株価が暴落する可能性を指摘する経済専門家もいるが、金利が低いままとどまり、円安のおかげで日本企業がますます競...


    池田信夫の【アゴラVlog】人はなぜサンクコストを錯覚するのか
    http://youtu.be/ZrFMN_BB1ls?list=UUJHLwoEJ55msgoxeiqJjOvA
    サンクコスト(埋没費用)とは、過去なんらかのプロジェクトに投資したコストのうち、プロジェクトから撤退しても回収できないコストのことです。ところが「もったいない」という気持ちや「失敗を認めたくない」という意識から、頭で理解していても多くの人がサンクコストの錯覚に容易にとらわれてしまいます。人はなぜサンクコストを錯覚してしまうのでしょうか?



    特別寄稿:新清士(ゲームジャーナリスト)

    ゲーム産業の興亡(131)
    Oculus Riftでも強くなると予測できるF2Pモデル


    11月28日から上野の森美術館で始まった「進撃の巨人」展では、Oculus Riftによる専用の体験コーナーが設置されるなど、Oculus Riftが相変わらず話題を集めている。今後も、多様な利用方法が出てくるだろう。

    ただ、特にゲームの市場の形成は、ゲームそのものは無料で遊ぶことができ、アイテム課金方式で収益を得る「Free to Play(F2P)」型が中心になるだろうと思うようになった。

    ハードとしての新規性は、今後も話題を生みだし続けるだろうが、市場は既存のゲームビジネスで強いモデルから大きく変わるほどのインパクトは持たないだろうと考えている。それを確信するようになったのは、F2Pのロシア製の宇宙船ゲーム「Star Conflict」を長時間遊んだためだ。


    ■Oculus Riftではまだまだ長時間遊べるゲームは少ない

    Oculus Riftは、PC向けのハードで、ハイエンドPCをターゲットに、当初はビジネス展開を進めると考えられる。最初に起きてくるのは、既存のPCゲームをOculusに対応させるバージョンの開発で、少しずつ対応ゲームが出始めてきている状態だ。

    とはいえ、タイトルはまだまだ揃っているという状態ではない。多くは技術デモや、ゲームとしてもこなれていないものが多く、長時間遊び続けることは容易ではない。数分間で、車酔いに似た現象のVR酔いを引き起こすゲームも少なくなく、思わず、プレイ途中にOculus Riftを投げ出してしまうタイトルも少なくない。

    レースゲームは、Oculus Riftと相性がよいと考えられているが、11月にリリースされたイタリア製のレースゲーム「Assetto Corsa」は、プレイステーション3世代に劣らないほどのグラフィックス水準を確保しており、数々のフェラーリが登場するグラフィックス的にも豪華な内容だ。

    VR内でのレースゲームのメリットは、坂道は実際に高さを実感することができるという大きな利点がある。すでに、対応したゲームはイギリス製の「Live For Speed」があったが、古いゲームでもあり画質は決してよいものではなかったため、最新の世代のゲームのOculus対応は待たれるところだった。

    筆者が、Oculus Riftでプレイした感想は、残念ながら、決して楽しいという感じではなかった。レースゲームは好きな方なので、何時間も熱中してプレイする方だが、ちょっと走っただけで、もう一度走りたいと思えるものではなかった。

    Oculus Riftの現バージョンである、Development Kit 2(DK2)は、HD画質を実現しているというものの、画素数は決して多いとは言えず、目の粗さが目立つ。そのため、通常の自動車運転をするときと体験が大きく異なる。自動車を通常運転するときには、ドライバーは速度が上がれば上がるほど、遠いところに視点を合わせるが、モニターの画素が粗いために、遠くはぼやけているのだ。

    まるで、近眼の状態で車を運転しているような気分で、どうにも気持ちよく走ることができない。来年以降に発売される予定のスーパーハイビジョン画質の新型の登場を待たなければ、進化を発揮できないと思われる。Oculus Riftで何時間ものプレイに耐えられるゲームはまだまだ登場しないと思われていた。


    ■Oculusにフィットした宇宙戦ゲーム

    ところが、長時間遊べるゲームに巡り会うことができた。

    ロシアのGaijin Entertainmentがリリースしている「Star Conflict」という複数人プレイヤーの宇宙戦闘機同士のドッグファイトをテーマにしたゲームだ。

    このゲームは、2年前にリリースされており、元々はPCモニターで遊ぶことを前提としていた。決して人気の高いゲームとはいえず、遊ばれているのはロシア、欧州と中国といった一部の地域にすぎない。モニターで遊ぶと、ゲームとして、傑作と感じさせるほどのものでははない。

