主張
政労使会議
賃上げは「内部留保」の活用で
政府、連合、経団連などの代表による「政労使会議」が始まりました。「デフレ不況」から脱却し経済の「好循環」をつくるための協議を年末まで数回重ねて、合意をめざすとしています。「デフレ不況」から脱却するためには、労働者の賃金を増やし、安定した雇用を拡大することが何よりも重要です。このための現実的で効果的な方策は、大企業がもっている260兆円を超える内部留保の一部を賃上げに回すことです。内部留保は使い道がないままため込まれています。「政労使会議」は、これを労働者に還元することを正面にすえた議論をおこなうべきです。
大企業には体力がある
日本経済が「デフレ不況」におちいった原因は、大企業が利益を労働者の賃上げ(ベースアップ)に回さず、内部留保を増やしてきたことにあります。1997年をピークに労働者の年収が70万円も減り、一方で大企業はこの時期に100兆円近い内部留保を増やし、260兆円を超えるまでに膨らんでいます。とくに賃金相場に強い影響力を持っている製造業は、利益を賃金にも設備投資にも回さず、ため込むだけの「貯蓄業」になったという批判の声さえあります。
内部留保を使って賃上げを、という意見はエコノミスト、経営者、政府内部からもおこっています。麻生太郎副総理・財務相は、内部留保が賃金に回ることは「経済が活気づくために重要」だと国会答弁で語りました。
しかし大企業の内部留保ため込み志向は根深いものがあります。内閣府と財務省のことし1~3月期の「法人企業景気予測調査」によると、企業が利益配分で重視しているのは、大企業、中堅企業、中小企業ともに内部留保が第1位です。しかし中小企業は「従業員への還元」を2位に、中堅企業が3位にあげて、労働者の待遇を改善しようとする姿勢がみられます。ところが大企業は、2位が「設備投資」で、3位が「株主への還元」です。利益の還元は、労働者より株主を優先するというのが大企業の姿勢です。
安倍晋三政権は「政労使会議」で、企業の利益を拡大し、それを賃金の上昇や雇用の拡大につなげる「好循環」を実現したいとしていますが、これはまやかしです。法人税の減税や、解雇の金銭解決など雇用の規制緩和で企業支援をしても、利益は内部留保と株主への配当に消えることは目に見えています。
大企業には賃上げする十分な体力があります。内部留保の1%程度を取り崩しただけで月1万円の賃上げが実施できる大企業が8割です。13兆円もの内部留保をもっているトヨタ自動車は0・2%取り崩すだけで実現できます。
強い決意でゆがみ正せ
民間企業の賃上げは労使交渉の問題だとして、政治の介入を拒否する意見が経団連や連合内にあります。しかし働く人の所得が減少の一途をたどって内需が低迷し、深刻な経済危機に陥っているとき、政治が強力な賃上げ政策をもってゆがみを正すのは当然の責任です。「政労使会議」で政府は、強い決意で大企業の内部留保に切り込むべきです。これが経済の「好循環」をつくる道です。減税や雇用の規制緩和と引き換えで、財界に賃上げを求めるような卑屈な態度は改めるべきです。