TPP 農林水産に壊滅的被害
14道県試算 地域経済も深刻
岩手・小麦100%減 島根・豚肉86%減 高知・米56%減…
安倍晋三首相が交渉参加を表明した環太平洋連携協定(TPP)によって、農林水産業をはじめ、地域経済が壊滅的な影響を受けることが14道県の試算によって浮き彫りになりました。(別表)
14道県の試算は、15日に政府が発表した統一試算の方法(注)に準拠したもの。政府の試算方法の変化で、多くの試算では影響額が縮減していますが、それでも農林水産業の生産額が半減するところが出ています。
なかでも食料自給率が210%の北海道では、自給率が89%へと激減。農林水産業全体の生産への影響は4762億円で、農家は2・3万戸も減少し、半減となります。政府試算は、農林水産物の生産額減少のみですが、北海道は地域経済や雇用への影響も試算。11万2千人の雇用が失われ、地域経済も7383億円減となるなど、壊滅的な影響を受けることを示しています。
また、三重県は農業生産額が57%減少、首相の地元・山口県で48%の減少となります。鳥取県について地元紙は「試算対象となった12品目の生産額(516億円)が半減するという厳しい試算結果になった」(日本海新聞)と伝えています。
岩手県では小麦100%減、米50%減、豚肉70%減。県議会予算特別委員会では日本共産党の斉藤信県議が「岩手の農業の基幹品目が壊滅的な影響を受ける。水産もサケ・マスで57%(55億円)減。復興どころではない。こういう影響が与えられるTPPは、絶対に撤回させて阻止しなければならない」(19日)と発言しました。
各県ともに、米の生産額は3~6割近く減少。米どころ茨城県では469億円(49%)もの減です。和歌山県のミカンや高知県のマグロ・カツオなど、地元の産業と雇用が依存する特産品がいずれも重大な影響を受けることは避けられません。
一部の県は、農林水産業の「多面的機能」=水利や自然環境保護、観光資源などの役割が影響を受ける損失額を試算。島根県は644億円、山口県は473億円、宮崎県は266億円の損失を見込んでいます。
(注)政府の統一試算方法 関税率10%以上で国内生産額10億円以上の33品目の農林水産物について、TPPの交渉参加既存11カ国との貿易を対象に試算したもの。関税の即時撤廃が前提で、非関税措置撤廃や追加的な農業対策などは計算に入れません。各道県は、域内の実情に合わせた生産額などの独自の基準で対象品目を絞っています。