    ところが、Oculus Riftを使うとゲームの体験がまったく変わる。

    宇宙空間の360度を見回すことができる自由度は、他のゲームにない新鮮な体験だ。また、宇宙空間であるために、VR酔いを引き起こしやすい、自分に見えているものの近い物体の動きが少ないために、酔いにくいようだ。それでいて、すでにリリースから2年が経過しているために、ゲームの完成度も一定のものを見せているために、やりこみ要素は十分に用意されている。

    筆者が遊んだ時間は、すでに10時間を超えているだろうと思う。

    すでに、イギリスといった欧州系の企業を中心に、宇宙船の戦いをテーマにしたゲームを開発している企業は少なくない。英Frontier Developmentsの「Elite: Dangerous」のように、Oculus Rift対応を売りにしている開発中のゲームも少なくない。

    欧米のゲームの多くは、宇宙空間でのリアルな挙動をシミュレートすることに力を入れており、そのこだわりの強さが要因で、正直取っつきにくい。まともに移動させることさえできない。そうした要素を捨てて、簡単な操作性で遊べる「Star Conflict」はすでに操作系もこなれているために、かなり遊びやすい。
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    ■結局はF2Pが主導権を握るであろう

    「Star Conflict」のもう一つの特徴は、F2Pであることだ。長時間遊んでいるにもかかわらず、まだ1円も支払っていない。払わなくとも十分に楽しめてしまうのだ。

    まだ、F2Pで展開されている、Oculus Riftに対応したゲームはこのゲーム以外には、存在しない。PCモニターで遊ぶゲームとしてはマイナーなゲームだったが、Oculus Riftでのおもしろさが知られるようになるとハードの普及に従って、急激に人気を得るようになっていくだろう。

    08年にアップルの「iPhone3G」が発売になり、コンテンツ流通プラットフォームのAppStoreが誕生して、様々なアプリの可能性が模索されていた時期が続くが、今は、Oculus Riftはその時期に近いと定義づけることができると思われる。

    AppStoreは自由に価格設定を決めることができることから、超競争市場となり、アプリの販売価格が1ドル前後にまで急落、単体のアプリでは収益を上げることがほぼ不可能になってしまった。

    一方で、10年頃に、F2Pモデルが登場すると一気にビジネスの中心が、そちらに移行した。あらためて詳しく書く必要もないだろうが、現在の「パズル&ドラゴンズ」などの高収益を出すゲームが次々に登場して、一部のゲームが極端な高収益を得るという状況が生まれるようになってきた。

    結局、デバイスが変わろうとも同じような状況になるだろうと考えてよいと思われる。F2Pは、スマホゲーム市場で猛威をふるっているように、同じことがOculus Riftの市場でも繰り返されるだろう。

    そうなると、同じ競争が始まる。課金プラットフォームを誰が握るのかという争いだ。「Star Conflict」はPC向けのコンテンツ流通プラットフォームの米Valveの「Steam」を中心に配信されている。他のゲームも現在は決済手段を持っていないために、「Steam」を使うことが多い。

    Oculus VRは、今後、独自の「Oculus Platform」を立ち上げることを明らかにしており、普及期に入ると、アップルやグーグルのように、Oculus VRの用意した課金プラットフォームを使わないと不利になるような仕組みを用意してくることになるだろう。

    今は、Oculus Riftは、自由な可能性が提示されている状態にあるが、数年でその状態も終わってきて、一定の方向付けが決まってしまうだろう。

    現状、日本企業からは課金プラットフォームの提案まで踏み込んだ動きは登場していないが、登場を期待したいところではある。
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    「Assetto Corsa」Steamのダウンロードページ
    http://store.steampowered.com/app/244210/

    「Star Conflict」Steamのダウンロードページ
    http://store.steampowered.com/app/212070/

    「Star Conflict」ゲームプレイ動画
    https://www.youtube.com/watch?v=gzOdYzgotk0




    □ご意見、ご質問をお送り下さい。すべてのご質問に答えることはできないかもしれませんが、できる範囲でメルマガの中でお答えしていきたいと思っています。連絡先は、sakugetu@gmail.com です。「新清士オフィシャルブログ」http://blog.livedoor.jp/kiyoshi_shin/ も、ご参照いただければ幸いです。

    新 清士(しん きよし)
    ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
    Twitter ID: kiyoshi_shin

  • 2014年11月第4週号

    2014-12-01 01:25
    めるまがアゴラちゃんねる、第118号をお届けします。
    配信が遅れまして大変申し訳ございません。


    コンテンツ

    ・今週の池田信夫
     アゴラ研究所所長、池田信夫のエントリーでアクセスが多かった記事、アゴラ・チャンネルの動画を紹介します。

    ・ゲーム産業の興亡(130)
    積極的な投資の動きが続くゲームのプレイ動画
    新清士(ゲームジャーナリスト)


    アゴラは一般からも広く投稿を募集しています。多くの一般投稿者が、毎日のように原稿を送ってきています。掲載される原稿も多くなってきました。当サイト掲載後なら、ご自身のブログなどとの二重投稿もかまいません。投稿希望の方は、テキストファイルを添付し、システム管理者まで電子メールでお送りください。ユニークで鋭い視点の原稿をお待ちしています http://bit.ly/za3N4I

    アカシックライブラリー(旧アゴラブックス)は、あなたの原稿を電子書籍にして販売します。同時にペーパーバックとしてAmazon.comサイト上で紙の本も販売可能。自分の原稿がアマゾンでISBN付きの本になる! http://bit.ly/yaR5PK 自分の原稿を本にしてみませんか?


