主張
カジノ合法化法案
審議に入らず廃案しかない
賭博場・カジノの国内での開設を合法化する法案の行方をめぐり、大きなヤマ場を迎えています。
法案がかかっている衆院内閣委員会では、日本共産党、社民党以外のすべての党の議員が加わる超党派カジノ議連「国際観光産業振興議員連盟」(会長・細田博之自民党幹事長代行)が、月内の審議入りを求めています。
議論の前提欠く
いうまでもありませんが日本は刑罰で賭博を禁じている国です。
刑法の賭博禁止の規定について確定した判例(1950年11月22日の最高裁判決)があります。判決は、勤労など正当な原因によらず、単なる偶然の事情によって財物を手にする思いがけない幸運を得ようと相争うことは、国民を怠け者の浪費家にし、健康で文化的な社会の基礎になる「勤労の美風」を害するばかりか、副次的な犯罪を誘発し、国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれがある、としています。
これは、長い社会的な営みの中から生まれ出た知恵ともいえる法秩序であり、多くの国民の常識的な見方とも合致しています。
カジノ合法化は、刑法の定める違法性を退け、民間の事業者が私的な利益をはかるために国内に賭博場を開設することを、初めて認めるという重大な内容です。
カジノ法案は、いま国会に提出されている「推進法」と、その後にまとめられる「実施法」の2段階に分かれています。
推進法は、(1)国にカジノ設置区域の整備推進の責務を負わせる(2)推進法施行後1年以内に政府の責任で実施のための法制度を整備させる(3)そのための推進本部は首相を責任者にして内閣に置く―ということを決めるだけで、いったいどんなカジノが、どこに、いくつできるのかも、賭博の害悪を防ぐためにどんな方策をとるのかも、すべて「実施法」段階に先送りされています。
なぜこんな構造になったかについてカジノ議連の岩屋毅幹事長(自民党衆院議員)は、「議論になりそうなものは切り離した」(昨年11月12日の議連総会)と語っています。
細目を決めようとすれば、関係業界や関係省庁、地方自治体などの利権にかかわる争いがはじまり、収拾がつかなくなるから、ともかくも「カジノ合法化」の結論だけを“先食い”して、後は政府にやらせるという魂胆なのです。
中身のない法案ですから、国会で審議に入ったとしても「賛成か、反対か」「カジノが好きか、嫌いか」程度の議論しかできません。
国の将来、子どもたちの未来を左右しかねない重大法案なのに、議論をすすめる前提を欠いています。国民がその危険な内容を知る前に、大慌てで法案を通そうとするやり方です。こんな法案は、審議入りせず、廃案にすべきです。
ギャンブル大国・日本で
賭博を禁じている日本なのに、すでに特例で競馬など6種の公営賭博があります。パチンコ・スロットも、賭博でなく「遊技」という欺瞞(ぎまん)的な扱いで行われています。日本国民は年間5兆6000億円も賭博で負ける、世界一のギャンブル大国であり、その害悪も深刻です。この国に、カジノという、もっとも人を狂わせ、のめりこませる賭博を、新たに上陸させるわけにはいきません。