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防衛庁(現防衛省)が軍需産業に関わる民間企業に対して、秘密を扱う労働者を身辺調査する憲法違反の社内規則をつくらせていたことが、関係者の証言などで分かりました。昨年12月成立の秘密保護法を先取りするようなこの社内規則は1950年代後半から各社にもうけられ、川崎重工の規則を作成した元社員は「指紋の採取まで求めようとした」と本紙の取材に話しています。(本田祐典)
労働者の身辺調査を定めた社内規則とは、「秘密保全規則」と呼ばれるものです。川崎重工や三菱重工などで、労働者本人のみならず、家族や友人のプライバシーまで侵害する調査の口実とされてきました。身辺調査は現在も行われています。
川崎重工の規則がもうけられたのは1958年。本文と細則をあわせて70条にもなる詳細なものでした。
防衛庁了承
当時の川崎航空機工業で規則をつくった元社員の男性によると、規則は米国の軍需企業で使われていたものを参考にまとめました。
男性は、防衛庁も規則の内容を了承していたと証言。規則案の作成過程で2度にわたって防衛庁本庁を訪ねて内容を詳細に説明し、担当者から「いいんじゃないですか」などと確認を受けました。
「適格審査」
規則には、秘密を扱う労働者の身辺を調査する「適格審査」の実施が盛り込まれていました。本人や家族、友人を調べ、「好ましくない人物」がいた場合は秘密を扱う仕事から外すためです。
また、規則案には、秘密を扱う労働者の指紋を会社が採取し管理する「指紋票」という記述がありました。労働組合の抗議で明文化を見送ったといいます。
秘密保護法では、秘密を扱う公務員や民間人の個人情報を調べる「適性評価」が盛り込まれました。対象になる民間人について、同法を担当する森雅子少子化相は3千人超との見通しを示しています。