    今週の池田信夫

    世代間格差を是正する選挙制度改革が必要だ
    http://agora-web.jp/archives/1621791.html
    きょうのアゴラこども版に書いたのはわかりきった話だが、問題はこんな当たり前のことを主張する政党が一つもないことだ。特に三党合意で増税を決めた民主党まで増税先送りに賛成したのは無責任だが、現在の有権者の構成からはやむをえない。高齢者に迎合しないと、選挙に勝...

    アベノミクスの終焉
    http://agora-web.jp/archives/1621033.html
    今年の7?9月期のGDP速報値が、予想以上に悪かった。これを増税の影響だという人が多いが、それは誤りである。増税の影響は一過性なので、右の図(朝日新聞)の比較でもわかる通り、半年たつとGDPはプラスに戻るのが普通だ。増税率はほとんど同じなので、この差は消費税以外...

    時代錯誤の「日帝」史観 - 『帝国の慰安婦』
    http://agora-web.jp/archives/1621866.html
    著者は韓国で慰安婦問題について事実にもとづいた論文を発表している数少ない研究者で、本書の韓国語版は慰安婦の関連団体から出版差し止め訴訟を起こされた。このような困難な状況で本書を発表したことには敬意を払うが、著者の歴史観は古く、論理が混乱している。

    国の借金は永遠に続けられるの?
    http://agora-web.jp/archives/1621753.html
    安倍首相は衆議院を解散して、12月14日に衆議院選挙が行なわれることになりました。彼は8%の消費税を10%にふやすことを先送りし、それについて「国民に信を問う」というのですが、先送りに反対している党は一つもありません。増税は争点になっていないのに、何を問うんでし...

    1000兆円の借金を返す方法
    http://agora-web.jp/archives/1619938.html
    「クルーグマン教授、“消費増税で国債暴落”論を一蹴」とかいう支離滅裂な記事が出ている。「国債暴落」というのは金利上昇と同じことだが、本文では彼は「株価が暴落する可能性を指摘する経済専門家もいるが、金利が低いままとどまり、円安のおかげで日本企業がますます競...

    世代間戦争としての「原発再稼動」
    http://agora-web.jp/archives/1619974.html
    川内原発の「再稼動」が決まったことで、また原発が注目を集めているが、NHKニュースの世論調査はちょっと意外な結果だ。上の図のように、「賛成」と「どちらかといえば賛成」を合計した回答は、30代以下でもっとも高い。この結果について、小林傳司教授なる人物が、次のよ...


    池田信夫の【アゴラVlog】大英帝国はいかにして借金を踏み倒したか
    http://youtu.be/OTa3Nd9oY4g?list=UUJHLwoEJ55msgoxeiqJjOvA


    ※これ以降は「週刊アゴラ」有料版をご覧ください。
    http://www.mag2.com/m/0001559193.html




    特別寄稿:新清士(ゲームジャーナリスト)

    ゲーム産業の興亡(130)
    積極的な投資の動きが続くゲームのプレイ動画


    このところゲームのプレイ中の動画を、ユーザーが録画し、ネット上にアップする、動画サイトのサービスを自社のゲームに組み込む争いが激しくなりつつある。

    11月19日に「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」のガンホー・オンライン・エンターテイメントが、米Kamcordの株式を取得すると発表した。

    Kamcordは、モバイルゲーム向けの動画用のSDK(ソフトウェア開発キット)を開発者向けに提供している企業で、このSDKを組み込むことで、ゲームのプレイ中にバックグラウンドでそのプレイ画面を録画することができる。ゲーム終了後にKamcordが提供している動画サービスや、動画サイト「YouTube」や、SNSの「Facebook」などに動画を投稿して、他のユーザーに見せることができる。

    5月には、710万ドル以上の資金調達を行っており、そのなかには米ベンチャーキャピタルのみならず、ディー・エヌ・エーとKLabが含まれている。各社の投資額の割合は明らかにされていない。ガンホーも同様だ。

    5月時点で、導入したゲーム会社の数は160以上で、ゲームは200種類以上、動画数も20億本以上を超えていた。バンダイナムコゲームスや、コロプラといった企業が導入していた。プレイ動画を投稿できる仕組みを整えることで、ユーザーの囲い込みを図ろうという目的を持っている。

    日本の企業でも、20日に、12月25日に上場を行うことを発表したカヤックが、プレイ動画サービスを展開している。今年1月に、プレイ動画を録画できる同社が展開するSNSの「Lobi」に対応したSDKの配布を開始した。なかなか対応タイトルの獲得ができなかったが、8月に、gumiの大ヒットゲーム「ブレイブフロンティア」が対応したことで、初めてメジャーなタイトルでの採用に結びついた。

    10月29日に、mixiの「モンスターストライク(モンスト)」に対応し、プレー動画サービスでの存在感を獲得することに成功した。さらに11月19日に、サイバーエージェントと事業提携を発表したことで、事実上、日本でのスマホ向けゲームの動画サービスは、二つのグループでの競争となることがはっきりしてきた。


    ■プレイ動画の重要性が認識された米Twitch

    ゲームの動画サイトは、パソコン向けのものが先行している。11年に登場したゲーム動画の中継を専門に配信するサービスの米Twitch(ツイッチ)が、8月にアマゾンに9億7000万ドルで買収された。買収に当たっては、YouTubeを持つグーグルと最後まで競っていたと言われている。

    13年の中頃には、月に4300万人を超えるユーザーの視聴を獲得しており、14年2月には、アメリカでの通信トラフィックでの第4位になるほどの人気のサービスになっていた。eSportsと呼ばれる、ゲームをチェスなどと同じような知的競技ととらえる「リーグ・オブ・レジェンド」といった人気ゲームがヒットする流れに乗る形でサービスは人気を獲得していった。英語圏の広さも、人数の広がりの要因でもある。

    また、昨年11月に発売になった、ソニー・コンピュータエンタテインメントの「プレイステーション4」はいち早い対応をしたことが、マイクロソフトの「XboxOne」に比べて人気を得ることになった要因とみられている。


    ■バラエティ動画が多く投稿される日本

    日本でのプレイ動画はアメリカとは少し違った展開をとっている。日本では、ドワンゴの「ニコニコ動画」を中心にプレイ動画は人気を得ていったが、欧米圏と違いeSportsという色は弱く、バラエティ番組的な内容のものが人気を獲得しやすい。また、パソコンゲーム中心で、ニコニコ動画が引っ張ってきていたが、スマホへと中心がシフトしていくなかで、変化が生まれてきている。

    日本で「YouTuber(ユーチューバー)」と呼ばれる人たちが注目を集めている。動画サイトへの投稿によって、生計を立てられるほどの収益を獲得できている人たちのことだ。YouTubeにユーザーが投稿した動画には広告が表示されるが、その広告費は一定の割合で、投稿したユーザーにも配分される。何百万もの再生回数を獲得することができれば、1回当たりの分配額は小さくとも、十分な収益へとなる。

    グーグルが、日本でYouTuberにスポットをあてたCMキャンペーンを行ったことで、その知名度が高くなった。日本で、人気のYouTuberには、179万人のチャンネル登録者を持つHikakin氏や、ゲームアプリの紹介サイトAppBank社長でもある112万人のチャンネル登録者を持つマックスむらい氏といった成功例が出ている。

    動画はほぼ毎日更新されるが、目玉コンテンツの一つとして、ゲームプレイ動画が中継される。「パズドラ」や「モンスト」との広告キャンペーンを行うといったことも行っている。

    こうした動画を作成するには、特別な環境をパソコンなどで用意する必要があったが、ゲーム会社側が対応したことによって、ユーザーでも気軽に投稿できるようになってきている。

    プレイ動画を通じて見えてくるのは、ユーザーがどのように遊んでいるのかという実情だ。モンストが対応した直後の11月4日に、Lobiに投稿されている「男子高校生の日常」という動画が投稿されている。その中で4人の高校生たちが、たわいもない会話をしながら、モンストを遊んでいる。

    特に注目すべきが、後半で、チャイムがなっているところで、学校の休憩時間の合間に手軽に遊んでいる様子が見え、スマホゲームの定着の様子を感じることができる。

    ほんの数年前までは、ゲームのプレイ動画に対しては、ゲーム会社は著作権をコントロールしたいという理由から、すべて、禁止するのが当たり前だった。しかし、大きく変化が生まれてきており、むしろ、ユーザーが自社のゲームを使って、コミュニティを活性化してくれる要因になる重要性のほうを意識するように変わってきている。

    そのため、今後も、プレイ動画サービスへの積極的な投資が行われてくると思われる。



    HikakinTV(Hikakin氏のプレイ動画サイト)
    https://www.youtube.com/user/HikakinTV

    男子高校生の日常
    https://play.lobi.co/video/b63d76434f560419a743d25044c82141cad69669




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    新 清士(しん きよし)
    ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
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